有機溶剤作業主任者は、有機溶剤を用いた現場の作業方法の決定や作業の指示、定期的な換気装置の点検、保護具の管理、有機溶剤中毒防止措置の確認などを行う責任者を認定する資格です。労働安全衛生法において定められている国家資格で、有機溶剤を使用する現場では必須の資格となっています。
有機溶剤作業主任者の資格を得るには、有機溶剤作業主任者技能講習を受講し、試験に合格する必要があります。有機溶剤作業主任者技能講習会は全国各地で月1回から2回行われており、18歳以上なら誰でも受講できます。講習の最終日に実施される有機溶剤作業主任者試験の難易度はそれほど高くなく、真面目に講習を聞いていれば合格できる程度です。
この記事では、有機溶剤作業主任者とはどのような資格なのか、有機溶剤作業主任者になるにはどうすれば良いのか、講習会・試験の費用や日程、難易度、合格率について解説します。
有機溶剤作業主任者とは
有機溶剤作業主任者とは、有機溶剤を用いた現場の作業方法の決定や作業の指示、定期的な換気装置の点検、保護具の管理、有機溶剤中毒防止措置の確認などを行う責任者です。
有機溶剤作業主任者の資格は労働安全衛生法において定められている国家資格であり、有機溶剤を使用する現場では、有機溶剤作業主任者の資格取得者が必要になります。
労働安全衛生法では、有機溶剤を取り扱う事業者は、溶剤作業主任者技能講習が終わった後で行う、有機溶剤作業主任者技能試験に合格した者を、作業主任者として選任し、作業を行う作業員の指揮、監督をさせることが労働安全衛生法で決められています。
有機溶剤とは
有機溶剤とは、アセトンや石油エーテルのように、人が蒸気を吸込んだり、触れると重大な健康被害を及ぼす物質です。有機溶剤には、エチルベンゼン、四塩化炭素、クロロホルムといったさまざまな種類があります。自動車や家の塗装を行う企業で利用する機械の洗浄や印刷業におけるインクの拭き取りなどで有機溶剤が使用されます。
有機溶剤には常温では蒸発するという特徴があるため、蒸発した有機溶剤を口から吸いこんでしまったり、皮膚から吸収されたりすれば、体調が悪化する恐れがあります。有機溶剤に関する正しい知識を持ち、適切な管理を行うために、有機溶剤作業主任者の資格取得者が現場で必要とされています。
有機溶剤作業主任者の仕事
有機溶剤作業主任者の仕事は、有機溶剤の汚染や溶剤を吸入しない作業方法を指揮すること、局所排気装置や換気装置を毎月点検すること、保護具が正しく使われていることの確認、タンク内部作業での有機溶剤による中毒防止措置が取られていることを確認することです。
下記のような仕事で、有機溶剤作業主任者の資格が活用されています。
- 自動車整備士
- 塗装工
- 化学工場
- 印刷会社
- クリーニング店
- 医薬品・香料の製造
有機溶剤作業主任者の資格を取得するには
有機溶剤作業主任者の資格は、有機溶剤作業主任者技能講習を受講し、試験に合格することで取得できます。
労働安全衛生法第14条、労働安全衛生施工法令第6条-22の規定に基づき、有機溶剤を取り扱う作業に労働者を従事させる場合、有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者のうちから有機溶剤作業主任者を選任して作業の指揮やその他規則で定められた職務を行わせなければならないとされています。
試験は講習で習った内容が多肢選択式で出題されるため、講習中は内容を聞き逃さないようにしよく理解するように努めましょう。講習では試験対策の内容以外に、資格取得後に業務で必要となる知識や技能についても講義してもらえるので意欲的に学ぶようにしましょう。
有機溶剤作業主任者技能講習会
有機溶剤作業主任者技能講習会は、全国各地で月1回から2回行われています。万一、失敗してもすぐ次の講習会に参加が可能です。講習会の受講は制限なく、誰でも受講することができます。講習会は2日間行われ、講習が終了した後に、修了試験(有機溶剤作業主任者試験)が行われ、合格・不合格が決まります。
講習会の内容
有機溶剤作業主任者技能講習会の内容は、健康障害及びその予防措置に関する知識に4時間、保護具に関する知識に2時間、作業環境の改善方法に関する知識に4時間、関係法令に2時間、これらを2日間の講義で覚えることになります。これらの12時間の講義が終了した後に、修了試験(有機溶剤作業主任者試験)が行われます。
日程・申し込み方法
有機溶剤作業主任者技能講習は、全国各地で月1回から2回行われています。日程は、講習会を開催する地域によって異なります。講習会は連続した2日間行われ、平日に実施されることが多いです。
有機溶剤作業主任者技能講習は、それぞれの地域にある労働基準協会連合会や一般社団法人労働技能講習協会で申し込むことができます。
例えば、公益社団法人東京労働基準協会連合会における2022年の日程は以下の通りです。
- 1/13(木)~1/14(金)
- 1/27(木)~1/28(金)
- 2/16(水)~2/17(木)
- 2/28(月)~3/1(火)
- 3/7(月)~3/8(火)
- 3/24(木)~3/25(金)
