【初心者必見】鉄骨構造の特徴と規格・設計基準の完全マニュアル

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鉄骨構造は高い強度と柔軟な設計自由度を兼ね備えており、大型施設や高層建築などに幅広く用いられています。断面形状や部材の規格により性能が異なり、建物の規模や用途に応じた適切な選定が必要です。施工性に優れる一方で、耐火性や防錆性の確保といった短所への対策も重要です。設計に際しては、最新の規準書や設計指針を理解して活用することが求められます。
このページでは、鉄骨構造の特徴や規格、設計上の注意点について解説しています。

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このページでは、鉄骨のCADデータやソフトがダウンロードできるサイトを紹介しています。  ・鉄骨のCADデータ ダウンロードサイトの紹介   一般構造用角形鋼管、ビルドH鋼、リップ溝形鋼、I形鋼、溝形鋼、L型アングル、H形鋼、   ビル用ウ...

鉄骨の断面形状

鉄骨の断面形状は、鋼材の性能と使用目的に大きな影響を与えます。鋼材自体は引っ張り強度が高いものの、曲げや圧縮の強度には限界があるため、さまざまな断面形状に加工され、その強度を最大限に活かす工夫がなされています。このため、断面形状の設計は非常に重要で、想定される荷重の方向に対して最適な断面が選ばれます。以下に、主要な鉄骨の断面形状について詳しく解説します。

鉄骨の断面形状は、建築や土木の構造設計において極めて重要な要素です。それぞれの形状が持つ特性を理解し、適切な場所に最適な鋼材を選ぶことが、耐久性や安全性を確保するための鍵となります。このように、鉄骨の断面形状は非常に多様で、それぞれの形状が持つ特性を活かして様々な用途に利用されています。

H形鋼

H形鋼は、断面がアルファベットのHの形をしていることからその名がつけられました。引っ張り、曲げ、圧縮のいずれの応力に対しても高い耐力を持つため、非常にバランスの良い鋼材です。こうした特性から、建築や土木工事において最もよく使用される鋼材の一つとなっています。鉄骨造の建物の柱や梁に多用され、また橋梁や高層ビルでも頻繁に用いられます。

角形鋼管

断面がボックス状(箱形)になっている鋼材です。角形鋼管は、X軸およびY軸方向に対して等しい断面性能を持ち、そのため柱材として広く利用されています。また、閉鎖断面であるため、曲げ捩れ変形(横座屈)や局部座屈に対する強度も高いです。さらに、内側と外側での熱膨張や収縮が均等であるため、温度変化への耐性も優れています。

円形鋼管

円形鋼管は名前の通り断面が円形をしており、全方向にわたって均一な断面性能を提供します。このため、圧縮材としての使用が多く見られます。たとえば、円形鋼管は高層建築物の柱や大型パイプラインの支柱などに最適です。また、角形鋼管と同様に曲げ捩れ変形や局部座屈に対しても強い特性を持っています。

山形鋼(アングル)

山形鋼(アングル)は、断面がアルファベットのLの形をしています。この形状は、一方が垂直方向に力を受ける際に強力であり、多くの場合、補強材やフレームの一部として使用されます。また、そのシンプルな形状は、さまざまな接続方法に対応できるため、設計の自由度を高めます。

溝形鋼(チャンネル)

溝形鋼(チャンネル)は、断面が片仮名のコの字の形をしています。この形状は、特に床材や屋根材の補強に適しています。溝形鋼が提供する開放形の断面は、荷重を複数の方向に効率的に分散させることができます。

リップ溝形鋼(リップドチャンネル、C形鋼)

リップ溝形鋼(リップドチャンネル)は、溝形鋼の開口部を内側に少し折り曲げた形状を持つ鋼材です。リップ溝形鋼は、断面がC形のように見え、軽量鉄骨として幅広く使用されています。この形状は、強度を維持しつつも鋼材の重量を減らすことができるため、コスト効率が高いです。

鉄骨の規格

以下のように、鉄骨の規格はその用途や特性に応じて多岐にわたり、特化した性能を持つ素材が規定されています。各鋼材の特性と用途を理解することが、適切な選択と利用に繋がります。

一般構造用圧延鋼材(JIS G3101 SS材)

一般構造用圧延鋼材、通称SS材(Standard Steel)は、建築はもちろんのこと、多岐にわたる分野で広く使用されています。SS材は主に溶接を行わず、応力の範囲内で物理的に弾性を利用して使われることが一般的です。構造物としての汎用性が高く、多種多様な用途に対応できる特性を持っています。

溶接構造用圧延鋼材(JIS G3106 SM材)

溶接構造用圧延鋼材、SM材(Steel Material)は特に溶接を行う部材に適した鋼材です。化学成分の規定がSS材よりも厳しく、品質管理が徹底されています。SM材は3つの種類に分類されており、それぞれの用途に応じた特性があります。A種は弾性範囲、B種は塑性変形を受ける部材に適しており、C種は特に板厚方向に応力を受けるダイヤフラム等の部材に適しています。B種とC種には特にシャルピー衝撃試験の規定があり、衝撃に対する耐性が重要視されています。

