オールケーシング掘削機は、場所打杭工法で活用される専用の重機で、ケーシングチューブによって孔壁を安定させながら深い掘削を可能にします。「ベノト工法」とも呼ばれ、揺動式や全周回転式といった工法の違いにより、施工条件への対応力に差が出ます。また、オールケーシング工法は高い施工精度が求められ、技術者の熟練度や設備の状態が重要です。CADデータの活用により、施工計画の精度向上や工事の効率化が実現します。
このページでは、オールケーシング掘削機の工法と特徴について解説しています。

オールケーシング掘削機とは
オールケーシング掘削機は、ケーシングチューブを地中に押し込み、クラブバケットでケーシングチューブの中の土砂をかき出していきます。
掘削と排土が終わると、ケーシングチューブを継ぎ足し、さらにケーシングチューブを地中に押し込んでいきます。
所定の深さまでチューブ建て込み、掘削、排土が繰り返されます。
その後、工事の内容によりますが、調査やコンクリート打設を行います。
すべての作業が終わると、ケーシングチューブを引抜いていきます。
このような掘削をオールケーシング工法と呼び、掘削機のことをオールケーシング掘削機と呼びます。
オールケーシング掘削機は、ケーシングの途中を掴み、継ぎ足しながら押し込んでいくため、地表面上に出る部分が少なく、重機の重心が低くなるため、安定性の高い機械となっています。
また、ケーシングを用いることにより、掘削孔が保護されます。
一方で、砂層などではケーシングに働く摩擦力が大きく、ケーシングの揺動不能・引き抜き不能になることがあります。
ケーシングチューブを揺動させて地中に押し込んでいく工法をベノト工法(揺動式オールケーシング工法)、ケーシングチューブの先端にケーシングビットを取り付け、全周回転させることで地中に押し込んでいく工法を全回転式オールケーシング工法と呼んでいます。
全回転式の方が、転石のある地盤や旧構造物の鉄筋コンクリート基礎がある地盤などのより硬質な地盤に対応できます。
場所打杭工法として用いられる「オールケーシング工法」
大口径削孔機であるオールケーシング掘削機は、場所打杭工法として用いられる「オールケーシング工法」で利用される機械です。
オールケーシング掘削機のcadデータを扱う現場であれば、オールケーシング工法が導入されると見て間違いないでしょう。逆に言えばオールケーシング工法が導入されている現場には、オールケーシング掘削機のcadデータが必要というわけです。
オールケーシング掘削機とオールケーシング工法は、その性質上、道具や手法・部材など、どちらか一方での説明というわけにはいきません。そのためここでは、オールケーシング掘削機およびオールケーシング工法を同様とみなし、特に区分けせずに説明していきます。また一部を除き、オールケーシング掘削機およびオールケーシング工法とは区分せず「オールケーシング」として表記しています。
オールケーシング工法の特徴や長所・短所
オールケーシング工法は、ケーシングチューブという筒型の機械を、地中に圧入します。
搖動して孔壁を保護しながら、ケーシングチューブ内の土砂を掘削・排土し、計画深さに達したら孔底処理を行います。
そして、鉄筋かごを建込後、トレミーによりコンクリートを流し込み、打設完了後、ケーシングチューブ及びトレミーを引抜き回収する、という工法です。
フランスの、ベノト社が開発したことから、ベノト工法(揺動式オールケーシング工法)とも呼ばれています。
揺動して圧入していくものを「ベノト工法」(揺動式オールケーシング工法)、ケーシングチューブが一方向に回転することで掘削していくものを「全回転式オールケーシング工法」と呼んでいます。
オールケーシング掘削機は、機能的に全回転式の方が、硬質地盤に対応可能です。
長所として、杭全長にケーシングを使用するので、孔壁の崩壊がないことです。
短所は、杭径に制約があったり、ボイリングやヒーピングが発生しやすいことです。
また、クレーン等の大型機械を使うため、大規模な工事用地を必要とします。
「ベノト工法」とも言われる
オールケーシングは一部で「ベノト工法」と言われることがあります。それは、フランスにある「ベノト社」で誕生した工法だからです。そのためベノト工法が通じてオールケーシング工法が通じない作業場も存在するようです。フリーのcadデータをダウンロードして使用する時に、もしオールケーシングで見つからない場合は、ベノト工法で検索してみると、無料のcadデータがダウンロードできるかもしれません。
筒型のケーシングチューブで孔壁を保護し掘削
掘削面の土砂が大口径削孔で崩壊してしまうのを防ぐために、筒型で鋼製のケーシングチューブで孔壁を保護しつつ、回転もしくは揺動させながら地中に挿入していきます。掘削時の土砂などはグラブバケットで排出を行った上で、コンクリートを掘削後の孔の中にコンクリート打設します。掘削時に、ケーシングチューブを支持地層まで伸ばしているゆえに、地下水に左右される事がないため、崩壊などが発生しにくいというわけです。また、汚水やベントナイトを利用しないため、発生土砂などの処理も簡単に済ますことができます。
揺動式オールケーシング工法と全周回転式オールケーシング工法
オールケーシングは、その手法により「揺動式オールケーシング工法」と「全周回転式オールケーシング工法」の2つの工法に区分されます。
