i-Constructionとは?導入するメリットや課題、関連技術を解説

i-Constructionとは、建設業界にICTを導入して建設生産システムの効率性のアップを図る取り組みです。建設現場での測量や設計、施工などの工程はもちろん、定期的な検査や管理運営までのすべての過程においてICTを導入することで業務の効率化を図ります。

この記事では、i-Constructionの概要から導入するメリット、課題、関連技術を詳しく解説します。

i-Constructionとは

i-Construction(アイ・コンストラクション)とは国土交通省が2016年より建設業界にICTを導入して建設生産システムの効率性のアップを図ることを目指したプロジェクトです。ICTとは情報通信技術のことを指します。建設現場での測量や設計、施工などの工程はもちろん、定期的な検査や管理運営までのすべての過程において一貫してi-Constructionを用いて、システム全体を通して業務の効率化を図ることが大きな目的です。

CIMとの違い

i-Constructionに加えて、「CIM(Construction Information Modeling)」というとても似た取り組みをしている政策があります。両者は目指すべき指針は似ていますが、明確な違いがあります。i-Constructionは建設業界全体にICTを導入しようとする大きなプロジェクトであるのに対して、CIMは土木や建設現場に対して3次元モデルを導入していこうという取り組みのことです。i-Constructionの大きな施策を細分化したうちのひとつに、CIMがあるというイメージです。建設現場の施工は当然ながら、設計や企画段階から3Dモデルを活用することにより、建設業界の業務効率化を目指します。

BIMとの違い

同じく建設業界には「BIM(Building Information Modeling)」もあります。BIMとは国土交通省が建築分野にて設計や企画段階から施工までの業務に対して3Dモデルを導入・利用して建設業界全体の効率性を上げようというプロジェクトです。CIMと非常に似ているので混同しがちですが、CIMは土木分野が対象、BIMは建設業界が対象となるプロジェクトという違いがあります。

i-Constructionのメリット

建設業界にi-Constructionを導入することで得られるメリットは大きく分けて以下の3点です。
1つずつ解説します。

生産性の向上

建設現場にi-Constructionを導入することで、業務の生産性を大きく向上させられます。長年、建設業界は他の業界に比べて生産性が低いまま推移してきました。その理由として、工場では同じものをたくさん生産するのに対して、建設現場では1つひとつのオーダーがすべて異なるので、その都度設計図を描いたり測量をしたりしなければならず時間も労働力も多く必要だったからです。そのため仕組み化するのが難しく、多くのリソースを必要としていました。しかし、i-Constructionを導入することによって機械化できることが増え、人員を削減できてその分違う場所に人手を回すことができます。結果的に、建設現場での生産性をアップできます。

3Kイメージの払拭

i-Constructionの導入により、建設業界での3Kイメージを払拭できます。3Kとは、「きつい、危険、きたない」を表す言葉です。建設業界の仕事場は主に外で、夏は暑いなか、冬は寒い中でも外で作業をしなければなりません。また、重い荷物を運んだり、現場によっては高所での作業などもあります。そのため、建設業界は3Kの言葉どおりきつかったり危険だったりする仕事、というイメージがついてしまっているのが現実です。そんななか、i-Constructionを建設現場に導入して機械で自動化して人間の負担を極力へらし、3Kイメージを払拭して新3K「給与、休暇、希望」という新しいイメージを定着させることが期待されています。

人手不足の解消

i-Constructionの導入は、建設業界の人手不足問題を解消させるというメリットもあります。建設業界では長年、3Kのイメージにより深刻な人手不足が大きな問題となっていました。近年、都市開発や交通整備などといった建設需要が高まっていますが、その需要を満たすだけの人が集まっておりませんでした。肉体的な労働が多く、平均給与も高くないなどといった理由から不人気な業界でしたが、i-Constructionを導入することにより建設現場での自動化を測り、余った人材を他業務に回すことで全体での生産性向上につながります。
生産性が大幅に改善されることにより、より多くの業務をこなせるので企業の売上を増やし給与アップにつながったり、システムを導入して自動化を図ることで建設現場での肉体的労働を減らしてきつさを軽減したりできます。その結果、新3Kのイメージを定着させることで人手不足を解消できるのです。

i-Construction導入の課題

建設業界全体での生産性アップを図り多くのメリットをもたらすi-Constructionですが、導入への課題もあります。i-Construction導入の課題は大きくわけて次の3点です。
それぞれ1つずつ解説します。

設備投資への費用負担

i-Constructionを導入しようと思うと、莫大な設備投資の費用がかかってしまいます。建設現場をICTで自動化をしようと思ったら、まずは建設現場のそれぞれの設備にICT建機を購入して設置しなければなりません。当然ながら、最新の技術を用いているためかなり高額になります。また、購入数も1個や2個ならいいですが、大型の建設現場になればなるほど購入する数も多く必要になる場合がほとんどです。そうなってくると、1つの建設現場にまるごとi-Constructionを導入するにはコストがかかりすぎるという大きな問題があります。

ICTを運用できる人材確保

i-Construction導入の別の課題として、ICTを運用できる人材の確保です。実際に建設現場にICTを導入できたとして、だれもICTを動かせなければ導入しても意味がありません。そのため、ICTを導入したあとにそれを動かせるスキルを持った人材を雇うか、もしくは建設現場で勤務している従業員のだれかにそのスキルを習得させる必要があります。ICTのスキルは専門性が高く、習得させるにしてもかなり時間がかかってしまいます。また、ICTを運用できる人材を雇う場合には、専門性の高い分野なのでそれなりの人件費を支払わなければならず、資金的なハードルも高いのが事実です。

費用対効果

i-Construction導入の費用対効果も考慮する必要があります。ICTの導入にはかなりの設備投資費用がかかります。その費用があれば、新しい人材を雇ったり最新の機械を導入したりなど他に費用を回すことが可能です。i-Constructionを導入することで作業効率がアップしたり、システムを自動化できたりと多数のメリットがあるものの、コストがあまりにも高すぎるため、支払う費用に見合っているかどうかはしっかりと検証する必要があります。

i-Constructionを推進する技術

i-Constructionを実際に導入している技術に、ICT建機があります。

ICT建機

ICT建機もi-Constructionを推進する技術のひとつです。建設現場での建機の操縦は非常に難しく、以前まではスキルを習得している熟練者しか建機を動かすことができませんでした。しかし、i-Constructionを導入することで複雑なシステムを操縦する必要がなくなり、誰でも簡単に操縦が可能となりました。そのため、まだ経験が浅いオペレーターだったり勤続年数が少ない従業員だったりと、専門的なスキルを持った人でなくても誰でもICT建機を動かせるようになりました。結果として、専門的なスキルを持った従業員を雇うコストも削減できるメリットもあります。