建築構造用圧延鋼材(JIS G3136 SN材)

建築構造用圧延鋼材、SN材(Structural Steel for Building)は、特に建築構造物における塑性変形能力を期待される鋼材です。強度の異なるSN400シリーズとSN490シリーズが存在し、それぞれの用途に応じて使い分けされています。この鋼材は従来のSS材と比較して、化学成分の規定が厳しく、降伏点のばらつきを抑えるための規定があります。特に二次設計(大地震時)において、実際の崩壊形に近づけるための降伏点の安定性が求められています。

一般構造用炭素鋼管(JIS G3444 STK材)

一般構造用炭素鋼管(Standard Carbon Steel Tube)は、広範な構造材として使用される円形鋼管です。建築だけでなく、多種多様な産業分野で利用され、特に強度と耐久性に優れています。そのため、各種構造物の骨組みとして非常に重宝されています。

建築構造用炭素鋼管(JIS G3475 STKN材)

建築構造用炭素鋼管、STKN材(Steel Tube for Building)は特に建築構造に適した円形鋼管で、塑性変形能力に優れています。STK材と比較すると、STKN材は建築構造物において更なる信頼性と耐久性を提供します。高い強度を持ちながらも、地震やその他の動的な応力に対する耐性が向上しています。

一般構造用角形鋼管(JIS G3466 STKR材)

一般構造用角形鋼管、STKR材(Square and Rectangular Steel Tube)は、建築に限らず幅広い用途で用いられる角形鋼管です。しかし、特筆すべき点として、ロール成形のSTKR材は溶融亜鉛めっきを施す際に割れが生じやすいため、特定の用途では注意が必要です。この角形鋼管は特に多目的で使用されるため、その特性を理解した上での使用が求められます。

鉄骨構造の長所

鉄骨構造とは、建築材料としての鉄骨を用いた建物の構造形式を指します。木材や鉄筋コンクリートと比べて独自の利点があり、特定の用途や条件下でその優位性を発揮します。

まず、鉄骨は木材よりもはるかに高い強度を持ち、鉄筋コンクリートよりも単位重量が軽いため、長大な梁(はり)の使用が可能です。これにより、柱間のスパンが広がり、大規模な空間を少ない柱で支えることができます。結果として、建物内部の柱の数が減り、開放感のある広い空間を設計しやすくなります。

特にラーメン構造と呼ばれる建築方式では、耐力壁が不要となり、間取りの自由度が格段に向上します。これにより、住居やオフィスビルのレイアウトをより柔軟に変更することができ、将来的なリフォームや改築も容易になります。ただし、H形鋼の柱に関しては、その弱軸方向に筋違いを配置する必要があり、構造的な配慮が求められます。

また、重量鉄骨ラーメン構造を採用する場合、鉄骨部材は工場で生産され、現場では基本的に組み立て作業のみが行われます。このため、現場での接合部管理に集中することで、全体の構造品質を一定に保持することが可能です。これにより、安定した品質の建物を短期間で供給できるというメリットもあります。

トラス構造では、構造的な安定度が非常に高いため、体育館の屋根や鉄橋など、大スパンが要求される場面でその威力を発揮します。トラスは複雑な形状を持つことが多いですが、その分、非常に高い強度を持ち、大きな荷重にも耐えることができます。このため、他の建材では実現できないような大胆で長大な構造物を設計することが可能です。

さらに、鉄骨の材質は均一であり、品質管理が容易です。これにより、安定した材料供給が可能となり、建設プロジェクトの計画通りに進行させることができます。工期が短くなることも大きなメリットであり、コストや時間の節約につながります。

そして、建物の解体時には鉄骨が有価物であるため、スクラップとして再利用されることが一般的です。これにより、解体コストの削減が期待でき、環境負荷の低減にも寄与します。

総じて、鉄骨構造は多くの利点を持ち、その特性を生かすことで、より効率的かつ柔軟な建築が可能となります。こうした利点を踏まえ、鉄骨構造は今後もさまざまな建築プロジェクトで重要な役割を果たすことでしょう。

鉄骨構造の短所とその対策

鉄骨は建築材料として高い強度と信頼性を誇りますが、特有の問題点も存在します。まず、鉄骨は不燃物とされるものの、実際には高温に非常に弱いです。例えば、摂氏550度程度に達すると急激に強度が低下する傾向があります。このため、火災が発生すると短時間で建物の構造が著しく損なわれるリスクが高く、崩壊の危険性を伴います。特に、2001年の9.11テロ事件で倒壊したワールドトレードセンターは火災によって鉄骨の強度が低下し、そのため座屈現象が発生し、建物自体が連鎖的に崩壊しました。

一方で、木造建築は火災に対して表面が炭化することで内部を保護する特性があります。木材は完全に燃え尽きるまでにかなりの時間がかかるため、短時間で建物全体が崩壊するケースは稀です。このため、鉄骨には耐火被覆を施すことが一般的であり、防火措置としてこれが不可欠となります。

