土留め工の設計と支持力・検討方法を初心者向けにわかりやすく解説!

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土留めは、掘削時に周囲の土砂崩れを防止するための重要な構造物です。安定した施工を行うには、設計手法や支持力の検討、さらにはボイリングやヒービングといった地盤の変状に対する対策も必要です。適切な設計と用語の理解が、現場の安全性と効率を左右します。施工条件や周辺環境に応じた判断も求められ、高度な技術が要求されます。
このページでは、土留めに関する用語解説や設計手法、支持力の考え方などについて解説しています。

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土留め工の用語解説

土木工事は、人々の生活基盤を支えるための重要なプロセスです。その中でも、特定の専門用語は工事の成否に大いに関わります。ここでは「土留め」、「締切り」、そして「仮桟橋」について、詳しく説明していきます。

土木工事における「土留め」、「締切り」、そして「仮桟橋」は、工事の安全性と効率を高めるために欠かせない構造物です。これらの構造物を適切に使用することで、地盤の崩壊を防ぎつつ、水の侵入も防止することができます。そして、作業の効率を向上させ、安全な作業環境を整えることが可能になります。土木工事ではこれらの要素を十分に理解し、適切に対処することが非常に重要です。

土留めとは

「土留め」について説明します。土留めは、陸上で行われる掘削作業中に地盤が崩れないようにするための重要な構造物です。特に、止水を目的としない場合に使用されることが多いです。例えば、大型の掘削現場では、崖や斜面の崩壊を防ぐために専用の土留めが設置されます。これには、規ぐい方式の仮設構造物が一般的に用いられます。土留めがないと地盤が崩れるリスクが高まり、工事の進行のみならず、作業員の安全にも大きな影響を及ぼします。

締切りの役割

「締切り」について見てみましょう。締切りは、水中や地下水が存在する場所で使用されることが多い構造物で、止水と土留めの両方の役割を果たします。例えば、川や湖の中で行う土木工事では、鋼矢板などの素材を使って締切りを設置します。これにより、水の侵入を防ぎながら地盤の崩壊を防止することができます。締切りは、工事現場の安全性を確保するための不可欠なものです。地下水が多い地域での建設作業でも、締切りが設置されることが一般的です。

仮桟橋の意義

「仮桟橋」の意義について考えてみましょう。仮桟橋は、工事中に作業車両や作業員が通行できるように、一時的に設置される橋です。H形鋼などを使用して橋脚を作り、床版に覆工板を設置します。これにより、工事専用の仮橋として利用されるほか、作業台としても機能します。たとえば、河川を跨ぐ大規模工事や、高所での作業が必要な現場では仮桟橋が設置されることがあります。これにより、工事の効率が大幅に向上し、安全な作業環境を整えることができます。

土留めの設計

土留めの設計においては使用する材料の選定、路面覆工の設計、施工時の注意点、環境配慮の4つのポイントを詳しく考慮することで、より安全かつ効率的な土留め構造を実現することができます。

材料選定における考慮点

土留め構造の設計に際して、使用される材料は非常に重要です。特に、横矢板を除く大部分では鋼材が採用されることが一般的です。これは、木材に対して鋼材の方がはるかに高い安全性と信頼性を持っているためです。鋼材は、予期せぬ荷重や不測の事態に対してより良い耐力を発揮します。

さらに、設計を行う前に市場に出回っている材料のサイズや規格を確認し、容易に調達できるものを選ぶことが非常に重要です。これにより、材料の不足や高価な調達コストを避けることができます。特に経済性を重視する場合でも、土留め構造が受ける力や荷重は不明確な部分も多いので、不安定な地盤条件や予期しない負荷に耐えられるように設計することが求められます。例えば、土留ぐいや渡し起し、切ばりには、最低でもH-300の鋼材を使用することが推奨されます。

路面覆工の設計と活荷重の考慮

土留め構造の設計を行う際には、路面覆工の設計も重要な要素となります。特に、道路の交通量や建設現場で使用される重機の移動状況を考慮する必要があります。これらの要素に基づいて、活荷重の載荷方法を慎重に決定しなければなりません。例えば、高頻度で大型トラックが通行する道路では、特別な補強が必要です。また、土留めの設計過程で、土圧と動的な荷重の組み合わせによる影響も考慮することが求められます。

