木造住宅に対する耐震性の要求は非常に高くなっています
これまで、未曾有の大地震を経験してきた日本。
昨今の木造住宅に対する耐震性の要求は、非常に高くなっています。
これらを担保するためにも、木造住宅構造計算は欠かすことのできない要素であり、4号建築物に該当する場合でも、構造の検討は必要となります。
仕様規定に基づいた設計となっているか検討する際に効力を発揮するのが、木造構造計算ソフトです。
住宅設計の必須アイテム!多くの企業は導入している木造の構造計算ソフト
2階建てまでは、仕様規定を満たすようにすれば問題無いと考えている工務店などは多いかと思いますが、実際に仕様規定上はクリアしたとしても、構造計算をするとNGになる場合があるのです。
今までの作業の他に構造計算までなんて…とお思いの方も、ソフトを使うことで、このような事案を解決することができます。
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木造梁部材 断面算定
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木造梁断面の簡易チェックをするソフトです。
複雑な計算はできませんが、項目を選んでいくだけで梁断面に対する、せん断力、モーメント、たわみが自動計算されます。
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木造横架材の曲げとたわみに対する検定をするソフトです。
柱の座屈風圧に対する検定、軒・けらばの風圧に対する検定も行います。
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入力ボックスで、一括入力にて、建築構造計算書及び構造概要書が作成できます。
梁 calcW
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木造住宅の梁の計算を簡単に行うツールです。梁の断面チェックに最適です。
計算後の樹種、断面寸法及び荷重の変更にも対応しています。
一連の計算過程が計算書として出力されます。
木造の構造計算フリーソフトおすすめ その2
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木造梁断面の簡易チェックをするソフトです。
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在来木造簡易耐震診断ソフト『愛知なまず』
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貴方の木造耐震診断ソフトです。詳しく調べる前におすすめです。
今後心配される東海地震・東南海地震・南海地震の対策のために、木造の方は少しでも調べておくと安心です。
方づえ Kさん
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方づえの断面検定ができます。
2階建バランス検討 Excel for Windows
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木造の構造計算フリーソフトおすすめ その2
木造住宅耐震診断/精密診断法1・EXCEL計算シート
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精密診断法のエクセル(耐震診断)計算シートです。フリーソフトとなっています。計算は、2012年改訂「木造住宅耐震診断・補強方法」に準拠した形です。基礎の部分や補強による変更、金物補強などによる接合部補強の変更といった部分が扱いやすくなっているため、各検討が比較的簡単に行うことができます。シェアソフトに比べると手間はかかりますが、気軽に使うツールとしては十分です。
一般診断法/精算法・wee結果支援(耐震診断)計算シート
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木造住宅の耐震診断の支援ソフトです。2012年に改訂された「木造住宅耐震診断・補強方法」に準じています。計算は、日本建築防災協会の一般診断法計算プログラム「Wee2012」の計算結果を転記して「精算法」で表示します。また、多雪区域の「無積雪時の評点と積雪時の評点の両者を求め、低いほうの評点を当該建物の耐震診断評点とする。」(耐力の診断の概要から)にも対応。
梁calcW
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木造住宅における梁に対する計算を行うソフトです。在来軸組構法の梁の計算行えます。スパンと荷重程度の数値入力だけで、他の条件設定はコマンドボタンをクリックするだけです。また、計算過程は計算書として出力されますので、計算方式を確認するのも簡単です。少ない入力の簡単操作で素早く計算を行いたい時には、活用してみたいソフトウェアと言えるのではないでしょうか。
木造柱の設計
木造柱の設計
木造柱の座屈・めり込み耐力の断面計算を行うソフトです。在来工法およびツーバイフォー工法に対応していて、構造用製材、枠組壁工法構造用製材、構造用集成材、構造用単板積層材について使用が可能です。風圧による曲げ・せん断応力を指定することにより,
考慮することができます。なお、通常の印刷出力のほか、印刷ページ毎にクリップボード転送を行うことができるようになっています。
軸組み計算プログラム
