計装士は、計装設備の監理、設計・施工・管理などを一手に引き受ける作業者です。計装士の資格をを得るには、計装士試験に合格する必要があります。計装士には、1級と2級があり、2級は作業主任者、1級は作業管理者というような役割となります。
計装士は国家資格ではなく、建設現場に常駐するという制約が法規上ありませんが、実質の作業上では、作業管理者や作業主任者の常駐がないと建設工事ができません。計装士試験は日本計装工業会が実施しますが、日本計装工業会は所属する計装士が試験などが行えるように、法律で決められています。そのため、計装士も準国家資格と言って良いでしょう。
計装士とは
計装士とは、測定装置や制御装置といった計装設備の取り付けや設計・監督を行うための専門知識を認定する民間資格です。一般社団法人日本計装工業会が、資格を認定しています。
計装設備とは、プラント工場、生産工場、高層ビルなど建築物において、生産品やユーティティなどを効率よく運用・管理・制御する設備を指します。
計装士の資格には、1級計装士と2級計装士があります。それぞれ資格試験に合格し、登録することで計装士として働くことができます。資格試験を受験するには、実務経験などの受験資格を満たすことが必要です。
1級計装士
1級計装士は、国土交通省令に基づく計装士技術審査に指定されている資格です。建設業許可における電気工事・管工事の専任技術者になることができます。
また、1級計装士は、「経営事項審査加点対象」となっています。経営事項審査とは、公共工事の入札に参加する建設業者に対して行われる、建設業法に規定されている審査です。資格を取得することで、会社に貢献できます。
2級計装士
2級計装士は、計装工事における中級の技術者向けの資格です。
1級を受験するために2級を取得している必要はなく、2級未取得で1級取得を目指すことも可能です。そのため、2級計装士は、1級計装士の腕試し・練習用の資格と位置付けられています。
計装士試験 その1
計装士試験は、一般社団法人日本計装工業会が主催する試験です。
受験資格
計装士試験を受験するには、1級・2級ともに受験資格を満たしている必要があります。
1級計装士の試験を受験するには、設計・施工の実務経験5年以上が必要です。2級を取得している場合は、4年6ヶ月以上の実務経験が要求されます。さらに、要求される実務経験には、指導監督的実務経験1年以上も含みます。
2級計装士の試験を受験するには、設計・施工の実務経験2年以上が必要です。
試験日程・申し込み方法
計装士試験は、年に1回実施されています。学科試験は8月下旬、実地試験は12月中旬です。
例えば、2021年の計装士試験は、以下の日程でした。
- 1級計装士 学科試験 2021年8月28日(土)
- 1級計装士 実技試験 2021年8月29日(日)
- 2級計装士 学科試験 2021年12月11日(土)
- 2級計装士 実技試験 2021年12月12日(土)
試験地
計装士試験は、東北・関東・中部・関西・九州で実施されています。
受験料金・支払い方法
計装士試験の受験料は、1・2級計装士ともに、学科試験7,530円・実地試験17,820円です。
試験形式
学科試験
・学科A・・・3時間(マークシート方式)
・学科B・・・1時間(マークシート方式)
実地試験
・選択・・・2時間(記述式)
・共通・・・2時間(記述式)
計装士試験 その2
試験内容
計装士試験学科試験の内容は、1級も2級も、学科Aに3時間、学科Bに1時間の問題構成になります。学科Aの問題は、計装一般知識とプラントやビルなどの計装設備に関しての問題で、学科Bの問題は、プラントやビルなどの計装工事の施工管理と、関係法令についての問題です。問題内容はもちろん違いますが、1級も2級も同じ問題構成です。学科Aの試験内容は、計装一般・計器・計装設計・工事積算・検査調整です。学科Bは、工事施工・安全衛生・法規です。この試験内容は、1級も2級も同じ内容です。また、学科試験は全てマークシート方式です。
学科試験から4か月後に実施される計装士試験実地試験の内容は、工事計画・材料・計装及び工事設計・制御ロジック・検査調整・安全衛生・材料および工数積算で、解答は記述式と一部作図が行われ、解答時間は4時間です。
