ユニック車とは?種類や操作に必要な資格、運転免許を解説!

建設機械と免許資格

ユニック車とは、荷台部分にクレーンが備わっているトラックです。機動性が高いので現場まで楽に移動でき、小回りも聞くため狭い場所でも運用できます。トラッククレーン、クレーン付きトラック、移動式クレーンと呼ばれることもあります。

ユニック車を公道で運転するためには、車両総重量・最大積載量に応じて大型・中型運転免許が必要です。ユニック車に設置されているクレーンを操作するためには、移動式クレーン運転士免許を取得したり。玉掛け技能講習を受講したりする必要があります。

ユニック車とは

ユニック車とは、一般的なトラックの荷台部分にクレーンが設置されているトラックです。

走行用にはトラック側の運転席を、クレーン操作にはクレーン側の運転席を利用します。トラックの機体を使用してるため、一般道などでの走行が可能で、速度も一般的なトラックと大きな違いはありません。

山間部から切り出した木材などの運搬や運んだ建築資材を高い階の場所まで持ち上げる作業、荷物や資材の吊り上げ、柱の組み立てに使用されます。

「ユニック車」は登録商標

「ユニック車」という言葉は、正式名称はユニッククレーンという「古河ユニック」が取り扱っている登録商標です。そのユニッククレーンが有名となり、一般的にユニック車と呼ばれるようになったそうです。ですから、ユニック車は古賀ユニックが取り扱っているトラッククレーンというのが正確な捉え方と言えます。

ただし、古河ユニックのユニック車に限らず、クレーン付きトラックの総称として「ユニック車」と呼ぶことも多いです。

トラッククレーンとの違い

ユニック車はクレーンが備わっているトラックですが、その呼び方は多岐に渡っています。

現場や扱っている会社によってそれぞれ呼び方が異なったりする場合もありますが、トラッククレーン、クレーン付きトラック、移動式クレーンは基本的にユニック車と同じものです。

ユニック車の特徴と構造

ユニック車は、機動性が高いので現場まで楽に移動でき、小回りも聞くため狭い場所でも運用できます。林道や畑の柵づくりに必要な資材を運ぶなど、用途も幅広いので、プライベートで使用される重機の中でも人気が高い機種と言えるでしょう

トラック部分はトラッククレーン用のものではなく、その多くが市販されている車両が使用されます。その後ろに油圧式クレーン装置を設置し、エンジンの出力を油圧に変換する装置によって動かします。

転倒を防止するアウトリガー

アウトリガーとは、安定性を補助する装置です。ユニック車のクレーンを使用する際はトラックをアイドリング状態にし、アウトリガーを横に張り出します。トラックの前後に設置された4本のアウトリガーが左右に大きくせり出し、アームが地面を押す構造です。

トラッククレーンで荷を吊り上げると徐々に重心や、トラックにかかる負荷が変化したとしても、アウトリガーによって安定的に運用することが可能です。

例えば、荷が作業半径を超えてしまうとアウトリガーを使用していても転倒してしまう可能性があります。具体的にいうと、作業半径が3mのクレーン付きトラックを使用した場合、3m以下の半径でブームを長く伸ばして吊っていたとしても、横に倒した際に荷の先端が作業半径の外に出てしまうと、ユニック車のクレーンのバランスが崩れてしまいます。

こうした事態を意識して作業することは難しいため、事前準備をしっかりしましょう。少なくともクレーンを購入する際に使用範囲を担当者に聞いておき、確実に使用できる範囲を決めておくと事故を未然に防ぐことができます。

ポイントは空車時を前提とすることです。トラックに積荷があれば、その分安定性が増すため、積荷がある状態でクレーンの稼働範囲を決めてしまうと設定した範囲で使用したのにもかかわらず転倒してしまう可能性があります。稼働範囲は性能表の範囲よりも低くなるでしょう。

長さによって作業半径が決まるブーム

ブームとは、クレーンの竿部分を指します。ブームの方向も重要です。クレーン付きトラックは、後ろ側正面が最も安定して荷物を吊り上げることができます。

側面の安定性もある程度高い反面、アウトリガーよりも前や特定の方向の安定性は極端に低くなってしまいます。これらの特性を理解した上で使用範囲を決定することが大切です。