さらに、鉄骨のもう一つの課題は座屈です。鉄骨は高い強度を持つため、コンクリートや木質材料と比べると断面を小さくできる利点がありますが、その分座屈のリスクが無視できなくなります。座屈とは、構造部材が圧縮力を受けた際に突然横方向に曲がり、構造全体が不安定になる現象です。このため、適切な設計と対策が求められます。

また、鉄骨は水分に触れると容易に錆びる性質があるため、特に外部や水回りに用いる際には防錆処理が必須です。錆びが進行すると構造強度が低下し、安全性が脅かされます。それに対して、防錆塗料や防錆被覆などを施すことでこの問題を軽減することができます。

断熱性の面でも鉄骨には課題があり、木材と比べて約350倍も断熱性が低いです。これにより、鉄骨はヒートブリッジを起こしやすく、建物内部の温度管理が難しくなります。このため、外壁を厚くする外断熱工法が推奨され、断熱材の選定や施工方法が重要となります。

加えて、鉄骨構造は地震時の変形に対しても注意が必要です。鉄骨は変形が大きいため、パネルやカーテンウォールが損傷したり脱落するリスクが高まります。これに対して、減震・耐震設計や適切な接合部の設計が求められます。

総じて、鉄骨構造においては火災、防錆、断熱、座屈、地震といった複数の要素に対する対策が求められます。ただし、これらの対策が適切に施されることで、鉄骨の優れた強度や耐久性を活かしながら、建物の安全性と快適性を確保することが可能です。

鉄骨構造設計における主要な規準書

鉄骨構造の設計においては、多岐にわたる規準書が存在し、それぞれの規準書は異なる観点から設計や施工のガイドラインを提供しています。以下に、主な規準書とその概要を紹介します。

これらの規準書は、それぞれ異なる視点から鋼構造物の設計や施工をサポートしており、複雑で高度な建築を実現するための重要なガイドラインです。各規準書を適切に活用し、統合的な視点から設計・施工を行うことで、安全で持続可能な建築物を実現することができます。

鋼構造設計規準―許容応力度設計法(日本建築学会)

「鋼構造設計規準―許容応力度設計法(日本建築学会)」は、鋼構造の基本的な設計基準を提供しています。この規準書は、構造物にかかる応力をどの程度まで許容できるかを詳細に定めており、安全性と経済性のバランスを考慮した設計が可能となります。

鋼構造接合部設計指針(日本建築学会)

「鋼構造接合部設計指針(日本建築学会)」は、鋼構造の接合部に特化した設計ガイドラインが示されています。建物の強度や耐久性に直結する重要な部分であり、接合部の適切な設計は構造全体の安定性に寄与します。

鋼構造塑性設計指針(日本建築学会)

「鋼構造塑性設計指針(日本建築学会)」は、鋼構造物の塑性設計に関する詳細な指針を提供しており、特に地震などの極限状態における構造の振る舞いを考慮した設計が求められます。

鋼構造限界状態設計指針・同解説(日本建築学会)

「鋼構造限界状態設計指針・同解説(日本建築学会)」は、限界状態設計法の観点から鋼構造の設計ガイドラインを提供しています。この規準書は、使用限界状態や破壊限界状態に基づく設計の方法を詳述しており、より現実的な設計が可能となります。

鋼構造座屈設計指針(日本建築学会)

「鋼構造座屈設計指針(日本建築学会)」は、鋼構造物の座屈に関する設計ガイドラインを示しており、構造物の強度低下や突然の破壊を防ぐための重要な基準となります。

鋼管トラス構造設計施工指針・同解説(日本建築学会)

「鋼管トラス構造設計施工指針・同解説(日本建築学会)」は、鋼管を用いたトラス構造の設計と施工に関する詳細なガイドラインを提供しており、特に大規模な建築物や橋梁における設計に役立ちます。

冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル(建築研究所)

「冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル(建築研究所)」は、冷間成形された角形鋼管を使用した構造物の設計と施工に関する詳細なマニュアルです。特に、現代の建築において広く使用されるこの材料の特性を活かした設計が可能となります。

高力ボルト接合設計施工ガイドブック(日本建築学会)

「高力ボルト接合設計施工ガイドブック(日本建築学会)」は、高力ボルトを使用した接合の設計と施工に関する詳細なガイドラインが提供されています。高力ボルトは、構造物の強度と耐久性を大幅に向上させるため、重要な部材となります。

溶接接合設計施工ガイドブック(日本建築学会)

「溶接接合設計施工ガイドブック(日本建築学会)」は、溶接を利用した接合に関する詳細な指針を提供しており、これによって精度の高い接合が実現できます。

鋼構造建築溶接部の超音波探傷検査規準・同解説(日本建築学会)

「鋼構造建築溶接部の超音波探傷検査規準・同解説(日本建築学会)」は、溶接部の非破壊検査方法としての超音波探傷検査の実施方法と基準が示されています。この規準書によって、溶接接合部の内部欠陥を効率的に検査することが可能となり、構造物の安全性を確保することができます。