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木造2階建て用の軸組み計算を行うフリーソフトです。プログラムを起動して「新規作成」を開くことで、計算したいプロジェクトを作成することができます。床面積や軸組の長さなどを指定して計算を実行することで、計算が可能となっています。インストーラーを必要としないプログラムとなっているので、ダウンロードして解答すれば、すぐに使えるのも魅力的なソフトだと言えるでしょう。
フリーソフトを活用した木造の構造計算の基本 その1
木造構造計算での部材の許容応力度
木造構造計算での許容応力度は樹種ごとに決められた基準強度に安全率を乗じて算定を行います。
このようにして求めた許容応力度が部材に発生する応力度を上回ることを確認して安全性の確認を行います。
基準強度は、樹種ごとに建築基準法の告示により値が定められています。
樹種以外にも製材か集成材によっても基準強度は変わります。
製材には日本農林規格(JAS)が規定するJAS材と呼ばれるものと、無等級材の2種類があり、それぞれ基準強度が異なります。
集成材は、ラミナ(挽き板)の種類や構成により基準強度が異なります。
木材の許容応力度は、鉄筋コンクリートや鉄骨と同様に長期と短期の2種類があり、それぞれ基準強度に乗ずる安全率が異なります。
ただし、積雪荷重時は長期許容応力度を常時の1.3倍、短期許容応力度を地震・風荷重時の0.8倍とする点に注意が必要です。
木造の構造計算では許容応力度の算定の仕方が鉄筋コンクリート造や鉄骨造と異なる点があります。
これらに対応したフリーソフトがダウンロード可能ですのでぜひ活用しましょう。
木造構造計算での梁の応力とたわみの検討方法
①応力の検討
梁の断面算定では部材に生じる応力とたわみ量(変形量)と検討を行う必要があります。
応力は、部材に地震などの外力が生じた際に、部材内部に生じる力のことで内力ともいいます。
応力は軸力、曲げモーメント、せん断力の3種類がありますが、梁の断面算定では、一般的に曲げモーメントとせん断力に対して検討を行います。
部材に生じた曲げモーメントとせん断力からそれぞれ曲げ応力とせん断応力を算定し、その値が部材の持つ許容応力度以内に納まっているかを確認します。
ただし、一般に単純梁の場合は曲げモーメントによる応力で部材断面のサイズが決定することが多いため、仮定断面の段階では曲げモーメントによる検討のみを行うことで問題ありません。
局所的に大きな集中荷重が作用する場合はせん断力により部材断面が決定することがあるため注意が必要です。
応力の算定は、荷重形式や支持条件により算定方法が異なるため、ご自身がよく使用する公式に対応したフリーソフトを活用すると便利です。
②たわみの検討
部材に外力が加わると部材は変形します。
この変形のことをたわみといいます。部材に生じる応力度が許容応力度以内に納まっていても、たわみが過大となると、床の振動などの問題が生じるため確認が必要となります。
部材のたわみにはヤング係数と断面二次モーメントが影響します。
ヤング係数とは材料の固さを示す値位あり、木材の場合、材種によって異なった値となります。
例えば、スギのヤング係数Eは7000N/mm2ですが、ベイマツのヤング係数Eは10000N/mm2と大きい値となっています。
ヤング係数が大きい値となるほど固い変形しにくい材料であることを示します。
また、断面二次モーメントは部材断面の形状による変形のしにくさを示す値であり、長方形断面の場合、断面二次モーメントI=b×h3/12(b:幅、h:せい)となり、大きい値となるほど、変形しにくくなります。
なお、ヤング係数Eと断面二次モーメントIを掛けた値を曲げ剛性といい、EIと表します。
たわみの許容値は建築基準法ではスパンに対して1/250以下とされていますが、仮定断面の段階では1/600程度以下かつたわみ量20mm以下とすることがよいでしょう。
また、たわみの算定ではクリープと呼ばれる、時間の経過とともに変形が増大する現象を考慮する必要があります。
木造構造計算ではこのクリープを考慮して変形量の割増係数(変形増大係数)を2として、たわみに対する検討を行う必要があります。
フリーソフトを使用する場合は変形増大係数がきちんと考慮されているかよく確認しましょう。
木造構造計算での梁の仮定断面の算定
ここでは、単純梁の仮定断面の算定方法について説明を行います。
①検討条件の整理
以下の条件の確認を行います。
・荷重条件(固定荷重、積載荷重、荷重形式など)
・材料条件(材種、許容応力度、ヤング係数など)
・部材条件(スパン、断面形状など)
なお、一つの梁に様々な荷重が作用する場合には応力やたわみの算定が複雑となるため、仮定断面の段階では計算を容易にするため、荷重を安全側となるようにまとめてもよいです。
②たわみの検討
木造の梁の断面算定では、一般的にたわみの制限により断面が決定することが多いです。
そのため、まずたわみの検討を行い断面を設定した後に、曲げモーメントに対する検討を行うと効率がよいです。
たわみの検討では、スパンの1/600以下かつたわみ量20mm以下とするために必要な断面二次モーメントを求めます。
この断面二次モーメント以上の断面性能をもつ断面を一般流通材の断面性能表から選びます。
③曲げモーメントに対する検討
たわみの検討により求めた断面形状で、曲げモーメントに対する検討を行います。
検討の結果、曲げ応力度が許容曲げ応力度以下となっていれば仮定断面算定は完了です。
曲げ応力度が許容曲げ応力度を上回る場合には、断面形状を見直すか、基準強度の高い材種に見直します。
