CADとは?2DCADと3DCADの違いと代表的なCADソフトを解説

PCで手軽に図面を作成できるツールとして誕生したのがCADです。2DCADの場合は作図が主な用途となります。一方で、3DCADの場合は立体的なモデルのデータで作図できるため、部品同士の組み合わせをシミュレーション可能です。

この記事では、CADとはどんなソフトウェアなのか、2DCADと3DCADの違い、代表的なCADソフトについて詳しく解説します。

CADとは

CADとは、Computer Aided Designの頭文字を取った略称であり、広義に言えばPCなどを用いて設計することを指します。
また、PCによる設計支援ツールそのものを指すケースも多いです。

CADは、JIS規格(JIS B 3401)において、「製品の形状、その他の属性データからなるモデルを、コンピュータの内部に作成し解析・処理することによって進める設計」と定義されています。

古くは、ものを設計する際には紙の図面で作製していた時代がありました。
紙の図面の場合、誰でも手軽に書ける反面、もし修正が必要になった場合の書き直しがとても大変です。

以上のような観点で、手軽に図面を作成できるツールとして誕生したのがCADです。
CADには主に以下の種類が存在し、それぞれに用途が異なります。
・2DCAD
・3DCAD
・専用CAD・汎用CAD
各CADの違いについて、詳しく解説します。

2DCADとは

2DCADとは、2次元データで製図できるCADを指します。
CAD登場以前は紙に手書きで対応していた製図を、そのままPCなどのデバイスで作成できる形式となります。
基本は正面、平面、側面の3構成による第三角法で製図が可能です。

3DCADとは

3DCADとは、3次元データで製図できるCADのことです。

3DCADで製図できるモデルは、以下の3つがあります。
・ソリッドモデル:立体であり内部まで詰まっている状態
・サーフェスモデル:内部が空洞となっており面の集合で構成される状態
・ワイヤーフレームモデル:内部が詰まっておらず面もなく境界線のみで構成される状態

以上から、ワイヤーフレームモデルは3つのモデルでは簡便的な方法で用いられ、ソリッドモデルはより複雑な設計まで可能です。

CADの場合、単なる作図できる機能以外にも、シミュレーション機能があります。
CAE(Computer Aided Engineering )を組み合わせれば、実際に設計したものが、正しく機能するのかを検証可能です。

以上のように、より多機能で立体的な設計を実現できるのが、3DCADとなります。

専用CAD・汎用CADとは

専用CADとは、ある特定の分野や製品を設計するのに特化したCADのことです。

CADは基本的にどのようなものでも設計できますが、特殊仕様の製品などを設計する際に対応できない場合があります。

そこで、CADに機能を拡張させて特殊仕様の製品を設計できるようにカスタマイズされたものが専用CADとなります。

一方で、汎用CADとは設計する上で必要となる基本機能だけを実装したCADです。

具体的には、図面の確認や編集、印刷程度の作業は汎用CADで十分対応できます。
また、汎用CADの場合は専門的な機能が実装されていない分、価格的に安価な点がメリットとなります。

