種類ごとの特徴と選び方がわかる!アンカーボルトの規格・計算・耐震設計ガイド

21.2 768x512 - 種類ごとの特徴と選び方がわかる!アンカーボルトの規格・計算・耐震設計ガイド 鋼構造 ソフト

アンカーボルトは構造物を安全に固定するために不可欠な部材であり、用途や設置条件に応じてさまざまな種類があります。正しい選定と計算を行うことは、耐震性や長期的な安全性の確保に直結します。本ページでは、アンカーボルトの基本知識から代表的な種類、使用例、そして耐震計算や選定に関する実務的なポイントまでを解説しています。このページでは、アンカーボルトに関する規格や強度計算の基礎を解説しています。

37fe2fb50853b38ef00b2e302d79390b 160x90 - 種類ごとの特徴と選び方がわかる!アンカーボルトの規格・計算・耐震設計ガイド
アンカーボルトの強度計算のフリーソフトとCADデータ
この記事は、アンカーボルトの強度計算ができる、フリーソフトとCADデータがダウンロードできるサイトをご紹介します。 アンカーボルトとは、構造部材や設備機器などが分離・浮遊・移動・転倒するのを防ぐために、コンクリート内に埋め込むことで固定する...

アンカーボルトとは

アンカーボルトとは、構造部材や設備機器などが分離・浮遊・移動・転倒するのを防ぐために、コンクリート内に埋め込むことで固定するねじです。

アンカーボルトは主に以下のような用途で使用されています。
 •木造建築物の土台の固定
 •鉄骨造建築物の鋼製柱脚の基礎コンクリートへの固定
 •鉄筋コンクリート製の柱・梁などへの設備機器の固定

アンカーボルトの規格

2010年に制定されたJIS規格「JIS B 1220-2010」と「JIS B 1221-2010」2015年12月に改正され「JIS B 1220-2015」に統一されています。

 記号    材質  最小引張強さ ナット強度 座金硬さ 加工方法 サイズ
ABR400    SNR400B  400N/mm²  5J  200J  転造ねじ  M16〜M48
ABR490    SNR490B  490N/mm²  5J  200J  転造ねじ  M16〜M48
ABR520SUS  SUS304A  520N/mm²  50  200J  転造ねじ  M16〜M48
ABM400    SNR400B  400N/mm²  5J  200J  切削ねじ  M24〜M48
ABM490    SNR490B  490N/mm²  5J  200J  切削ねじ  M24〜M100
ABM520SUS  SUS304A  520N/mm²  50  200J  切削ねじ  M24〜M48

アンカーボルトの種類

アンカーボルトには、内ネジアンカーや打ち込みアンカー、ケミカルアンカー、締め付けアンカー、などさまざまな種類があります。

内ネジアンカー

内ネジアンカーは、コンクリートの表面から頭が出ないように六角ボルトや吊ボルトなどを施行することができる、一般的なアンカーボルトです。

打ち込みアンカー

打ち込みアンカーは、セットした本体に芯棒を打ち込むことで固定できるタイプで、ルーティアンカー、ベストアンカー、オールアンカー、タイトアンカー、Cタイプアンカーなどがあります。

ケミカルアンカー

ケミカルアンカーは、カプセル型の容器に入った接着剤によりコンクリートなどの土台に接着し固定するタイプです。

締め付けアンカー

締め付けアンカーは、ネジを締めつける要領でコンクリートに固定するタイプです。

アンカーボルトの耐震計算と選定計算

 アンカーボルトの耐震計算と選定計算は、建築設備の安全性を確保するために必要不可欠なプロセスである。特に地震が多い日本においては、その重要性は一層高まる。

 アンカーボルトの耐震計算と選定計算は、多岐にわたる要素を考慮する必要がある。しかし、適切な設計を行うことで、一貫性と精度の高い設計・施工が可能となる。地震に強い構造物を築くために、適切な計算と施工法を遵守し、安全性を第一に考える必要がある。

 『建築設備耐震設計・施工指針』(日本建築センター)に基づき、アンカーボルトの耐震計算と選定計算方法について解説する。以下の手順を通じて、選定したアンカーボルトが十分な強度を持つことを検証する。適切な耐震設計・施工を行うことで、機器と建物の安全性を確保する必要がある。