後方の条件、前方の条件、側面での使用条件と言った具合に、使用する方向によって条件を定めるとよいでしょう。

寸法や道幅、使用条件を踏まえると軌跡図や性能表よりも使用範囲が限定される可能性がありますが、安全な運用のためには仕方ない面があります。

ユニック車の種類

ユニック車にはクレーン付き、簡易クレーン、ハイジャッキの3種類があり、トラックに設置されているクレーンの位置によって選別されます。

クレーン付きは、キャブと荷台の間に設置されているタイプです。
簡易クレーンは、荷台にクレーンが搭載されています。
ハイジャッキは、長いアウトリガーが搭載され、車体が斜めになるタイプを指します。

トラッククレーンは、荷台が、全てクレーン装置になっています。
簡易的な操縦席を搭載している小型の物から、トラックとクレーンの操縦が一体化した大型のタイプのものまで、種類も様々存在しています。

ユニック車の積載量による区分

ユニック車は、トラック部分に積み込める積載量により区分されます。

小型車

まずは小型車です。一般的に小型と言われるのは4t未満のトラッククレーンです。そのため、2tユニック車や3tユニック車という場合は、小型のトラッククレーンという事となります。

中型車

中型は4t以上10t未満のトラッククレーンです。ただし、メーカーによっては8t未満の場合もあります。4tユニック車、6tユニック車、7tユニック車、8tユニック車といったユニック車は、中型のトラッククレーンに分類されます。

大型車

10t以上のトラッククレーンが大型車となります。殆どのトラッククレーンには、安定性を保つために、足の底が四角いアウトトリガーを備えています。メーカーによっては、8t以上のトラッククレーンを大型車として区分けしている場合もあります。

ユニック車を公道で運転するために必要な免許

ユニック車を公道で運転するためには、車両総重量・最大積載量に応じた運転免許が必要です。

運転免許 最大積載量 車両総重量
普通自動車免許 3t未満 5t未満
中型自動車免許 6.5t未満 5t以上11t未満
大型自動車免許 6.5t以上 11t以上

ただし、公道を運転しない場合には、上記の免許は必要ありません。

また、ユニック車に設置されたクレーンの操縦は、上記の免許で行うことはできません。

ユニック車を操作するための資格

ユニック車に設置されているクレーンを操作するためには、資格や講習の受講が必要です。大型自動車免許や中型自動車免許では、ユニック車に設置されたクレーンの操縦はできません。

ユニック車は、吊り上げ荷重により必要な資格が異なります。

吊り上げ荷重 必要な資格
吊り上げ荷重0.5t以上1t未満
  • 移動式クレーン運転のための特別教育
  • 玉掛けの特別教育
吊り上げ荷重1t以上5t未満の場合
  • 移動式クレーン運転士免許
  • 小型移動式クレーン運転技能講習
  • 玉掛け技能講習
吊り上げ荷重5t以上の場合
  • 移動式クレーン運転士免許
  • 玉掛け技能講習

このうち、移動式クレーン運転のための特別教育と玉掛けの特別講習は、定められた規定に沿って事業主が実施することができ、小型移動式クレーン運転技能講習と玉掛け技能講習は各都道府県労働基準局またはその指定機関が行っています。

移動式クレーンの運転免許

移動式クレーン運転士免許

吊上荷重5t以上のユニック車で作業する場合は、国家資格である移動式クレーン運転士免許の取得が必要です。なおかつ免許を携帯しなければなりません。

小型移動式クレーン運転技能講習

吊上荷重3t未満のユニック車であれば、「小型移動式クレーン運転技能講習」を修了すれば運転できます。

移動式クレーンの運転の業務に係る特別教育

吊上荷重lt未満のユニック車のみ運転できます。

玉掛け技能講習・玉掛け業務の特別教育

上記のクレーンの運転免許以外に、玉掛けの資格が必要です。大型の工事現場では運転者と玉掛作業者が連携して作業を行いますが、一人でトラッククレーンの操作を行う場合は玉掛けの資格がなければ、荷を吊るすことができません。

玉掛けは、玉掛け用ワイヤーなどの専用器具をつかって、ユニック車のクレーンのフックに荷をかける作業を指します。ワイヤーを掛けるだけですが、バランスの悪い荷や掛けるところが限られている荷もあるため、相応の技術が求められます。特にクレーン作業で荷が落下する事故が多いため、荷の固定には明確な規則が定められています。

