ボーリング柱状図は、地盤の性状や地層構成を視覚的に把握するための基本資料として、地盤調査において重要な役割を果たします。種類や記載方法には一定のルールがあり、設計や施工における地盤の評価に直結します。また、地質断面図との違いや使い分けを理解することで、より正確な判断が可能になります。さらに、現場での活用方法についても触れ、実務に役立つ知識を提供します。
このページでは、ボーリング柱状図の種類や読み方、関連図面との関係について解説しています。

ボーリング柱状図について
ボーリング調査の結果を視覚的に表現する柱状図は、地質情報の要点を分かりやすく提供する重要なツールです。この柱状図には、調査地点の情報や掘削深度、孔内水位に関するデータ、観察されたボーリングコアの特性、そして標準貫入試験や弾性波速度検層(PS検層)などの多岐にわたる試験結果がまとめられます。また、地すべり調査用の試験やルジオン試験も含まれ、それぞれの試験が提供する地質の詳細な情報が図として表示されます。
ボーリング柱状図の様式は、その利用目的や調査方法に応じて異なります。例えば、日本国内ではいくつかの標準的な様式が存在します。地盤工学会様式やJACIC様式、さらには個々の客先が指定する様式、地質調査会社独自のフォーマットなどが一般的です。また、地すべり調査に特化した柱状図もあり、これは土木研究所が提供する「地すべり調査用ボーリング柱状図作成要領(案)」に基づいて作成されます。
特に日本の公共事業においては、CALS/EC推進に伴う「電子納品に関する要領・基準」に従い、JACIC様式が徐々に採用されつつあります。この様式では、調査対象の地質に応じて「岩盤用」と「土質用」の2種類の柱状図が用意されており、それぞれの「ボーリング柱状図作成要領(案)」に基づいて作成されます。さらに、調査の目的に即した要求を反映させた「地質調査資料整理要領(案)」も発行されており、これにより地質調査の精度と効率が一層向上しています。
これらの柱状図は、地質情報の提供にとどまらず、土木工事の設計や計画の基礎資料としても利用されます。地盤の強度・安定性の確認、工事の安全性確保、さらには環境影響評価の重要な資料として役立つことから、その正確性と詳細さは不可欠です。
地質調査およびボーリング柱状図の正確な作成と利用は、安全かつ効率的な土木工事の実現にとって不可欠な要素です。詳細な情報を提供することで、地盤に関するリスクを最小限に抑え、長期的な安全を確保することができます。
関連キーワードと追加情報
ボーリング柱状図の様式
各調査に求められる情報を基に異なる様式が存在し、その選択は調査目的や条件によって異なる。
地質調査の重要性
堅牢かつ適切な地盤が確保されることで、構造物の安全性が向上し、地震などの自然災害に対する耐性も強化される。
電子納品と標準化
デジタル技術の導入により、調査データの共有と利用が効率化され、透明性と正確性が向上する。
地質試験の多様性
標準貫入試験、PS検層、ルジオン試験など、各種試験によって得られるデータは、地質構造の理解に不可欠。
ボーリング柱状図の種類
ボーリング柱状図は、地盤および地下の状態を可視化するための重要な図表です。その基本的な種類には、以下のようなものがあります。
1. 岩盤ボーリング柱状図
2. 土質ボーリング柱状図(オールコアボーリング用)
3. 土質ボーリング柱状図(標準貫入試験用)
4. 地すべりボーリング柱状図(オールコアボーリング用)
5. 地すべりボーリング柱状図(標準貫入試験用)
これらの柱状図は、調査対象地盤の性質や目的に応じて使い分けられます。
以上のように、ボーリング柱状図はその目的や調査対象によって多岐にわたります。岩盤ボーリング、土質ボーリング、地すべりボーリングそれぞれに特化した柱状図が存在し、それぞれオールコアボーリングと標準貫入試験という異なる手法に対応しています。これらの図表の適切な利用は、地盤の性質を正確に把握し、建設や地すべり対策の計画を円滑に進めるために不可欠です。
ボーリング柱状図の種類を理解し、適切に使い分けることは、地質調査の成功の鍵となります。関連する技術や手法についても深く理解し、適切な柱状図を作成することで、現場の地質状況を正確に反映し、建設計画や地すべり対策の基礎資料として活用することが求められます。
地盤調査の種類とその適用
地盤調査は、地盤の種類や目的に基づいて以下のように分類されます。
岩盤ボーリング
この調査は、硬い岩盤層が存在する地盤の調査に使用されます。岩盤の性質や構造を詳細に把握するためには、専用の技術と機器が必要です。
土質ボーリング