- 4/18(月)~4/19(火)
- 4/27(水)~4/28(木)
公益社団法人東京労働基準協会連合会のホームページで受付状況が確認できます。申し込みが多ければ締め切りになるため、早めに予約するようにしましょう。
料金・支払い方法
有機溶剤作業主任者技能講習の受講料は、約10,000~14,000円程度です。開催されている地域によって異なります。
公益社団法人東京労働基準協会連合会の場合は、受講料が12,600円(税込)、テキスト代が1,980円(税込)です。
一般社団法人労働技能講習協会の場合は、受講料が11,510円(税込)、テキスト代が1,980円(税込)になります。
支払い方法は、インターネットによる申込みの場合は銀行振り込みです。申込書利用による申込みの場合は、銀行振込・現金書留か、来所して支払うことができます。
受講料や支払い方法は講習会を開催する地域によって異なるため、実際に受講する地域の労働基準協会連合会ホームページで確認しておきましょう。
受講資格
有機溶剤作業主任者技能講習会は、18歳以上なら誰でも受講できます。
有機溶剤作業主任者試験
有機溶剤作業主任者試験は、有機溶剤作業主任者技能講習後に実施されます。技能講習を受講し、講習の最後の修了試験に合格することで、資格を取得できます。
試験内容
試験内容は、講習会で実施される下記の4科目です。
- 有機溶剤による健康障害及び予防措置の知識
- 作業環境改善方法の知識
- 保護具の知識
- 関係法令
試験形式
試験の形態は、全てマークシート方式で、解答時間は1時間です。試験問題には、いくつかの方式があります。1つは、四肢択一問題で、正しいものを選ぶ場合と、適当でないものを選ぶ場合がありますので、問題文は注意して見ておくべきです。もう1つは、4つの作業の文章から、例えば優先度の高いものから順に並べるという問題があります。重要度を考えればすぐに分かる問題です。もう1つは、4つの文章があってそれぞれ下線が引いて、下線部が誤っている、又は正しいものを選ぶ問題もあります。注意したいのは、数字の正誤を選ぶような場合で、これは覚えているかどうかの問題です。
合格基準
有機溶剤作業主任者試験は筆記試験のみで、4科目のうちどれもが40%以上必要で、総合得点が60%以上で合格です。
合格率・難易度
有機溶剤作業主任者試験は、2日間の講習会を真剣に受講すれば試験に合格できる程度の、難易度が非常に低い試験です。合格率は90%以上と言われています。試験に合格するために、事前に勉強する必要は特にありません。
ただし、学校を卒業した常識的な知識だけでは、合格することは難しいです。講習の座学に飽きて居眠りなどをする人にとっては、難易度は非常に高い試験と言えるでしょう。
有機溶剤作業主任者試験の勉強方法
有機溶剤作業主任者試験の勉強方法は、講義をしっかり聴くことです。テキストが講習会数日前に配布されますが、ざっと見程度で詳しく見る必要はありません。
講義では、講師の方が重要なポイント、覚えるべきところや語句などを指摘してくれますので、それらはテキストにマークを入れるなり、ノートに記録などして覚えるようにします。講師の方が指摘することのいくつかは、ほぼ終了試験に出ると考えて良いでしょう。
1日目の講習会が終了してから、自由な時間が持てますので、その日にやった事を、マークやノートへの記述をもとに整理し、覚えるようにします。
有機溶剤作業主任者試験に落ちる人とは
講習会形式で講義の後で修了試験を行う資格は、数多くあります。そのような資格は、落ちる人が少ないのが一般的です。講師の方から、「真面目に話を聞いていれば落ちることはない」と言われることもあります。
それでも落ちる人がいる理由は、講師の指摘ポイントを聞き逃したためで、その中で多いのが、居眠りです。就職後に、2日間の座学を経験することはまれで、うっかり睡魔に襲われる場合もあります。そこをどう乗り切るかで、資格を得るかどうかが決まってしまいます。
テキストは購入すべき?
有機溶剤作業主任者試験のテキストは、有機溶剤作業主任者技能講習でもらえます。講習で使用するテキストだけで十分合格できるため、あえて市販のテキストを購入する必要はありません。
市販されているテキスト・問題集については、下記ページで紹介しています。
試験に合格するためのポイント
試験に合格するためのポイントは以下の通りです。
- 講師の話を真剣に聞き、ポイントをメモする
- 講習中に居眠りしない
- マークシートの記入ミスに注意
当たり前のことばかりですが、合格するためには必要なことです。合格率が高い試験ですが、手を抜かず真剣に取り組みましょう。
過去問と重要事項の解説/有機溶剤作業主任者試験
●本解説に使用した参考文献
厚生労働省「労働安全衛生法」
厚生労働省「労働安全衛生法施行令」
厚生労働省「労働安全衛生規則」
厚生労働省「有機溶剤中毒予防規則」
厚生労働省「特定化学物質障害予防規則」
中央労働災害防止協会 安全衛生情報センター「法令・通達」https://www.jaish.gr.jp/user/anzen/hor/houritsu.html