玉掛けの資格は教習所で「玉掛け技能講習」もしくは「玉掛け特別教育」を受講することで取得できます。「小型移動式クレーン運転技能講習」と併せて取得しておきましょう。

玉掛技能者の資格については、下記の記事で詳しく解説しています。

玉掛技能者とは?試験の難易度・合格率・勉強法・過去問・解答速報をご紹介!
玉掛技能者の資格は、建設現場では必須の資格です。ワイヤーロープである玉掛け用具を用いて、クレーンなどの吊り具に重量物を掛けるときに資格が必要になります。重量物を引き上げ移動することは日常的に起きる建設現場では、必須の資格と言えるでしょう。玉

ユニック車の検査と検査証の取り扱い

ユニック車は、作業を行う場所に検査証を備えていなければなりません。

再使用検査が必要なケース

使用をやめたユニック車や、検査を受けて2年以上使用していないユニック車は、安全性の面を保障するため、再使用する際には再使用検査を受けなければなりません。

注意していただきたいのが、検査を受けたとしても設置する前に原動機やブレーキ、吊り上げ機構、台車などを変更した移動式クレーンは、もう一度検査を受けなければならない点です。

再使用検査を希望する場合は、再使用検査申請書に移動式クレーン明細書と組立図、ジブの強度計算書を都道府県労働基準局長に申請します。申請書は自治体や厚生労働省のホームページから無料でダウンロードできます。

設置認可・検査証・再交付

ユニック車を設置する際は、設置認可申請書を現場を管轄する労働基準監督署長に提出します。もちろん、使用する移動式クレーンは製造検査もしくは再使用検査に合格していなければなりません。

認可が出れば、検査証が発行されます。認可申請書ではなく行政機関のホームページからフリーダウンロードできる設置報告書を労働基準監督署長に提出するだけで使用できます。

この検査証の有効期限は原則2年です。性能検査に合格した場合は、有効期限を2年よりも延長できます。

検査証を紛失・損傷した場合も手続きがあります。紛失したことを示す書面もしくは損傷した検査証と、再交付申請書を添付して所轄の労働基準監督署長に申請し、再交付を受けましょう。

有効期限を経過した後に使用を休止する場合は、期間内に所轄労働基準監督署長に申請しなければなりません。また、廃止する場合も検査証を返納する必要があります。

安全機構の確認

移動式クレーンやクレーン付きトラックは構造上の規定が多く、使用者は構造規格に適合するように保管する義務があります。

移動式クレーンには巻過防止装置として、警報もしくは巻き上げ停止機構が搭載されています。これらについてはフックやクラブヘッドの上面から、ジブのセンタにあるシーブなど接触する可能性がある部品・装置から25cm、直動式巻過装置にあたっては5cmを空けなければなりません。

また、水圧・油圧を動力とする移動式クレーンや4.9tトラッククレーンや5tトラッククレーンには安全弁が設けられいるので、適格範囲の荷重をかけたときに、適格範囲の水圧・油圧にで作動するように調節する必要があります。

点検

点検には作業開始前の点検、月次点検、年次点検があります。3t以上のユニック車は検査証を受けた後、3t未満のユニック車については設置した後にこれらの点検を行わなければなりません。2t・3t・4t・6t・7t・8t・10tのユニック車がありますが、それぞれ該当する点検を実施しましょう。

まず、3t未満のユニック車・移動式クレーンを設置した際は年次点検として、定格荷重によって行われる定荷重試験、定格荷重の1.25倍の荷重によって行われる過荷重試験、1.27倍の荷重によって行吊り定度試験を実施しましょう。基本的には軌跡図や寸法の適格の最大値を基準とします。

月に一回を行う月次点検では過巻防止装置を含む安全装置や警報、ブレーキなどの異常を確認します。ワイヤーロープやチェーンの損傷、フックやクラブバケットなどの損傷、配線・コントローラーなどに異常がないか点検を行ってください。実際の機構まで丁寧に確認する場合は、CADデータや図面、軌跡図などを参照するとよいでしょう。

