非破壊試験技術者とは、非破壊試験をおこなう技術者の技術レベルを認定する資格です。
非破壊試験技術者資格試験は、一般社団法人日本非破壊検査協会が実施する民間試験で、技術者の技量認定試験です。非破壊試験技術者資格試験は、JIS規格 JIS Z 2305 に基づいて実施されます。
非破壊試験技術者とは
非破壊試験技術者とは、一般社団法人日本非破壊検査協会 認証事業本部が資格試験・資格認証を実施している民間資格です。非破壊試験技術者資格試験により、非破壊試験をおこなう技術者の技術レベルを認定します。非破壊試験技術者にはレベル1・レベル2・レベル3の認定レベルがあり、レベル3が最高位の資格です。
非破壊検査技術者になるには
非破壊検査技術者になるには、一般社団法人日本非破壊検査協会が実施する、非破壊試験技術者資格試験に合格する必要があります。
資格レベル
非破壊試験技術者にはレベル1・レベル2・レベル3の認定レベルがあり、技術のレベルと責任範囲が異なります。レベル3が最高位です。
レベル1
レベル1の認証を受けた技術者は、レベル2又はレベル3技術者の監督の下で、指示書に従って資格証明書に明記された力量の範囲で、以下の項目を実施できます。
- NDT 装置を調整する。
- NDT を実施する。
- 記載された基準に従って NDT 結果を記録し、分類する。
- 結果を報告する
また、使用するNDT方法や技法の選択、NDT結果の解釈について責任を負うことはできません。
レベル2
レベル2の認証を受けた技術者は、NDT手順書に従って、資格証明書に明記された力量の範囲で、以下の項目を実施できます。
- 使用する NDT 方法に適用する NDT 技法を選択する。
- NDT 方法の適用制限を明確にする。
- NDT コード、規格、仕様書及び手順書を、実際の作業条件に適した NDT 指示書に書き換える。
- 装置の調整及びその検証を行う。
- NDT を実施し、監督する。
- 適用される規格、コード、仕様書又は手順書に従って結果を解釈し、評価する。
- レベル2又はそれより下のレベルの全ての作業を実施し、監督する。
- レベル2又はそれより下のレベルの技術者を指導する。
- NDT 結果を報告する。
レベル3
レベル3の認証を受けた技術者は、認証の対象となるNDT作業の実施及び指示ができます。
資格証明書に明記された力量の範囲で、以下の項目を実施できます。
- 試験設備、並びに試験センター及びその職員についての全責任を負う。
- NDT 指示書及び手順書を作成し、編集上及び技術上の精査、並びに妥当性を実証する。
- 規格、コード、仕様書及び手順書を解釈する。
- 使用する特定の NDT 方法、手順書及び NDT 指示書を指定する。
- 全レベルの全ての作業を実施し、監督する。
- 全レベルの NDT 技術者を指導する。
参考資料:非破壊試験技術者の認証制度のご案内
非破壊試験技法(NDT方法)
非破壊試験技法(NDT方法)は8種類あり、それぞれレベル1・レベル2・レベル3に分かれています。
- 放射線透過試験 (RT):Radiographic testing
- 超音波探傷試験 (UT):Ultrasonic testing
- 磁気探傷試験 (MT):Magnetic testing
- 浸透探傷試験 (PT):Penetrant testing
- 渦電流探傷試験 (ET):Eddy Current testing
- ひずみゲージ試験 (ST):Strain Gauge testing
- 赤外線サーモグラフィ試験(TT):Infrared Thermographic Testing
- 漏れ試験(LT):Leak Testing
参考資料:非破壊試験技術者の認証制度のご案内
非破壊試験技術者資格試験 その1
非破壊試験技術者資格試験は、一般社団法人日本非破壊検査協会が実施しています。
種類
非破壊試験技術者資格試験は、次の種類について、レベル1、レベル2、レベル3 の認定レベルがあります。
レベル3が最も高位の資格試験です。
・放射線透過試験 RT
・超音波探傷試験 UT
・超音波厚さ測定 UM
・磁気探傷試験 MT
・極間法磁気探傷検査 MY
・通電法磁気探傷検査 ME
・浸透探傷試験 PT
・溶剤除去性浸透探傷検査 PD
・渦電流探傷試験 ET
・ひずみゲージ試験 ST
・漏れ試験 LT
・赤外線サーモグラフィ試験 TT
受験資格
非破壊試験技術者資格試験を受験するには、以下の2点を満たしている必要があります。
- 全てのレベルにおいてNDT方法毎に訓練実施記録を作成し提出
- 近方視力と色覚に関する要求事項を満足することを証明する書類を提出
また、レベル3を受験する場合は、受験申請時に申請しようとするNDT方法のレベル2資格を保持している必要があります。
レベル3
放射線透過試験、超音波探傷試験、磁粉探傷試験、浸透探傷試験、
過流探傷試験、ひずみ測定
