設計監理とは?必要な資格や費用、特記仕様書を解説

設計監理とは、設計者が設計図面通りに、施工されているかを監理することです。設計監理を行うには建築士の資格が必要で、建築士の中でも一級建築士、二級建築士、木造建築士によって行える工事の建築物が変わります。

設計監理とは

設計監理は、建物の設計と工事監理の両方を行う仕事です。つまり設計者が設計図面通りに、施工されているかを監理することです。

ここでは「設計監理」を細分化した「設計」と「工事監理」とはどんな意味なのか説明していきます。また、混同しがちな「工事監理と工事管理の違い」についても述べていきます。

設計とは

一般に設計といえば2つの意味があります。

1つ目は機械、器具、装置、施設、プラントなどの「構造物」を作るにあたって、構成や構造、各部の詳細、作り方を検討するなどの準備であり、その成果物として仕様書や設計図書を作ることです。

もう1つは「構造物」だけでなく制度や組織、仕組みなどの構想を練る広い意味を指します。

ここでお伝えする「設計監理」における「設計」はこの両方を指します。具体的には以下の表に示す5つの業務です。

【条件整理】
はじめに依頼主の要望や法的規制や敷地条件、建築予算などの諸々の条件を整理します。
全ての条件を確認した上で、建築物の構造や規模、デザインなどの概要をまとめて、依頼主への報告を行うところまでの工程を指します。

【役所協議】
都市計画法や建築基準法、市区町村ごとの条例などのリサーチを行い、役所への事前調査・事前協議を行います。

【基本設計】
依頼主との打合せをするにあたって、建築規模や構造、間取り、設備などの仕様を固めるために設計図などの資料を作成します。
場合によってはより依頼主にイメージしてもらいやすいように模型やイメージパースなどを作成して提示することもあります。

【実施設計】
基本設計後の打ち合わせの後に建物各部の正確な寸法、仕上げ素材などの仕様を決めて再度図面に落とし込みます。
さまざまな素材サンプルの収集を行い、依頼主の要望と合致する組合せを提案しながら進めていきます。
位置図・平面図・立面図・断面図・矩計図・展開図・構造図・設備図などの図面を作成し、実施計画図面を完成させた後、施工会社へ見積作成依頼を行います。

【確認申請】
建築予定地の役所など民間の審査機関に仕様書や設計図書を提出し、開発協議や関係部署協議などを経て法律面の規定をクリアしたら、申請を通過します。

工事監理とは

国土交通省によれば工事監理とは、「その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」とされています。

簡単に言い換えると、依頼主に代わって専門家が建設中の建物がきちんと設計図書通りに施工されているのかを確認することです。

建築物には完成してからでは見ることが出来ない隠蔽部(いんぺいぶ)という箇所が存在します。依頼主が施工完了まで見続けるわけにもいかないので、「建築主の代理人」である工事監理者が、施工の節目ごとに確認や検査を行います。

なお工事監理者は基本的に、現場へ在駐しているものではなく、必要時に適宜検査を行い現場に問題がないかをチェックします。

規模の大きな現場では複数人での確認や、チェック頻度を増やしたりして対応していきます。

工事監理と工事管理の違い

「監理」という言葉は「管理」という言葉と似ていますが「ものごとが、規則や事前の取り決め通りに進行していることを確認し、取り締まること」を指します。それに対して「管理」とは「ある規準などから外れないよう、全体を統制すること」という意味の言葉です。

「監理」と「管理」の2つの言葉の意味としては似ているような気もしますが、「工事監理」と「工事管理」では実務内容に明確な違いが現れます。

工事監理者が、施工の節目ごとに設計図通りに施工されているのか施工の節目ごとに確認や検査を行う業務なのに対して、工事管理者は工程計画や施工順序の検討、大工などの職人の手配などの工程管理があります。
さらに、材料の発注・管理や、作業員と周辺住民の安全確保や原価管理なども、工事管理者の仕事です。現場監督といわれることもあります。

また工事管理者は工事現場を動かす責任者という業務内容の性質上、工事監理者と違って現場に現場に常駐している必要があります。

設計監理の資格

設計監理を行うには建築士の資格が必要です。また建築士の中でも一級建築士、二級建築士、木造建築士によって行える工事の建築物が変わります

下記にそれぞれの資格で設計監理が行える建物について述べていきます。

一級建築士

一級建築士でないと設計監理が行えない建築物は下記の4つです。

1. 学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場(オーディトリアムを有しないものを除く。)又は百貨店の用途に供する建築物で、延べ面積が500㎡をこえるもの。

