電気回路図の作成や電気回路計算は、電気設備設計の基礎であり、正確性が求められる重要な作業です。オームの法則やキルヒホッフの法則に始まり、テブナンの定理やノートンの定理など、さまざまな原理を活用した計算が必要になります。また、近年では専用ソフトを利用することで、作業の効率化や精度向上も図れます。電力用コンデンサの材料や補償の定理など、知っておきたいポイントも多数あります。このページでは、電気回路図作成と電気回路計算について解説しています。

電力用コンデンサはクラフト紙や油人りフィルムが使用されます
導体を取り囲む媒質により、空気コンデンサ、真空コンデンサなどがありますが、電力用コンデンサはクラフト紙や油人りフィルムが使用されます。力率計算、進相コンデンサの容量計算など、抵抗・コンデンサ・コイルのフリーソフトのリンク集です。
カラーコードから抵抗計算・コンデンサ計算・コイル計算、波長・周波数・アンテナの計算、短絡時の過渡電流の計算、単相・三相回路の短絡電流の計算、ゲルマラジオの設計、コイルの巻数・寸法設計、抵抗器カラーコード判読などのフリーソフトが、ダウンロードできます。
薄形鋼板などの容器に備え付けたものを缶形コンデンサ、厚鋼板に格納したものをタンク形といいます。進相用コンデンサ、調相川コンデンサ、フィルタ用コンデンサ、直列コンデンサを電力用コンデンサといいます。
低圧のコンデンサは、電極はくの代用として亜鉛、アルミニウム、両者の合金を蒸着した金属化紙です。回路に並列に接続されることから並列コンデンサとも呼ばれます。
電気回路図作成と電気回路計算 その1
家庭で分電盤からケーブルを引いて、電灯をスイッチで入り切りできるように、日曜大工で取付けることは可能です。
どこに分電盤の端子があって、スイッチも余ったものを利用し、ケーブル配線も天井裏を少し通せばできると頭に描ければ、それほど難しい作業ではないでしょう。
しかし、この仕事を、新築の住宅やマンションで行おうとすれば、日曜大工のようなことで作業はできません。
簡単な工事とは言っても、必ず必要なものが、電気回路図作成と電気回路計算です。
新築の場合は、電灯1つというわけにはいきませんし、スイッチも色々な場所から操作できるように設計されます。
また必要な容量のために分電盤のどのNFBを使うか、ケーブルにどれだけの電流が流れるかでサイズを決める、また長さがどれだけ必要かなど、一歩誤れば火災につながることを避けるために、検討することは数多くあります。
その検討を始めるための第一段階が、電気回路図作成と電気回路計算です。
この作成と計算をしっかりやれば、安全な電気回路と、スムーズな工事材料手配と据付け工事が完了できます。
図1に電気回路図のサンプルを紹介します。
電気回路図には、回路につながる電気機器と、機器間がどのように接続されるかを表します。
また、この電気回路図から、電気回路計算を行って、例えば、回路を流れる電流などを、接続されている機器の仕様から計算し、足りないものが無いかなどチェックします。
このコラムでは、電気回路計算について、何十とある電気法則や電気定理の中から、いくつかだけご紹介し、電気回路計算とは何かについて理解していただければ幸いです。
ただし、紹介する法則や定理について証明を含めた詳細の解説や、具体的計算例の紹介などは行いませんので、専門書などを参考に勉強していただければと思います。
電気回路計算…オームの法則
電気回路計算を行うに当たっては、電気回路にどのような電気の法則が適用されるかを検討し、計算します。
もちろん、計算に当たっては、手法はいくつかありますが、一番手慣れた手法、計算が簡単な手法で、電気回路計算を行います。
電気回路の電子の流れは電流で、電圧による電位の高低に沿って流れ、回路中に抵抗が加わると、抵抗の大きさと電圧の大きさによって、それらの大きさに沿った電流が流れます。
この電気の法則が、オームの法則で、Iを電流、Vを電圧、Rを抵抗値とすると、次がその計算式です。
この式は、電圧と抵抗から電流値を求める計算式ですが、計算式を変形して、電圧を求める式、抵抗値を求める式が次のように、展開可能です。