計装士の資格取得者として求められる対象として、「計装工事における技術者が、通常有すべき知識及び技術の程度を有する者」と定義されており、試験では十分な知識や技術能力があるかが問われます。
学科Aでは計装一般知識、プラント・ビル等の計装設備について、学科Bでは施工管理法や関係法令について出題されます。「電気工事施工管理技士」、「管工事施工管理技士」、「電気通信工事施工管理技士」の資格を取得していると学科B試験を免除することができます。先にそちらの資格取得を目指すのも方法でしょう。
実地試験では選択式のマークシート方式ではなく、記述式で、設備計画や設備設計図の出題に答えることになり、学科試験時より深い知識が問われます。
1級
学科試験
①計装一般、②計器、③計装設計、④工事の積算、⑤検査と調整
⑥工事施工法、⑦安全衛生、⑧法規
実地試験
①工事計画、②材料並びに製品の判定、③計装設計、
④計装工事設計、⑤制御ロジック、⑥検査調整、⑦安全衛生、
⑧計装工事材料積算・計装工事工数積算
2級
学科試験
①計装一般、②計器、③計装設計、④検査と調整、⑤工事施工法
⑥安全衛生、⑦法規
実地試験
①工事計画、②材料並びに製品の判定、③計装設計、
④計装工事設計、⑤制御ロジック、⑥検査調整、⑦安全衛生、
⑧計装工事材料積算・計装工事工数積算
学科試験の内容
計装士試験の学科試験の内容は、1級も2級も、学科Aに3時間、学科Bに1時間の問題構成になります。
学科Aの問題は、計装一般知識とプラントやビルの計装設備に関しての問題です。
学科Bの問題は、プラントやビルの計装工事の施工管理と、関係法令についての問題です。問題内容はもちろん違いますが、1級も2級も同じ問題構成です。
学科Aの試験内容は、計装一般知識として、計装一般と計器についての出題です。計装設備(プラント、ビル)として、計装設計と工事積算と検査調整についての出題です。
学科Bは、施工管理(プラント設備、ビル設備)から工事施工方法、計装保冷関係から安全衛生と法規の科目に分かれます。この試験内容は、1級も2級も同じ内容です。また、学科試験は全てマークシート方式ですが、問題は一択問題もあれば、ある文章中にいくつかのブランクを設け、最も適した言葉群を選ぶ、という問題もあります。
学科試験の科目内容について、もう少し詳しく紹介しましょう。
学科A
学科Aの計装一般科目からは、計装の意義・測定・制御・信号の伝送と処理について出題されます。
計器科目からは、計装機器・計装システム・検出部と変換部と伝送部についての問題です。
計装設計科目からは、計装工事設計概要・計装記号と図記号・計装動力源・計装信号・国内外の規格・計装配線工事設計・計装配管工事設計・メンテナンスなどから出題されます。
工事積算科目からは、計装工事積算の概要について問われます。
学科Aの最後の科目検査と調整では、試験検査の種類・計装配線検査・配管工事検査・計器の調整からの問題です。
学科B
学科Bでは、工事施工法の科目からは、盤類の据付け・機器類の据付け・ダクトやラックやトラフの据付け・配線配管工事・防爆と接地工事・工事用の工具・工程管理からの問題で、広範囲に及びます。
安全衛生科目では、労働安全衛生法と労働安全衛生規則と通則及び安全衛生基準からの安全に関する規定や遵守事項などが問題となります。
学科Bの最後の科目、法規からは、労働安全衛生法関連・労働基準法概要・法令の種類・工事に係る法規についての問題です。
実地試験の内容
計装士の実地試験は、学科試験から4か月後に実施されます。解答時間は4時間です。
実地試験の内容は、計装設備計画(基本計画と施工計画)、計装設備設計図(プラント設備とビル設備)の図面から、工事計画・材料と製品の判定・計装設計・計装工事設計・制御ロジック・検査調整・安全衛生・計装工事材料積算・計装工事工数積算などの項目を、図面から読み取って、記述して解答したり、図面中に書き込んだり、図面を作成することなどが問題として出されます。
計装士試験 その3
科目免除
計装士試験では、学科試験に合格することで、翌々年度まで学科試験が免除されます。
1級計装士試験においては、下記の資格に合格していると、学科Bが免除されます。
- 1級電気工事施工管理技士
- 1級管工事施工管理技士
- 1級電気通信工事施工管理技術士
2級計装士試験においては、下記の資格に合格していると、学科Bが免除されます。
- 1級電気工事施工管理技士