作業次の点検では過巻防止装置、ブレーキ、クラッチ、コントローラーについて点検し、3年間保存しなければなりません。基本的に毎回の確認事項になるので書式はフリーです。また、各種図面を使用する必要はありません。点検の書式は無料でダウンロードできるサイトもあるため、参考にしてみてください。

性能検査

性能検査は検査証の有効期限が過ぎた2t・3t・4t・6t・7t・8t・10tのユニック車や、各種移動式クレーンが正常に使用できるかを検査するものです。

この検査は労働基準監督署長もしくは性能県債代行機関によって行われます。クレーンの構造や機能の点検、定格荷重をかけて定荷重試験、定格荷重の1.25倍の荷重によって行われる過荷重試験が実施されます。

労働基準監督署長による性能検査を受ける場合は移動式クレーンやクレーン付きトラックの代行申請書を提出します。

性能検査代行者が行う検査を受ける場合は移動式クレーン代行検査受検報告書を所轄労働基準監督署長に提出します。各労働局でフリーダウンロードできます。検査はフリーで行われるものではなく、申請者が立ち会う必要があります。

ユニック車の操作

トラックの安定性やブームの方向性まで考えると、安全な使用ができる範囲を考えるのが難しいと感じるかもしれません。

また、クレーン付きトラックの用途を考えると、吊る荷の重さが吊上荷重ギリギリになるケースは稀でしょう。たとえ吊上荷重ギリギリであったとしても、理論上は計器を確認すれば安全に作業ができます。2t・3t・4t・6t・7t・8t・10tユニック車では搭載できるクレーンが異なるので、十分な性能を保有していることを確認しておきましょう。

さらに、アウトリガを正しく広げてトラッククレーンの安定性を最大化しておくことも大切です。十分な道幅がない場合を除いて、前輪が浮かないように最大張まで広げておきます。その上で、次に紹介する手順を守りつつクレーンを使用しましょう。

Step1.アウトリガーを設置する

①動力のスイッチを入れる

最初にトラックの安定性を確保するために、ギアをパーキングに入れてハンドブレーキを引き、動かないように固定します。次に動力をユニック車のクレーンの油圧ポンプに伝えるため、クラッチを踏んでPTOのスイッチを入れます。エンジンの負荷をかけないようにするため、エアコンは必ず切っておきましょう。

②アウトリガを設置する

道幅に余裕がない、アウトリガを安定して展開できない状況でもない限り、基本的に左右とも最大限に伸長して使用します。また、安定性を最大化するために左右の長さは同じにしなければなりません。寸法を間違えないようにフリーのCADデータで確認しましょう。

③ジャッキ圧をかけて固定する

アウトリガにジャッキ圧をかけて車体を固定します。水準器を見ながら左右の高さを揃えましょう。前輪は浮かないようにし、タイヤとアウトリガーで荷重を分散するように心がけてください。

Step2.ブームを伸ばす

①フックを降ろす

まずは荷を吊るためのフックを下ろします。収納場所はユニック車のクレーンによって異なりますが、近年の機種は自動収納されています。フリーのCADデータ、取扱説明書などを参考にしてフックをリリースしてください。

②警報装置を起動する

ワイヤーの過剰な巻き上げを防止する警報のスイッチを入れましょう。過剰な巻き上げはワイヤーに負荷をかけるため、ダメージが蓄積するとワイヤーの破損につながります。警報装置が鳴ったら作業を止めて、状況を確認しましょう。

③ブームを伸ばす

ブームを伸ばす際は、まずワイヤーを少しだけ出します。次にブームを伸ばし、またワイヤーを出すという工程を繰り返します。荷の重さや形状に従ってブームの長さやワイヤーを調節します。ブームを縮める場合も、ワイヤーの巻き上げと交互に行いましょう。

Step3.玉掛けをする

①荷の重心にフックを合わせる

通常、雑誌をまとめるときのように直角に掛けられた王掛け用ワイヤーの輪の部分をクレーンのフックに掛けます。フックをかける前に、フックが荷の重心に来るようにブームを移動させます。必ず直角2方向から重心を確認してください。

②玉掛けする

フックにワイヤーを掛けるときは、ワイヤーの負荷が偏らないようにしましょう。適切に負荷が分散されていないとワイヤーが破損してしまいます。また、ワイヤーが重ならないようにすることも大切です。軌跡図を頭に入れておくと事故を減らせます。