その時の電気回路を作成すると、図2のようになります。
図2のa図は、オームの法則の電気回路図ですが、抵抗が2個以上設置されたときには、抵抗を1つの抵抗値とすることができ、オームの法則の計算が簡単にできます。
図bは、抵抗が並列に接続された場合、図cは、抵抗が直列に接続された場合です。
抵抗の合成の電気計算式は、次のように表せます。
電気回路図作成と電気回路計算 その2
電気回路計算…キルヒホッフの法則
電気回路中をどれだけの電流が流れているかを計算で調べる方法の1つが、キルヒホッフの法則です。
キルヒホッフの法則には、第1法則と第2法則があり、前者が電流を計算するもの、後者が電圧を計算する方法です。
図3、図4は、キルヒホッフの法則を紹介するための図です。
図3は、電気回路中の電流を計算する法則で、キルヒホッフの第1法則と呼ばれます。
図3では、電源と抵抗がつながっている電気回路に、流れる電流値を測定する様子を描いています。
キルヒホッフの法則は、図3の節点a又はbに流れ込む電流の総和は、0となる法則です。
節点aに着目すると、電源から流れる電流iは、節点aで、抵抗R1側に流れる電流i1と、抵抗R2側に流れる電流i2に分かれて流れ出ます。
節点bに着目すると、bに流れ込む電流i1とi2は、bから流れ出る電流iに等しくなります。
これを計算式で表すと、次のようになります。
図4は、電気回路中の電流を計算する法則で、キルヒホッフの第2法則と呼ばれます。
キルヒホッフの第2法則は、図4の閉回路の電気回路の中にある電圧を全て、+から-へと向きをもとに、全電圧を加えると、0となる法則です。
図4では、電圧Vは、+からーへの向きを正として、+Vとすると、抵抗R1で発生する電圧は、+から-へと向きは電圧Vのそれとは逆になるため、-V1です。
以上をもとに計算式で表すと、次のようになります。
電気回路計算…テブナンの定理
電気回路の構成は複雑ですが、知りたいことは単純な情報1つか2つということが、起こります。
例えば、図5の図Aのように、容量が異なる抵抗と電源で構成される複雑な回路で、抵抗Rに流れる電流iだけを知りたいときがあります。
オームやキルヒホッフの法則で、電流を計算することは可能ですが、回路が複雑であれば、もっと簡単な方法で電流を計算したくなり、それがテブナンの定理です。
テブナンの定理とは、図5の図Bのような、複雑な回路網の抵抗に流れる電流iを求める電気回路の計算法です。
この方法では、複雑な回路網の回路が、等価な電圧Vabと等価な抵抗R0に置き換わると仮定します。
その結果、電流iは、次の計算式で求めることができます。
テブナンの定理による等価な電圧と抵抗を求める手順を紹介します。
1) 回路ab間の抵抗を取り除き、ab間の電位差Vabを求めます。
2) 岐路abの左側の複雑な回路内部の電圧源を短絡し、電流源は開放し、ab間の抵抗R0を求めます。
3) 求める電流iを計算します。計算式は、先に示した通りです。
電気回路図作成と電気回路計算 その3
電気回路計算…ノートンの定理
ノートンの定理は、電気回路の電圧を求める方法です。
図6では、ノートンの定理のイメージを紹介します。
図6の図Aにある電気回路例で、a-b間の電位差(電圧)Vを求めるときに、ノートンの定理が使えます。
図Bでは電気回路がいろいろな電気回路がありますが、回路網のコンダクタンスを合成して1つに表し、抵抗R0間に掛かる電圧Vを求めることができます。
コンダクタンスとは、抵抗の逆数のことですが、並列回路では抵抗の逆数の計算が多くなるため、コンダクタンスを使うと、電気計算がしやすくなる方法です。
図6の図Bから、ノートンの定理を使って、電位差を求める手順は、次のような手順になります。
1) 抵抗を取外し、a-b端子間のを短絡し、短絡電流を求めます。
2) a-b間の端子は開放状態として、a-b間の回路網のコンダクタンスを求めます。
3) a-b間にもとの抵抗を接続したとき、抵抗に掛かる電圧を求めます。電圧は次の計算式によります。
