まとめ【初心者必見】河川の堤防の構造・設計方法を詳しく解説!

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河川堤防は、洪水や浸水から地域を守るための重要な防災設備です。その設計には、堤防の種類や役割、構造の理解が欠かせません。堤防の種類には、土堤、防水堤、重力堤などがあり、それぞれ異なる機能を持っています。堤防の断面設計は、耐久性や安全性を確保するために非常に重要です。設計時には土壌や水流の状況を考慮し、最適な方法を選ぶ必要があります。
このページでは、河川堤防の種類とその役割、構造、設計について詳しく解説しています。

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河川堤防の種類とその役割

河川沿いには、大量の水が流れ込むことによる洪水被害を防ぐため、さまざまな種類の堤防が設置されています。ここでは、各種堤防の特徴とその役割について詳しく解説します。

河川堤防はその設計と配置により、洪水対策の効果が大きく変わります。このため、洪水の発生リスクや地形に応じた適切な堤防の選定が必要です。それぞれの堤防が持つ特徴を理解し、適切に利用することで、多くの人々の生活や資産を守ることができます。

本堤 (ほんてい)

本堤は河川堤防の中で最も重要な役目を果たすもので、主要な洪水防止機能を担っています。河川の両岸に設置され、水があふれることを防ぎます。

副堤 (ふくてい)

副堤は本堤の背後に設置される堤防で、本堤が決壊した際に洪水がさらに拡大するのを防ぎます。このため、控堤や二重堤とも呼ばれることがあります。本堤が万が一破損した際のセーフティネットとして機能します。

横堤 (よこてい)

横堤は河川の流れに対してほぼ直角に設けられており、洪水時の流速を減少させることで洪水の影響を軽減します。この堤防は遊水池のような効果も期待され、広い河川敷に設置されることが一般的です。さらに、道路としても利用されることがあります。

背割堤 (せわりてい)

背割堤は通常、二つ以上の河川が合流する地点に設けられます。この堤防は一方の河川で増水があった際にもう一方の河川への影響を最小限に抑える役割を持っています。また、逆流や堰上げによる影響を減少させることで、流量が異なる河川の円滑な合流を促進します。

導流堤 (どうりゅうてい)

導流堤は河川の分流や合流地点、河口などに設けられる堤防で、水の流れと土砂の移動を望ましい方向に導くために使われます。背割堤がこの導流堤の役割を兼ねることが多く、背割堤と導流堤を合わせて分流堤とも呼ばれます。

越流堤 (えつりゅうてい)

越流堤は堤防の一部を低くして設けており、洪水時に水を調整池や遊水地に誘導する役割を持っています。これにより、洪水の影響を緩和し、下流域への過剰な水流を防ぐことができます。

締切堤 (しめきりてい)

締切堤は不要となった河川や古い流路を締め切るための堤防です。この堤防により、廃川となった部分に水が流れ込むのを防ぎます。

霞堤 (かすみてい)

霞堤は上流部の堤防と下流部の堤防との間に設けられたもので、洪水時に不連続部に逆流することで一時的に貯水が可能です。この堤防は特に急流河川で多用されます。

輪中堤 (わじゅうてい)

輪中堤は特定の区域を洪水から守るために設置された堤防で、堤防で囲まれた区域を洪水から保護します。この堤防は歴史的に見ても重要で、地域全体を防御するための重要な構造物として知られています。

河川堤防の構造

河川堤防の役割

河川堤防は、主に洪水から地域を守るために設置される施設です。基本的な目的は、計画高水位という設計された水位以下の水を安全に導き、住民や農地を保護することにあります。日本全国に多くの河川が流れており、それぞれの河川に対して左右岸に堤防が設けられています。ただし、特定の地形、例えば山間地を流れる河川においては、堤防が片側にしか設置されていないこともあります。

一般的に、河川堤防は土を盛り上げた盛土によって築造されます。しかし、特別な事情がある場合には、コンクリートや鋼矢板(鉄を板状に加工したもの)などの材料を使用することもあります。これらの特別な材料は、主に洪水のリスクが高い地域や地形が難しい場所で使用されます。また、これらの材料は耐久性や設計の自由度を高めるために用いられることが多いです。

右岸と左岸

河川を上流から下流に向かって眺めた場合、右手側を「右岸」、左手側を「左岸」と呼びます。この基本的な用語は、河川の地理を理解する上で欠かせないものであり、堤防設計や水管理においても重要な概念となります。

川表と川裏

堤防を基準に、水が流れている側を「川表」、住居や農地などが存在する側を「川裏」と呼びます。川表は洪水時に直ちに水流にさらされるため、堤防の設計や補強が重要となります。一方、川裏は日常的に住生活が営まれる場所であり、堤防の役割が一層際立つ場所です。

河川区域

河川区域とは、堤防の川裏側の法尻から対岸の堤防の川裏側の法尻までの間の土地を指します。この区域は主に洪水や災害の発生を防ぐために設けられ、その管理は河川法によって規制されています。河川区域は、洪水時に流水を一時的に収容する役割も持っています。

高水敷

高水敷は、河川が複数の断面の形を持つ場合の上段の土地を指し、通常時にはグラウンドや公園などとして利用されます。このエリアは洪水時には水に浸かってしまいますが、普段は市民のレクリエーションの場として、多様な用途に利用されています。

低水路

一方、低水路は常時水が流れている部分であり、河川の流れを常に確保しています。この区域は特に洪水時に大量の水を迅速に流下させるために重要です。

堤内地

堤防によって洪水から保護されている地域を「堤内地」と呼び、ここには主に住宅や農地が広がっています。日本の歴史的な低平地では、これらの地域が「輪中堤」と呼ばれる堤防システムによって洪水から守られてきました。