機器の質量

・運転質量(W)
 機器が運転中に持つ質量。単位はキログラム (kg) で記述する。

アンカーボルトの基本情報

・アンカーボルトの総本数 (n)
 設置されるアンカーボルトの総数。具体的な数で表す。

・アンカーボルトのサイズ
 ボルトのサイズを示し、例えば「M20−L」形状で明記する。

・一本当りの軸断面積 (A)
 ボルト一本が持つ軸の断面積。単位は平方ミリメートル (mm²) 。

・引張りを受けるボルトの数 (Nt)
 機器転倒を考慮し、引張り強度を受けるボルトの総数。

機器設置に関わる寸法

・機器重心の高さ (Hg)
 据え付け面から機器重心までの高さ、単位はセンチメートル (cm)。

・ボルトスパン (L)
 設置方向から見たボルトのスパン、単位はセンチメートル (cm)。

・ボルト中心から機器重心までの距離 (Lg)
 設置方向から見たボルト中心から機器重心までの距離、Lgは常にLの半分以下とする。

地震力の設定

・水平震度 (Kh)
 設計用の水平震度は、与えられたGで表し、地震時に機器とアンカーボルトが受ける水平力を計算する。

・垂直震度 (Kv)
 設計用垂直震度は、水平震度の半分として設定する。具体的にはKv = Kh / 2である。

地震力の計算

・水平地震力 (Fh)
 計算式 : Fh = g × Kh × W
 単位  : ニュートン (N)

・垂直地震力 (Fv)
 計算式 : Fv = g × Kv × W
 単位  : ニュートン (N)

作用力の算出

・アンカーボルトの引き抜き力 (Rb)
 計算式 :Rb = {Fh × Hg – (g × W – Fv) × Lg} / {L × Nt}
 単位  : ニュートン (N)

・アンカーボルトのせん断力 (Q)
 計算式 :Q = Fh / n
 単位  : ニュートン (N)

応力度の判定

・引張り応力度 (σ)
 計算式  :σ = Rb / A
 判定条件 : σ アンカーボルトの施工法

アンカーボルトの施工法

・施工法
 アンカーボルトの性能を確保するためには、適切な施工法も重要である。
 具体的な施工方法を説明する。適切な工具や方法を用いることが大切である。

・呼称径 (d2)
 ボルトの直径を明記する。

・埋込長さ (LB)
 ボルトの埋込長さを明記し、適正な長さが確保されているかをチェックする。

・コンクリートの設計基準強度 (Fc)
 コンクリートの強度基準と許容引抜荷重の算出方法を説明する。

・例としての計算:
 計算式  : Ta = π × d2 × LB × (9 / 100 × Fc)
 判定条件 : Ta > Rb これを満たすことが重要である。

あと施工アンカーの強度計算に関するガイドライン

 あと施工アンカーの強度計算は、建築物の耐震性能や構造的安定性において極めて重要な要素である。これに関するガイドラインは複数の組織によって提供されており、それぞれの文書において異なる視点や適用範囲が議論されている。主要なガイドラインとその活用方法、さらには実験結果から導き出される独自の許容荷重の求め方について解説する。

 あと施工アンカーの強度計算は、建築物の耐震性能を評価・向上させるための極めて重要なプロセスである。多様なガイドラインと実験結果を駆使することで、最も適切な設計および施工方法を確立することが可能となる。

日本建築学会のガイドラインによる、あと施工アンカーの強度計算

 (社)日本建築学会が2010年に改訂した「各種合成構造設計指針・同解説」に基づく許容荷重の計算法についての記述である。このガイドラインは、耐震補強における耐震壁の接合や設備機器の固定に関する具体的な指針を提供している。耐震性能を向上させるためのあと施工アンカーの適用範囲として、具体例や実際の適用方法が明示されており、設計者にとって非常に有用な情報源となっている。

 例えば、耐震壁の接合に使用されるアンカーの許容荷重値については、構造計算に基づく詳細な数値が示されている。これにより、建物の部位ごとに最適なアンカーの種類とその数量を正確に決定することが可能となる。

他の公的ガイドラインの、あと施工アンカーの強度計算

 (財)日本建築防災協会の「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震改修設計指針・同解説:2001年」や、(財)日本建築センターの「建築設備耐震設計・施工指針:2005年」なども、あと施工アンカーに関する多角的な視点を提供している。加えて、(社)空気調和・衛生工学会の「SHASE-S 012 建築設備用あと施工アンカー:2005年」にも、建築設備の固定における設計指針が詳細に記述されている。これらのガイドラインでは、それぞれの分野ごとに適用される許容荷重の考え方を取り上げ、具体的な計算例を通じて理解を深めることができる。

公のガイドラインに基づかない独自の、あと施工アンカーの強度計算

 公的なガイドラインに基づかない場合、実験結果から許容荷重値を求める方法も広く採用されている。具体的には、アンカーの引張試験の荷重-変位曲線を分析し、次のような公式に基づいて長期許容荷重(PL)を算出している。
 PL = (最大引張荷重 × k) / 3
 この式において、補正係数kは推奨値として0.6が用いられているが、実際の現場状況に応じて適切に調整する必要がある。この方法は、実際の施工現場における具体的な条件に最も適した許容荷重を提供するため、非常に実践的である。