G+G0は抵抗のコンダクタンスと、回路のコンダクタンスの和です。
図7を使って、具体的にノートンの定理から、回路の電圧を求めてみましょう。
(1) A図:回路に抵抗R0を接続したときの電圧Vを、ノートンの定理で求めます。
手順は、B図~D図の順で求めます。
(2) B図:a-b間に、抵抗R0を取り外して短絡し、a-b間を流れる電流iを求めます。
(3) C図:a-b間を開放し、回路の電源を取外し、a-b間の合成コンダクタンスを求めます。
(4) D図:抵抗R0を接続しa-b間の電圧を求めます。
電気回路計算…補償の定理
補償の定理とは、電気回路の中の素子の値が変わったとき(例えば5Ωの抵抗が8Ωに変わった)、回路を流れる電流の値がどう変わるか、簡単に電気回路計算することです。
図8では、補償の定理の手順の概要を紹介します。
図8の(1)が、元の回路図です。(1)の図から抵抗Rの値を変更(ΔR下げる)したときの回路が(2)の図です。
電流値はアスタリスク付きの文字で、値が変わったことを意味しています。
補償の定理は、抵抗Rの値が変わることで、電流がどう変わるかを、電気回路計算する定理です。
(2)図から変化した電流を求めるには、電気回路の重ねの理の方法で、求めます。
すなわち、(2)図を、(3)図と(4)図の足し合わせによって、変化する電流値をを求めます。
詳しい解説は省きますが、
となるため、
として、抵抗値変化した場合の、変化する電流値の電気回路計算が、可能となります。
電気回路図作成と電気回路計算 その4
電気回路図作成
電気回路作成に当たって、まずは直流回路か、交流回路か決め、回路中にどのような要素を入れれば、目的とする回路が作動するか検討が必要です。
電気回路作成に必要な電気要素は、回路上に記号を使って表します。
図9に電気記号の一例を紹介します。これらは、JISで決められた記号で、電気回路図作成に必要な記号です。
電気回路作成の手順は、どのようになるか、手順の一例を紹介しましょう。
➀ 目的に沿った電気回路の要素を決めます。
② 線を使って、電気部品要素を接続します。
③ 電気回路上に設計された電気部品要素のデータ、抵抗値・コンデンサ値・電源電圧値など、を書き入れます。
④ 電流値、電圧値など電気回路に必要な情報を書き入れ、また、チェックします。電流値や電圧値などの情報は、オームの法則のような電気法則、電気回路定理などをうまく使って、正しい情報を取得することが重要です。
そのためにも、電気回路計算の法則や定理は、よく理解しておく必要があります。
電気回路計算や電気回路図作成で使うソフト
電気回路計算ソフトは、エクセルベースでできた、フリーソフトが多く出されていて、自由に使うことができます。
オームの法則やキルヒホッフの法則の電気回路計算を、エクセルのテンプレートに必要事項を入力するだけで、簡単に答えが出てきます。
また、電気回路補償のように、電気素子のデータを変えて、回路電流や回路電圧をチェックしたいときなど、エクセルのフリーソフトで、シミュレーションも可能です。
本格的に電気回路計算を回路全体でシミュレーションしたいときには、有料の専用ソフトが便利です。
ほとんどの電気回路形態に応じた電気回路計算に対応し、目的とする設計に対応可能です。
フリーソフトでブラウザーから気軽に電気回路計算を行いたいときは、ブラウザーの必要データフォームに情報を入力することで、計算結果がすぐに出てきて、回路の簡易チェックに便利です。
電気回路図作成は、CADソフトを使った電気回路作成専用プログラムや、CADメーカーから電気回路用計算CADソフトが用意されています。
電気回路設計に慣れた人であれば、簡単に電気回路図作成が可能です。
CADで作られているため、関係者にCADデータを送ることで、手直しや、回路の拡充などに対応でき、高い利用価値があります。
また、電気回路図作成の他に、作成した回路の変更に対して、電流や電圧などの変更計算にも対応しているCADソフト、専用電気回路図作成ソフトが多くあり、電気回路図作成には欠かせない道具でしょう。