施工の際の細かな注意点

さらに、施工中の安全対策としては、施工現場での土留め構造のリアルタイムな監視やメンテナンスが重要です。定期的に鋼材の腐食状態や応力の分布をチェックすることで、予期しないトラブルを未然に防ぐことができます。また、施工の際には専門の技術者による厳密な監督の下で行われることが望まれます。

環境への配慮と将来のメンテナンス

最後に、環境への影響も考慮する必要があります。例えば、使用する鋼材がリサイクル可能であるかどうか、または施工現場周辺の植生や水質に影響を与えないかを確認することが求められます。これにより、持続可能な建設を実現できます。将来的なメンテナンスの計画も立てておくと、長期的に安定した土留め構造を維持することができます。

土留くいの支持力について

土留くいの支持力を評価するには、多様な調査結果に基づく詳細な分析が必要です。まず、特定の土質条件が重要な役割を果たします。その中でも、N値30以上の砂質土層や固結シルト層、さらにはN値10以上の洪積粘性土層に少なくとも3メートル以上の根入れが行われれば、詳細な支持力の計算を省略しても問題ありません。この「根入れ」とは、アースオーガーなどの機械的な穿孔ではなく、打撃を用いて土壌に深く貫入させる方法を指します。

具体的には、土留くいの根入れが十分に行われている場合、その土壌の安定性と支持力は高く評価されます。しかし、根入れが3メートル未満の場合や、不十分な土質に対しては、必ずしも同じ支持力が期待できないため、極限支持力の計算が必要です。この計算においては、安全率2を使用し、得られた数値を割ることで許容支持力を導き出します。

さらに、土留くいの支持力に関連する要因としては、土質の種類や層の厚み、地下水位の影響などがあります。特に地下水位が高い場合、土壌の安定性が変動するため、支持力に影響を与える可能性があります。このような状況を考慮に入れて、設計や計画段階での注意が求められます。

地盤の調査においては、標準貫入試験(SPT)やボーリング試験などの方法が一般的に利用されます。これらの試験データを基に、N値の分布や土質の特性を詳細に分析し、土留くいの設置場所や深さを最適化することが求められます。その結果、土留くいの安定性を確保し、安全かつ効果的な設置が可能となります。

まとめると、土留くいの支持力評価には、土質条件や根入れの深さ、地下水位など多岐にわたる要素を総合的に判断する必要があります。これにより、最適な設計と施工が行われ、安全性と耐久性の高い土留め構造を実現することができます。

土留ぐいの断面計算における設計手法

土留ぐいは掘削時に土圧を支えるため、重要な構造要素となります。そのため、くいの断面形状は土圧による曲げ応力に対して適切に設計される必要があります。しかし、断面計算と土圧のバランスに対する安定計算は直接的な関係がないため、単に曲げに対する設計が済んだからといって全体の安定性が保証されるわけではありません。このため、断面計算において必要以上の剛性を持つ断面を選択することが望ましいと考えられます。

くいの選定においては、材料の選択も重要な要素となります。一般的に土留ぐいの最小断面として使用されるH-300の規格は、このような理由に基づいて選定されています。以下に、断面計算を行う際の具体的なステップと注意点について詳述します。

土留ぐいの断面計算は、安全性と経済性のバランスを取るために非常に重要です。適切な断面形状と材料選定を行うことで、建設現場での事故や不安定な状況を未然に防ぐことができます。

スパンの設定と仮想支持点

スパンの設定については、掘削完了時における最下段切ばり、もしくは最下段切ばり設置直前の一段上の切ばりと仮想支持点間をスパンとします。これら両方のケースについて計算を行う必要があります。

単純支持と仮想支持点の役割として、くいは上部の両支点で単純支持されていると仮定します。仮想支持点は、くいの根入れ長を決定するための安定計算で求めた受働側(受働土圧とくい側面抵抗)の合力の作用点となります。