堤外地

一方、堤外地は堤防に挟まれている川の部分を指し、水が自由に流れる場所となっています。堤外地は直接流水にさらされるため、堤防の管理や維持が重要です。

側帯について

河川堤防の構造には、多くの工夫が凝らされています。その一つが側帯です。側帯とは、堤防の裏側、すなわち堤内地側に設置される土砂の盛り上がった部分のことを指します。この側帯には様々な役割がありますが、主には堤防の安定性を保つためのものです。さらに、側帯には非常時に使うための土砂が備蓄されることもあります。このため、洪水や災害時に迅速な対応が可能となります。また、側帯は環境の保全にも一役買っています。土砂の積み上げによって、自然の植生を保護し、野生動物の生息地を確保することもできます。これにより、地域の生態系が守られ、持続可能な環境づくりが促進されるのです。

法勾配の重要性

次に注目すべきは、法勾配です。法勾配とは、堤防や護岸の斜面部分の勾配(傾斜)を指します。この勾配は非常に重要で、堤防の設計において大きな役割を果たします。斜面の勾配は、1:nという形式で表されます。たとえば、1:2の勾配は2割の勾配を意味し、1:0.5の勾配は5分の勾配を意味します。2割勾配は5分勾配よりも緩やかであり、洪水時の水の急激な流れを減少させる効果があります。このため、適切な法勾配の設計は堤防の安全性を高め、河川の氾濫を防ぐための重要な要素となります。

複断面と単断面の違い

河川堤防の設計において、複断面と単断面という概念も重要です。単断面の場合、高水敷と呼ばれる部分が存在せず、低水時と高水時で水面の幅にそれほど大きな差がありません。これに対して、複断面の堤防では高水敷が設計されており、高水時には水面の幅が大きく広がる構造となっています。この高水敷のおかげで、水面が広がることにより水深が浅くなり、その結果、流速も遅くなります。これにより、洪水時に堤防にかかる負荷を軽減し、堤防の破壊を防ぐ効果があります。複断面の設計は、特に洪水のリスクが高い地域で非常に有効とされています。

小段の役割

堤防の安定性を保つために設けられるもう一つの工夫が、小段です。堤防が高くなるにつれて、斜面の上下方向の長さ、すなわちのり長も長くなります。このため、斜面の安定性を保つために小段と呼ばれる水平な部分が設けられることが多いです。小段を設けることによって、斜面の崩壊を防ぎます。また、小段は維持補修や水防活動を容易にする役割も果たしています。これにより、堤防のメンテナンスが効率的に行われ、安全性が常に維持されるのです。

まとめ/河川堤防の構造

河川堤防は地域社会の安全を守るために不可欠なインフラです。その素材や構造、設置場所は河川の地形や洪水リスクに応じて異なります。河川堤防とその関連用語を理解することは、洪水対策や地域防災において非常に重要です。

河川堤防の構造に関する主要な要素です。堤防の設計には、ただの土砂の堤積だけでなく、多様な技術と知識が必要です。これらの工夫が組み合わさることで、地域住民の安全を守る堅固な河川堤防が作り上げられるのです。

河川堤防の基本断面の設計

河川堤防の基本断面設計においては、高さと天端幅からのり面形状まで多岐にわたる要素を総合的に考慮する必要があります。特に、洪水時や地震災害時の安全性や機能性を承知の上で、適切な設計を行うことが重要です。構造令に基づく基本的な基準を守りつつ、現場の特性に応じた柔軟な対応が求められます。

堤防の高さと天端幅

河川堤防の基本設計において、堤防の高さと天端幅は極めて重要です。具体的な数値設定については構造令に基づいて行われます。特に余裕高は、洪水時における風浪やうねり、水しぶきなどによる一時的な水位上昇を考慮したものです。これは安全性の確保だけでなく、洪水時の巡視や水防活動の安定性を高めるためのものでもあります。また、植生や風雨による堤防の劣化、流木などの流下物がゲートや橋梁を閉塞することへの対策としても必須です。これらの要素を総合的に考慮し、構造上必要とされる高さを設定します。

天端幅に関しても不可欠な要素があります。管理用通路としての利用はもちろん、散策路や高水敷へのアクセス路としても幅広く利用されています。このため、天端幅は機能性を追求して可能な限り広く確保するのが理想です。特にバリアフリー化の推進や水防時の車両通行の円滑な確保を考慮すると、広い天端幅が求められます。さらに、地震災害時の河川水利用なども考慮に入れて設計します。構造令で規定されている余裕高及び天端幅は最低限の基準であり、河川の特性に応じて柔軟に調整する必要があります。

のり面の形状とのり勾配

堤防ののり面設計もまた重要な要素です。のり勾配については、原則として3割より緩やかな勾配が推奨され、これは表のり・裏のり共に適用されます。台形断面の一枚のりとすることが基本ですが、一定の高さを超える堤防については構造令に基づき必要に応じて小段を設けることがあります。小段の設置は雨水の浸透を助長する場合があり、対策として緩斜面の一枚のりが有利です。これは維持管理や除草作業、さらに利用時の利便性も高まるため、設計上有効です。しかし、高さの低い堤防についてはこの限りではなく、小段を設けずに一枚のりで設計する場合もあります。

既存用地の範囲内で一枚のりを採用する際、のり勾配が3割に満たない場合は特別な設計が必要です。また、小段が兼用道路として利用されている場合や一枚のりにするのが困難な理由がある場合も考慮しなければなりません。その際でも、雨水排水が適切に行われるよう十分な対策を講じる必要があります。

長いのり面は雨水による侵食が起こりやすいという課題もあります。適切な雨水排水処理を行い、ガリ侵食を防ぐことが求められます。これにより堤防の耐久性や機能性が維持され、浸水被害のリスクが低減されます。