揺動式オールケーシング工法は、ケーシングチューブが揺動させながら圧入と引き抜きを行う工法です。揺動式オールケーシング工法の駆動は全て油圧式となっています。
一方の全周回転式オールケーシング工法は、ケーシングチューブ先端に取り付けられたカッターが、一方向に回転することで地盤掘削を行う工法です。全周回転式オールケーシング工法は揺動式オールケーシング工法に比べると、硬質な地盤に対応できると言われています。
ちなみに、先に紹介したベノト工法といわれるのは、一般的に揺動式オールケーシング工法となります。そのため、ベノト工法と言われた場合は、揺動式オールケーシング工法の図面を使用または作成する必要があります。ただし、中にはベノト工法と言いつつも実は全周回転式オールケーシング工法を採用している現場もありますので、無料のcadデータをフリーダウンロードしたり図面を作成する前に、必ず確認するようにしましょう。
オールケーシングの施工要領とcadデータの活用
オールケーシングの施工要領は、まず杭の芯出しや掘削位置を図面などで確認し、杭径上にマシンを設置します。その後、ファーストチューブとなるケーシングチューブを建て込み掘削を開始します。ファーストチューブが地中に入ったところで、グラブバケットにより土砂を排出します。ちなみに、グラブバケットは1本のワイヤーロープで操作できるような仕組みとなっています。ワイヤーロープを引き上げることでグラブバケットが閉じ、土を掴み取ります。ファーストチューブを想定している深度まで、建て込みと掘削そして排土を繰り返しながら行います。なお、土壁が崩壊してしまわないように、原則として掘削孔底はケーシングチューブの下端よりも上でなければいけません。
このように作業を進めながら、ファーストチューブの全長を掘削していきます。ファーストチューブの掘削が終了すると、さらにケーシングチューブを継ぎ足していき、掘削を行いながら規定した深まで進めていきます。
その後、検尺や深度、沈砂、スライムなどの調査を行い、杭底部のスライムを除去した後に、杭の外枠である鉄筋かごの建て込みを進め、コンクリート打設を行います。
コンクリート打設は、ケーシングチューブ1本分行われるたびにそのチューブを引き抜いていきます。そして、全てのケーシングチューブが引き抜かれ、地表面までコンクリート打設が行われたところで作業完了となります。
オールケーシングではこのように作業を進めていくため、掘削する深さによりチューブの本数も変わってきます。掘削前に想定する本数や深さを図面で確認して、フリーのcadデータや無料の素材を利用してシミュレーションすると良いでしょう。また、無料のデータが存在しない場合は、メーカーのカタログなどを参考にしてデータを作成してみましょう。
オールケーシングの長所と短所
オールケーシングの長所としては、掘削する孔に対して全てにチューブが挿入されるため、保護されているというポイントがあります。そのため、孔壁の崩壊もないので、不純物が打設コンクリートに混入しないといういメリットがあります。さらには、斜めにもチューブを建て込めるため、斜杭の施工が可能となっています。また、地盤が崩れやすいまたは荒れている場所にも適していて、泥水を清水に置き換えることで孔底に停留してしまっているスライムの除去にも対応しています。加えて、杭の周面部に対する正確性が高い・欠陥杭が作られない・コンクリート余盛りが少ない・杭の曲がりが防止できる・岩盤や転石などの掘削に強いといった点がメリットとなります。
一方で、オールケーシングの短所は、砂の層に達した時などはケーシングに対する摩擦力が大きくなるという点です。そのため、ケーシングの揺動や引き抜きなどについて不能状態となってしまい、最悪の場合は事故を起こすことが想定されます。また、オールケーシングは大型な機械のため、狭い場所などには適さない工法となっています。さらには、オールケーシングで取り扱える杭径が制約されているため、掘れる孔に制限があるという点も、デメリットとなっています。
技術力に左右されるオールケーシングによる打設工事の品質
オールケーシングによる打設工事の品質は、技術者の経験などに大きく左右されます。そのため、総合建設業などが直接工事を行うことは少なく、多くの場合に専門業者が担当することとなります。こういったことから、総合建設業者と専門業者の間では、施工計画図などで詳細で丁寧な施工準備が必要となってくるのです。
また、揺動式オールケーシング工法と全周回転式オールケーシング工法では、使用される建機は同じでも、取り付けられたアタッチメントと掘削方法が違うだけで性能が変わってくることがわかります。特に全周回転式オールケーシング工法ではカッターが必要になるなど、建機のcadデータだけでは補えない部分もあります。
こうした観点から、施工計画から実作業にいたるまで、誰にでもわかりやすく正確な図面などが常に求められる状況にあるのです。
現在では、さまざまな建機メーカーなどがオールケーシングを取り扱っています。メーカーサイトでは、フリーダウンロード可能な無料のcadデータ図面を公開しています。中には、全周回転式オールケーシング工法に対応している、アタッチメントありのcadデータ図面もフリーダウンロード可能です。
無料で使用できるcadデータを上手にフリーダウンロードし活用して、より効率の良く図面などを作成していくようにしましょう。