超音波厚さ検査、極間法磁粉探傷検査、通電法磁粉探傷検査、コイ
ル法磁粉探傷検査、溶剤除去性浸透探傷検査、水洗性探傷検査
レベル2・1
放射線透過試験、超音波探傷試験、過流探傷試験 … レベル1
(40時間)
磁粉探傷試験、浸透探傷試験、ひずみ測定 … レベル1(40時間)
放射線透過試験、超音波探傷試験 … レベル2(80時間)
磁粉探傷試験、浸透探傷試験、ひずみ測定 … レベル2(24時間)
過流探傷試験 … レベル2(40時間)など
日程
非破壊試験技術者資格試験は、春と秋の年に2回実施されています。
例えば、2021年は以下の日程でした。
春季:一次試験 3月20日(土) ~ 3月21日(日) 二次試験 5月6日(木) ~ 6月25日(金)
秋季:一次試験 9月25日(土) ~ 9月26日(日) 二次試験 11月4日(木) ~ 12月16日(木)
試験地
一次試験:札幌、仙台、千葉、東京、神奈川、新潟、名古屋、大阪、広島、高松、福岡
二次試験:東京、大阪、福岡、千歳、名古屋、広島
受験料金
18,700円(税込)
非破壊試験技術者資格試験 その2
試験内容
1次試験 … 非破壊検査概論・該当技術部門の知識
①材料科学、製品・製造・加工の基礎知識、
②認証機関の認証システム(JIS Z 2305)の知識、
③4種類のNDT方法におけるレベル2の基礎知識
2次試験 … 実技試験
①関連したNDT方法のレベル3の基礎知識、
②関連したNDT方法の適用、コード及び規格に関する知識、
③関連したNDT方法のNDT手順書の作成
合格基準
レベル1・レベル2
一次試験は、筆記試験(一般試験パートと専門試験パート)で、それぞれ70%以上の得点で合格です。
二次試験は、実技試験パートで、各試験体で各々70%以上の得点で合格となります。レベル2については、NDT指示書の作成でも70%以上の得点が必要です。
レベル3
一次試験は、筆記試験(基礎試験)の以下の試験パートでそれぞれ70%以上の得点で合格です。
- 材料科学、製造技術に関する技術的知識
- 認証スキーム (JIS Z 2305:2013)に基づいた認証機関の資格及び認証に関するスキームの知識
- 四つの NDT 方法(RT 又は UT を含むこと)におけるレベル 2 の基礎知識
二次試験は、筆記試験(主要方法試験)の以下の試験パートでそれぞれ70%以上の得点で合格です。
- 申請した NDT 方法に関連するレベル 3 の知識
- 関連する分野における NDT 方法の適用等に関する問題
- 関連する分野における NDT 方法の手順書の作成問題
合格率・難易度
非破壊試験技術者資格試験の合格率は、レベル1で約40%、レベル2で約30%、レベル3で約10%です。ただし、NDT方法ごとに、かなり合格率のバラツキがあります。
2019年春期の、NDT方法別合格率は以下の通りです。
NDT方法 | 略称 | レベル1 | レベル2 | レベル3 |
放射線透過試験 | RT | 52.4 | 20.3 | 16.8 |
超音波探傷試験 | UT | 31.3 | 22.3 | 4.1 |
超音波厚さ測定 | UM | 43.8 | - | - |
磁気探傷試験 | MT | 37.6 | 28.5 | 15.2 |
極間法磁気探傷検査 | MY | 33.9 | 25.4 | - |
通電法磁気探傷検査 | ME | 33.3 | - | - |
浸透探傷試験 | PT | 41.7 | 26.8 | 12.5 |
溶剤除去性浸透探傷検査 | PD | 45.3 | 29.1 | - |
渦電流探傷試験 | ET | 40.9 | 26.9 | 10.5 |
ひずみゲージ試験 | ST | 70.6 | 50.6 | 50.0 |
赤外線サーモグラフィ試験 | TT | 71.4 | 42.9 | - |
漏れ試験 | LT | 70.6 | 38.1 | 20.0 |
計 | 38.5 | 25.8 | 10.1 |
参考資料:JIS Z 2305 2019 年春期資格試験結果
非破壊試験技術者資格試験の勉強方法
非破壊試験技術者資格試験のレベル1は、合格率が約40%とそれほど高くなく、20~30時間程度の勉強時間で合格できます。一方、レベル2・3は試験範囲が広く、難易度も高いです。
過去問を繰り返し解く
非破壊試験技術者資格試験の勉強法は、過去問を繰り返し解くことです。非破壊試験技術者資格試験では、過去問と同じ内容の出題が多く、ある程度問題の幅は決まっています。過去問で出題されている傾向を掴むことで、十分対応可能です。
テキスト・問題集については、下記ページで紹介しています。
講習会に参加
一般社団法人日本非破壊検査協会では、新規受験者向けの講習会が実施されています。
実技講習会は実技のみの講習会となっており、レベル1・2の1次試験合格者、又は2次再試験受験者が対象です。独学で自信がない人は利用してみましょう。