これらの構造計算を手計算で行うと非常に手間がかかります。
木造に対応した様々なフリーソフトがダウンロード可能ですので、ぜひ活用しましょう。
フリーソフトを活用した木造の構造計算の基本 その2
木造構造計算での片持ち梁の仮定断面の算定
木造建物では屋根の軒先やバルコニーなど、梁が跳ね出す箇所がよくあります。
このような梁は片持ち梁の公式を用いて仮定断面の算定を行います。
検討方法は単純梁のときと同様にまず、たわみの検討を行い、たわみの検討により求めた断面形状で応力度が許容曲げ応力度以下となるか確認を行います。
この際に、片持ち梁ではせん断力で断面が決定することがあるため、せん断力に対する検討を忘れないようにしましょう。
①検討条件の整理
バルコニーなどでは床による等分布荷重と先端手すりなどによる集中荷重の2種類の荷重が作用します。
これらをそれぞれ求めて足し合わせるのは計算が複雑となるため、仮定断面算定の段階では安全側となる先端集中荷重としてまとめて検討するとよいでしょう。
②たわみの検討
単純梁のときと同様にたわみ量がスパンの1/600以下かつ20mm以下となる断面二次モーメントから、断面形状を設定します。
③曲げモーメント、せん断力に対する検討
たわみの検討により求めた断面形状と曲げモーメント、せん断力から曲げ応力度、せん断応力度を求め、それぞれが許容応力度以内となっていることを確認します。
せん断応力度の算定の際には以下の点に注意します。
・断面積は断面欠損を考慮した有効断面積とすること。
・部材断面の形状による形状係数を考慮すること。長方形の場合は1.5、円形の場合は1.33となります。
また、その他に注意すべき点として、木造の場合、片持ち梁に跳ね出し部の建物本体側のスパンに注意します。
建物本体側のスパンが小さいと、片持ち先端部のたわみ量を抑える効果があまりないため、支持点が固定とした片持ち梁の検討では危険側の検討となることがあります。
片持ち梁など特殊部位の構造計算に対応したフリーソフトがあると便利です。
それぞれ特徴がありますので比較検討してご自身にあったものを探しましょう。
木造構造計算での柱の仮定断面の算定
建築基準法では柱の小径や有効細長比に対する制限があります。
柱の小径については、柱の寸法/横架材間の距離を階数や建築物の構造形式により1/20~1/30に制限しています。
また、有効細長比は座屈長さ/断面二次半径を150以下に制限しています。いずれも柱を座屈させないようにすることが目的です。
仮定断面の算定では全ての柱について検討を行う必要はありません。
一般的には、内柱の場合は負担面積が大きく、荷重条件が最も大きくなる1階の柱を選定して軸力に対する検討を行います。
外周部柱の場合は軸力だけでなく、風荷重・地震荷重による水平力の影響もあるため曲げの影響も考慮して検討を行います。
その他、吹き抜け部の柱など特殊な部位についても別途検討が必要です。
①内柱の断面検討
内柱の検討では一般に軸力に対して検討を行います。
柱の座屈長さと断面から有効細長比を算出し、長期許容圧縮応力度を求めます。
この長期許容圧縮応力度が負担面積から求めた圧縮応力度を上回っていることを確認します。
逆に、柱の許容圧縮応力度から負担可能な床面積を求め、柱の負担面積が負担可能な床面積以下となっているか確認を行うことも可能です。
②外柱の断面検討
外柱の検討では、軸力に加えて風・地震荷重時の曲げモーメントの影響を考慮する必要があります。
このとき、長期許容応力度は基準強度の1.1/3倍ですが、短期許容応力度は2/3倍となるため、鉄筋コンクリートや鉄骨と異なる点に注意が必要です。
軸力による圧縮応力度と曲げモーメントによる曲げ応力度の和が短期許容応力度以下となっていることを確認します。
柱の構造計算は梁以上に複雑です。ぜひフリーソフトを活用して効率よく検討を行いましょう。
木造構造計算での基礎の仮定断面の算定
これまで柱や梁などの上部架構の断面検討を行いましたが、上部架構の荷重を地盤に確実に伝達するために基礎の検討も必要となります。地盤の地耐力は地盤調査会社により実施します。
調査方法は小規模な木造建築の場合スウェーデン式サウンディング試験により行うことが一般的です。
得られた地盤調査結果より基礎形式を決定します。
ここでは、小規模木造建築に一般的に採用されるべた基礎と布基礎の仮定断面の算定方法について説明します。
①べた基礎
べた基礎では柱直下に地中梁を配置して耐圧盤の負担面積を経済的かつ地耐力以下となるように区画します。
吹き抜け部など柱がない箇所は耐圧盤の負担面積が大きくなりすぎるため、小梁を配置します。
耐圧盤には、上部建物重量による地反力が鉛直上向きに作用します。
この鉛直上向きの分布荷重による曲げモーメントに対して、必要な耐圧盤厚さと鉄筋量を求めます。
続いて、地中梁にも耐圧盤と同様に地反力による鉛直上向きの分布荷重が作用するするため、曲げモーメントに対して必要な地中梁せいと鉄筋量を求めます。
②布基礎
布基礎の場合もべた基礎と同様に柱直下に地中梁を配置します。
次に、上部建物重量と地耐力からフーチング幅を決定します。
地耐力の検討には基礎自重とフーチング上の埋戻し土の重量を考慮します。
続いて、地反力により地中梁とフーチングに生じる曲げモーメントから地中梁せい、フーチングの厚さと鉄筋量をそれぞれ求めます。
木造構造計算のフリーソフトの中には基礎の検討に対応したものもあります。
上部架構だけでなく基礎の構造計算も非常に重要ですので、基礎の検討に対応しているかよく確認しましょう。