仮想支持点の最小位置は、土質が良く、くいの根入れ長が小さい場合の仮想支持点の最小位置は、くいの最小根入れ長の1.5倍、すなわち掘削底面以下75cmとします。

荷重と応力度の計算

荷重設定では、腹起し切ばりと掘削面の間に、図4-5に示す断面決定用土圧を作用させます。

特別な場合の対応として、腹起し間隔が特に大きい場合、腹起し間を単純スパンとし、断面決定用の土圧を作用させて応力度のチェックを行います。

土の重量については、土の単位体積重量は湿潤重量で計算します。

くい断面の許容応力度と荷重影響

許容応力度は、くい断面の許容応力度は、表4-6の数値を基に決定します。

鉛直荷重の影響については、くいが覆工から鉛直荷重を受ける場合、軸力と曲げが同時に作用する部材として計算します。軸力と曲げが共に作用する場合、曲げ座屈と横倒れ座屈についても考慮し、「道路橋示方書」(日本道路協会)鋼橋編3.3の基準に従って検討する必要があります。

ボイリングとヒービングに対する検討

土木工事や掘削作業において、掘削底面の安定性は非常に重要です。砂質地盤でのボイリングおよび軟弱な粘性土地盤でのヒービングに対する対策が必要となります。それぞれの現象について詳しく解説し、対策方法を検討します。

ボイリングとヒービングはいずれも掘削工事における重大なリスク要因です。これらの現象が発生すると地盤の安定性が損なわれ、重大な事故につながる可能性があります。したがって、事前の詳細な地盤調査と適切な検討、対策が必須です。地盤の特性や施工条件を十分に考慮し、安全な掘削工事を実現するための計画を立てることが求められます。

ボイリング現象に対する検討

ボイリング(Boiling)は、砂質地盤で発生する現象です。これは、特に鋼矢板の先端部分で内部の土圧と水圧のバランスが崩れた場合に起こります。バランスが崩れると、水と砂が沸き立つように噴出し、地盤が急激に崩壊します。この現象が発生すると、内部の砂は非常にゆるい状態となり、せん断抵抗力がほとんどなくなります。結果として、基礎の支持力が不足し、構造物の沈下や崩壊など重大な事故の原因になります。

ボイリングの発生を防ぐためには、限界動水勾配(Critical Hydraulic Gradient)を考慮した方法で検討します。具体的には、以下のようなステップを踏んで検討します。

地盤調査では、掘削地盤の詳細な調査を行い、砂の粒径分布や密度、地下水位などのデータを収集します。

数値解析については、収集したデータをもとに地盤の安定性を数値解析します。特に動水勾配を計算し、ボイリングの発生可能性を評価します。

ボイリング対策としては、ボイリングが発生する可能性がある場合、地下水位の降下や地盤の補強などの対策を講じます。

ヒービング現象に対する検討

ヒービング(Heaving)は、軟弱な粘性土地盤で発生する現象です。掘削の背面で土塊の重量が掘削底面以下の地盤の支持力を上回ると、地盤内の土がせん断破壊を起こし、掘削底面が隆起する現象です。この現象は、掘削作業の安全性や掘削後の地盤の安定性に大きな影響を与えます。

ヒービングを防ぐための検討方法には、以下のような手順があります。

地盤調査では、粘性土地盤の特性を詳細に調査し、地盤の耐力や土質の特性を把握します。

計算式の適用として、ヒービングの可能性を評価するために、各種計算式を適用します。本指針では、矢板の剛性と根入れ長を考慮した検討方法を用います。

ヒービング対策として、もしヒービングのリスクが高い場合、掘削計画を見直し、矢板の配置や根入れ長の調整、地盤改良などの対策を実施します。

特別な場合の検討

締切り内に基礎くいが先行施工される場合、特定の条件を満たす場合にはヒービングに対する安定計算が不要とされます。具体的には、締切りに平行する基礎くいの中心間隔がくい幅の5倍以内、かつ純間隔5m以内の場合です。