- 2級電気工事施工管理技士
- 1級管工事施工管理技士
- 2級管工事施工管理技士
- 1級電気通信工事施工管理技術士
- 2級電気通信工事施工管理技術士
また、第一種電気工事士免状の交付を受けている場合には、学科Bが免除されます。
合格基準
計装士試験に合格するためには、学科試験・実地試験ともに55%~65%以上の得点が必要になります。年度によって少し変わるようです。
例えば、2019年の学科試験では、基準以上の者を合格としています。
- 1級計装士 全科目受験者 320点中 得点率55%以上
- 1級計装士 B免除受験者 230点中 得点率55%以上
- 2級計装士 全科目受験者 320点中 得点率60%以上
- 2級計装士 B免除受験者 230点中 得点率60%以上
http://www.keiso.or.jp/keisousi-gaku/kizyun.pdf
合格率・難易度
計装士試験の合格率は、以下の通りです。
年度 | 試験科目 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2019年 | 1級 学科試験 | 1,030名 | 637名 | 61.8% |
1級 実地試験 | 711名 | 595名 | 83.7% | |
2級 学科試験 | 436名 | 269名 | 61.7% | |
2級 実地試験 | 403名 | 294名 | 73.0% | |
2018年 | 1級 学科試験 | 1,173名 | 789名 | 67.3% |
1級 実地試験 | 881名 | 574名 | 65.2% | |
2級 学科試験 | 417名 | 246名 | 59.0% | |
2級 実地試験 | 299名 | 271名 | 90.6% |
それぞれの合格率は、1級の学科試験は62%、実地試験は85%で、総合で53%です。一方、2級では、学科試験が60%、実地試験が90%と、総合で53%です。
1級、2級とも受験者の半数は合格することから、建設工事に必要な土木工事施工管理や管工事施工管理に比べれば、難易度はさほど高くないと言えます。
特に実地試験では90%近くが合格していることから、受験者は計装工事に精通した人が受験していると思われます。
計装士試験の勉強法
過去問を繰り返し解く
計装士試験の勉強法ですが、計装という特殊な分野の科目であるため、計装に特化したテキストと過去問数年分を繰り返し、勉強することが効果的です。ただ、計装士試験用の過去問は、日本計装工業会からしか購入できないため、テキストと数年分の過去問が一緒になった、テキストを手に入れて勉強するのがおすすめです。
テキストは学科用と実地用が用意されているため、両方を購入する必要があります。本来、日本計装工業会のホームページでは出題された計装士試験問題が公開されますが、すぐに公開中止されるため、ネット上から過去問を手に入れることはほとんどできません。
計量士試験を受験する人は、日常、計装に係る仕事に従事しているため、普段から実際の計装を勉強し、覚えておくことや先輩から教わったことはメモします。後でメモを整理しておくことで、受験勉強のときに現場と繋がって覚えることができ、勉強の効果が出ます。
市販されているテキスト・問題集については、下記ページで紹介しています。
科目免除を活用
計装士試験では、電気工事施工管理技士や管工事施工管理技士、電気通信工事施工管理技術士試験に合格していると、学科Bが免除されます。
実際に試験を受験すると分かりますが、科目免除を活用している人がほとんどです。
学科Bが免除されると、工事施工管理法・安全衛生・法規の勉強をしなくて済むので、上手に活用しましょう。
実地試験対策
実地試験対策としては、計装の図面、P&Iやシーケンス図、ロジック図などから、どのような計装機器は配置され、どのように配線や配管が接続されているか確認します。
制御方式をロジック図化してみるなど、身近な図面をいろいろと展開する訓練をします。自分で問題を作って、自分で解答するので、何が正解かなど悩む必要はありません。
その後、テキストや問題集で、計装に関する図面の問題を解いてみて、自分がやった訓練が正しかったか、誤っていたかを見ると、実地試験の問題の解き方が分かってくることでしょう。
要は、習うより慣れろかもしれません。