これは、土の層が主体となる地盤で行われる一般的な調査方法です。特に、オールコアボーリングと標準貫入試験の2つの方法があります。
地すべりボーリング
斜面の変動現象である地すべりに関する特別な調査です。地すべりが過去に発生した地域や現在滑動が進行中の地域において、特異な地質性状を持つ。このため、一般の岩盤ボーリングや土質ボーリングとは異なる手法や記載内容が求められます。
土質ボーリング柱状図
土質ボーリングには2つの柱状図があります。
オールコアボーリング用の柱状図
連続的な土質サンプルの採取を行い、地盤の連続的な性質を把握するために使用されます。大まかな地層の判定や連続したサンプルが必要な場合に適しています。
標準貫入試験用の柱状図
特定の深さで地盤の強度を測定する試験結果を記載する柱状図です。土質の強度特性や層毎の変化を詳細に把握することができ、建設計画の基礎データとして有用です。
地すべりボーリング柱状図
地すべりボーリングには2つの柱状図があります。
オールコアボーリング用地すべり柱状図
地すべり地帯の特性を詳細に捉えるための連続サンプル取得を目的としたものです。滑動面や土塊の特性を詳細に記載します。
標準貫入試験用地すべり柱状図
地すべりエリアの地盤強度を特定の深さで測定し、その結果を記載するための柱状図です。地滑り対策の設計に必要な強度情報を提供します。
ボーリング柱状図の見方ガイド
ボーリング柱状図の見方に関するガイドでは、ボーリング調査を実施する際に必要となる柱状図の各項目について詳細に解説します。この記事では、一般的なボーリング柱状図の構成要素や各項目の理解のための基礎知識を提供します。
このガイドでは、ボーリング柱状図の各項目について詳細に解説します。現場調査を行う際や地質データを解析する際に、この情報が役立つことを願っています。ボーリング柱状図の正確な理解は、地盤の安全性や建設プロジェクトの成功に直結しますので、ぜひ活用してください。
ボーリング柱状図の記入事項
ボーリング柱状図は、地表から地下深くにわたる地質層の詳細な情報を視覚的に示すものであり、地質調査の必須ツールです。多くの場合、「ボーリング柱状図作成及びボーリングコア取扱い・保管要領案・同解説」(平成27年6月)という指針に基づいて作成されます。
標尺(m)
標尺は1メートル単位の主目盛と10センチメートル単位の副目盛で表され、深さの基準を示します。この標尺に基づいて地質層の厚みや各層の位置を図示します。
標高(m)
標高項目は、各地層の境界が地面から何メートルの高さに位置するかを示します。標高情報は、地表から深度を計測するための重要な指標となります。
深度(m)
深度は、地表面から各地層の境界までの距離を示します。この項目は、地質探査で特に重要なデータであり、掘削の進行状況を把握するために必要です。
現場土質名(模様)
現場土質名(模様)は、地質の種類を表現するために用いられる記号と色の組み合わせです。これにより、各層の特徴を視覚的に一目で理解することができます。
現場土質名
現場土質名は、土質の種類を名称で表しています。例えば、粘土や砂、礫などの情報が含まれます。
色調
色調は、調査時に観察された土の色を示します。土の色は地質層の成り立ちや特徴を理解する手がかりとなります。
標準貫入試験(SPT)について
標準貫入試験(SPT)は、地盤の工学的性質を示す指標であるN値を求めるために実施される試験です。この試験はJIS A 1219によって規定されています。
標準貫入試験・深度-N値図
深度とN値の関係をグラフ化したのが「標準貫入試験・深度-N値図」です。N値が50回を超える場合は「→」マークで表示されます。この図は、地質層の強度や硬さの変化を理解するのに役立ちます。
標準貫入試験・N値
N値は、SPTサンプラーを300mm打ち込むのに必要な打撃回数を示します。このデータは地盤の強度を評価する際に不可欠です。
標準貫入試験・深度(m)
SPT試験が開始される深さと終了した深さを表します。この情報をもとに地質層の詳細な分析が行われます。
土質試験結果一覧表
土質試験結果一覧表は、「土質試験結果一覧表(基礎地盤):(社)地盤工学会 6161」に基づいて作成されます。この一覧表には、さまざまな土質の特性が詳細に記載されています。
電子データとデータ形式
ボーリング交換用データ
ボーリング交換用データおよび土質試験結果の一覧表(XML形式)は、「地質・土質調査成果電子納品要領 平成28年10月 国土交通省」に準拠して作成されます。この形式は、データ管理と交換の際の標準フォーマットとなっています。
地質断面図の作図方法