2DCADと3DCADの違い

2DCADと3DCADとの違いとして、2DCADの場合は作図が主な用途となります。

一方で、3DCADの場合は立体的なモデルのデータで作図できるため、部品同士の組み合わせをシミュレーション可能です。

以上から、3DCADの方がより高性能で利便性が高いと言えます。

ただし、2DCADと3DCADそれぞれにメリットとデメリットがあります。
それぞれのメリットとデメリットは、以下のとおりです。

2DCADのメリット・デメリット

2DCADは、基本的に紙で作図していたものをそのままPCなどのデバイスで作図できるイメージのものです。

よって、比較的誰でも簡単な操作で設計できるメリットがあります。

また、複雑な処理が伴わないため、低スペックのデバイスでも設計可能です。

2DCADのデメリットとしては、平面的な図面となるため受け取った側が3Dでイメージして活用しなければならない点があります。

3DCADのメリット・デメリット

3DCADの最大のメリットは、視覚的にわかりやすい点があります。

2Dでは自分の頭で想像して立体的にイメージしなければならないのに対し、3Dでは立体的に作図できるので完成形を容易にイメージできます。

また、3DCADで作製したイメージを用いて、他の部品との組合せをシミュレーション可能です。

さらに、体積や表面積、質量だけでなく重心などのデータも得られるメリットがあります。
一方で、3DCADは操作性が複雑でなれるまでに時間がかかる傾向にあります。

また、データ容量が大きくなり処理も複雑となるため、多機能な3DCADほど高スペックのデバイスを用意しなければなりません。

CADが使われている業界

建築・土木業界

建設業界では、主にビルや戸建て住宅などの構造物の作図に活用されています。
配管や基礎の設計だけでなく、耐震性を検証するために3DCADを用いるケースが大半です。
また、土木関連では橋や道路のインフラ関係の設計に広く用いられています。

家具・インテリア業界

家具を筆頭に、インテリア業界で活躍する職種に、インテリアデザイナーがあります。
インテリアデザイナーは、様々な室内空間を総合的にデザインするのがメインの業務となります。
要望に応じた最適な室内空間をデザインして、付随するインテリアなども合わせて設計するのが一般的です。
インテリアデザイナーは、CADを用いてデザインするのが一般的です。
単一の設計だけでなく、室内空間との組合せを3DCADで検証するなどの用途でも広く使用されています。

代表的なCADソフト

AutoCAD(オートキャド)

AutoCADは、古くから存在するCADソフトとして、広く人気を博しています。

2Dだけでなく3Dの設計も可能で、3D モデリングやレンダリングなどの機能も利用可能です。

3D モデルからレンダリング画像やアニメーションを作成でき、3D プリントで使用できるSTLファイル出力も容易に行えます。

3D モデルから2D 図面を作成する機能もあり、作図したものを相手の都合に合わせて形式を変更できるメリットがあります。

AutoCADの場合、個人で使用するだけでなくチームで設計する際の機能も充実している点が魅力的です。

図面の標準化を管理する機能があり、個人間でのばらつきを防止できます。
さらに、定型操作を簡便化できるアクションマクロ機能により、定型作業の効率化を図れます。

Jw-cad(ジェイダブリューキャド)

Jw-cadは2Dの汎用CADで、フリーソフトウェアのため誰でも手軽に入手して使用できるCADです。

Jw-cad自体の開発に建築士が深く関与しており、建築設計に便利な機能が多く搭載されています。

以上から、建築汎用CADとも呼ばれる場合が多いです。

フリーソフトウェアであるものの、高機能が売りのCADであり、建築業界以外にも幅広く活用されています。

Jw-cadの特徴として、クロックメニューが使いやすい点が挙げられます。

クロックメニューとは、マウスジェスチャーによりスピーディーに操作できる、操作時計の形をしたショートカットメニュー機能です。

クロックメニューを表示させてマウスを動作すると、時計の針が回転して回転位置に指定コマンドを実行できるのです。

直感的な操作で、より簡単に作図できると好評を博しています。

また、3D作図はできないものの、2.5Dと呼ばれるワイヤーフレーム透視図やアイソメ図を作成可能です。

他にも、建具や設備などの簡単作図機能もあり、特定のジャンルの作図に特に力を発揮します。

VectorWorks(ベクターワークス)

Vectorworksは、アメリカのVectorworks社が開発している汎用CADソフトです。

多彩な機能が充実しているCADでありながら、絵を描くような操作で作図できる点が魅力的です。

また、PhotoshopなどのAdobe製ソフトと容易に連動でき、使い勝手の良さが評価されています。

Vectorworksは、元々はMiniCad(ミニキャド)と呼ばれるMac専用のソフトウェアでした。
その後、プレゼンテーション機能やデータベース機能が追加されて誕生したのがVectorworksです。

主にインテリア業界などで使用されるケースが多く、VRやAR機能を用いてリアルに近い空間で検証できる機能が使いやすく便利です。

BIM機能もあり、テンプレートで用意された屋根や天井、床などを用いて容易にBIMモデルを構築できます。

2D作図機能も充実しており、幅広い設計者に向いたCADソフトと言えます。