2. 木造の建築物又は建築物の部分で、高さが13m又は軒の高さが9mを超えるもの。

3. 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、れん瓦造、コンクリートブロック造若しくは無筋コンクリート造の建築物又は建築物の部分で、延べ面積が300㎡、高さが13m又は軒の高さが9mをこえるもの。

4. 延べ面積が1.000㎡をこえ、且つ、2階以上の建築物。

二級建築士

二級建築士でないと設計監理が行えない建築物は下記の4つです。なお下記の3つは一級建築士も設計監理が行えます。

1. 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、レンガ造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造、石造の建築物で、延べ面積30m²を超えるもの。

2. 上記以外の構造かつ木造以外の建築物では、延べ面積100m²を超えるもの、または3階以上のもの。

3. 木造の建築物では、延べ面積が300m²を超えるもの、または3階以上のもの。

木造建築士

木造建築士が行える設計監理が行える建築物は下記の2つです。また一級建築士もしくは二級建築士も以下の建築物に対して設計監理が行えます。

1. 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、レンガ造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造、石造の建築物で、延べ面積30m²以下のもの、または2階以下のもの。

2. 木造の建築物では、延べ面積が100m²を超えるもの、または2階以下のもの。

設計監理の費用

設計監理料の算定方法は国土交通省告示第15号により、以下のように算定方法が定められています。

設計監理料=直接人件費+諸経費+特別経費+技術料等経費+消費税

ただしこの方法通りに設計料を決めると、現実的ではないかなり高額な設計料となることがほとんどなので、業務にかかる日数を少なく見積もったり、各事務所のローカルルールで設計料の算出方法を決めているケースも多く見受けられます。

そういった事情も踏まえて一般的な住宅の設計料の相場は「工事費の10〜20%」あたりです。また、工事費からではなく坪単価で設計監理料を算定する建築設計事務所もあり、その相場は1坪あたり7万円〜17万円ほどとなります。

特記仕様書とは

「仕様書」とは施工に関する明細(品質、成分、性能、精度、数量、手順など)や技術的要求を記載した書類です。

建設工事の内容を記した書類全般を示す「設計図書」に含まれる書類の一部で、原則的に「標準仕様書」と「特記仕様書」の2部で1組となっています。

ここでは両者の違いと「特記仕様書」の書き方について解説していきます。

標準仕様書との違い

まず標準仕様書ですが契約や施工、現場の安全にかかわる基礎的な内容から、建設する建物の構造や規模、工事範囲や材料、設備などまで工事に関する幅広い注意事項を記載します。

それに対して特記仕様書とは「標準仕様書に記される共通事項以外に、個々の工事や委託業務の特有事項を記した仕様書」を指します。

特記仕様書内では図面に記載できない詳しい情報が記載されており、もし標準仕様書と特記仕様書と図面で記載内容が異なる場合は、特記仕様書の内容を優先事項として扱います。

特記仕様書の書き方

特記仕様書では標準仕様書や設計図面にすでに記載がある基本的な内容は省略して記載します。

載せる情報としては下記の4つです。

• 工事の目的
• 工事の範囲
• 工事の工程
• 事前協議の概要

それぞれ解説していきます。

工事の目的

工事の目的は、工事名と施工内容も合わせて確認することが必要です。

まずは工事名と施工内容を記載します。具体的には「新築」や「建て替え」などのように目的が明確にわかるようにすることがポイントです。」

また工事内容次第では、工事や調査を実施する根拠になった災害名も併記する必要があります。

工事の範囲

工事の範囲は、対象の工事や工程のどの部分に関する内容かを把握するための項目です。

工事全体の範囲が記載されており、その中から対象の工事にチェックをつけて選ぶ方式と、個別に範囲を指定する方式の2種類があります。

工事の工程

工事の工程では工事の進め方について明確に記載します。

また、進め方と同じくらい重要なのが天候などで工事の継続が困難な場合に備えて、工事を中止するときの条件や、続行する場合の条件などの項目です。

事前協議の概要

工事の事前会議の概要も特記仕様書への記載が必要です。

協議を行った日時と担当者や協議内容などを記載し明確に記載します。

自治体によっては工事関係書類の作成方針に仕様書を根拠にするケースもあるので、その後の書類作成に支障のないようにする必要があります。

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