地質断面図は、地下の地質構造を三次元的に解析するための重要なツールであり、地質学や工学など幅広い分野で活用されています。この模式図は、特定のラインに沿って垂直に切断された地質構造の様子を視覚的に表現します。地表の地形線を示す地形断面図と基本的な描き方は似ていますが、地質断面図ではさらに地表下の地質構造を詳細に描くという違いがあります。
地質断面図を作成するためには、露頭観察やボーリング調査といった現地データが欠かせません。ボーリング調査は特に重要で、得られるデータが多いほど、より正確で信頼性の高い地質断面図を作成することができます。そのため、地質断面図はトンネル掘削や地下工事などの計画立案時に不可欠な資料となります。さらに、過去の堆積環境や地層の年代といった情報も加味されることで、より詳細な解析が可能です。
地質断面図の作成プロセスでは、作図にあたって平面地質図が大いに活用されます。断面に沿って地下構造が描かれ、これと平面図を組み合わせることで、地質の三次元的理解が促進されます。しかし、作図中に平面地質図との矛盾が生じることもあります。その場合は、平面地質図の修正を行いながら、より一貫性のある図を作成するよう工夫が求められます。
地質断面図の重要性は、地質学だけではなく、土木工学や環境科学など多岐にわたる分野で認識されています。このツールを活用することで、地下の地質構造をより深く理解し、適切な工法や対策を講じることが可能となります。たとえば、トンネルのルート選定や地滑りの危険地域の特定、さらに環境影響評価など、実用的な用途は非常に幅広いです。
地質断面図が持つ情報量と解析力は、地下の地質構造を正確に把握する上で欠かせないものであり、これによって地質学の知識はさらに深まります。また、技術の進歩に伴い、より詳細なデータの収集や解析方法の改善が期待されており、地質断面図の利便性と精度は一層向上するでしょう。
地質断面図の作図の前に
まずは、地質断面図の描き方の前に、情報取得の説明を簡潔にまとめておきます。前節では、地質断面図を描くために必要な情報収集方法について詳述しました。この情報には地層の走向と傾斜、地形の高低差などが含まれます。これらの情報があれば、地質断面図の描画が可能になります。
地質断面図の作図方法は多岐にわたります。手描きによる方法やバスケット図法、さらには最新のGISソフトウェアを駆使した方法まで、それぞれの手法には独自の利点と適用場面があります。これらの方法を駆使して、正確で詳細な地質断面図を作成することで、地質学的な理解を深めることが可能となります。
手描きによる地質断面図の作成
作図準備として最初に、描きたい地質断面の位置を決定します。この位置が明確になったら、次にその位置を基にして地形断面図を作成します。地形断面図には、地表の高低差を縦断的に表現します。
次に、地形断面図に地層境界を記入します。地層の境界とは、異なる種類の岩石や堆積物が接する部分のことです。これを正確に断面図に反映することで、地質断面図が完成します。
バスケット図法による地質断面図の作成
バスケット図法(Busk method)は、地層境界を円弧を用いて表現する技術です。この方法は特に堆積岩地域での地質断面図作成に有効です。
1. 傾斜線の描画は、走向と傾斜の測定地点に対応する地形断面図上に傾斜線を引きます。
2. 垂線の交差点の作図は、各傾斜線に対して垂直な直線を引きます。これによって隣接する測定地点との垂線の交差点が作図されます。
3. 円弧の描画については、扇形内で前述の垂線の交点を中心に、地層境界に対応する点を通る円弧を引きます。このプロセスを繰り返して、各円弧が地層境界を示すように連ねていきます。
地層境界の走向が断面線と常に直交するとは限りません。このため、断面図上に表示される傾斜角(見かけの傾斜角)は真の傾斜角とは異なります。見かけの傾斜角は真の傾斜角と地層の走向、断面線がなす角度を元に算出されます。
GISソフトウェアを用いた地質断面図の作成
近年では、GRASS GISなどのGISソフトウェアを用いた地質断面図の作図も一般的となっています。これにより、より精確で詳細な地質断面図が作成可能です。
1. データ入力は、収集した地層の走向、傾斜、地形データなどをソフトに入力します。
2. 自動生成については、プログラムがこれらのデータをもとに予測を繰り返し、詳細な地質構造を描き出します。
3. 修正と精査では、自動生成された図を元に、必要に応じて手動で修正や追加情報を加えます。
GISソフトウェアを用いることにより、手作業では得られない精度と効率性を提供します。また、時間や労力も大幅に削減できるため、大規模なプロジェクトや複雑な地形での地質断面図作成に特に有効です。