このページでは、ローリングタワーの組み立て方法や、安全に利用する方法を解説します。
ローリングタワーとは、大規模な建設現場などで用いられる、櫓(やぐら)のような形の移動式足場です。階段付きで高さが2~4階建てのものが多く、固定せず使用できるため、ビルの外装工事など2mを超える高所での作業に使われます。
ローリングタワーは便利な道具である反面、転落事故も増えています。ローリングタワーの組立てや解体には資格が必要です。足場の高さにかかわらず、作業員は「足場の組立て等特別教育」を受講する必要があります。
ローリングタワーとは
ローリングタワーとは、大規模な建設現場などで用いられる、櫓(やぐら)のような形の移動式足場です。階段付きで高さが2~4階建てのものが多く、固定せず使用できるため、ビルの外装工事など2mを超える高所での作業に使われます。
ローリングタワーは簡易的で丈夫な枠組み構造をしています。枠組み構造であるため、足場の高さを自由に変えられるのがローリングタワーの大きなメリットです。またキャスターによって人の手で簡単に移動することもでき、建築現場で重宝されます。
立ち馬・脚立との違い
立ち馬・脚立・ローリングタワーは、建築現場で使われている足場です。
内装工事では「立ち馬」や「脚立」、オフィスビルなどの大きな建物では、「ローリングタワー」といった形で建設現場の規模によって使い分けています。
高い場所での作業に欠かせないのが「脚立」です。立馬(立ち馬)などと呼ばれることもありますし、ローリングタワー(ローリング足場)などの表現のときもあります。立ち馬は、脚立の天板を幅広く長くしたもので、建物の天井や内壁の仕上げ作業などに使用されます。
脚立や立ち馬は、建物の骨組みができあがってから、屋内で天井の空調や電気配線などの作業、壁を設置するときなどに使います。ローリングタワーは、空調機器や天井の照明取り付けなどの際に使う足場です。
脚立
高いところで、はしごより安全に作業できる、自立式の足場です。
天板部分に乗って作業をすると危険なため、両方に脚をかけて作業するのが基本です。
一人でも持ち運べ、移動が多いときに便利なのが特徴です。
立ち馬
足場台といわれる、脚立よりも足場がしっかり設けられた、自立式で手すりもある、移動できる足場です。しかし、移動して設置する手間や時間がかかるため、最初の設置場所が重要です。
座って作業すると転倒の危険性がある
脚立はその見た目からもローリングタワーやローリング足場などと呼ばれることもあります。縦に長く伸びていく姿が、ローリングタワーやローリング足場に向いています。兼用脚立の上に座って作業をする姿は、よく見かける光景の一つです。
一見安定感のあるように見えるかもしれませんが、またぐときに横揺れしてしまい転倒の危険性があること、背面に重心がかかり、不安全な状態になってしまいます。そもそも兼用脚立の特徴として、背もたれがついていないこと、安定性の悪さがあります。天板に立つようにはできていないので、どうしてもリスクが発生してしまうのです。
これらのローリングタワーやローリング足場などの危険性を回避するためには、可搬式作業台で手がかりの棒付きのものを選ぶのをおすすめします。可搬式作業台を使用しないままだと、作業台の上でつま先立ちをしてしまう危険性もあり、自分でリスクを高めてしまっています。立馬(立ち馬)を選ぶときのポイントです。
作業時の問題点
ローリングタワーは便利な道具である反面、転落事故も増えています。
固定式の足場に比べ不安定なため、転落・墜落の災害が約20%と問題となっています。
ローリングタワーの使用には、次のような問題点があります。
・昇降設備がなく作業床に手すりがない
・作業床が全面に敷き詰められていない
・足場のバランスが不安定となりやすい
・脚輪ブレーキを効かさずに使われる傾向がある
・作業員や荷物を載せたままで移動される傾向がある
ローリングタワーの組立てや解体には資格が必要
ローリングタワーの組立てや解体には資格が必要です。足場の高さにかかわらず、作業員は「足場の組立て等特別教育」を受講する必要があります。
規則で定められた足場の組立、解体、変更を行う場合は「足場の組立て等作業主任者」を選任する必要があります。「足場の組立て等作業主任者」とは、足場の組立等作業主任者技能講習を修了した者です。
ローリングタワーの組立
ローリングタワーの構造は、作業するための床とそれを支える枠組、昇るためのはしご、手すり、脚に付けられたキャスターなどによって主に構成されています。
ローリングタワーの枠組みは、「建わく」「交さ筋交い」「建わくジョイント」「水平交さ筋交い」によって構成されているのが一般的です。布わく、拡幅わく、控えわくを構成するかどうかは必要に応じて異なります。
ローリングタワーは高い場所で作業を行うためのものなので、強度を確保しなければいけません。そのため材料は鋼材やアルミニウム合金材を使用する場合がほとんどであり、使用する材料についてもJIS規格に則ったものにしなくてはいけません。どれも曲がりやへこみ、割れ、二枚割れなどの欠点がないものを選ぶのが大切です。
作業床
ローリングタワーに使用する作業床には、「床付き布わく」「布わく」「足場板」の3つの種類があります。
① 床付き布わく
床材とけた材を溶接や鋲止めによって一体化したもので、4つの隅には浮き上がり防止のためにつかみ金具が付いています。
② 布わく
布地材に腕木材を溶接しくっつけたもので、これも布地材の両端に浮き上がり防止のための金具が付いています。
③ 足場板
足場板は布わくや建わくの上に敷き、鉄線などで取り付けて使用します。
ローリングタワーの作業床は全面に敷き詰めるのが基本です。作業床同士の間には隙間ができますが、すべて3cm以下にしなければいけません。
建わく
建わくとは、脚柱・横架材・補剛材を溶接し合わせたもののことをいいます。鳥居の形をしたものとはしごの形をしたものに分かれますが、ローリングタワーにおいては作業者の上り下りを想定してはしご型の建わくを使う方が望ましいでしょう。
脚注ジャッキ
脚柱ジャッキとは、脚柱と脚輪(キャスター)の間に取り付ける部品のことをいいます。この脚注ジャッキがあることによって、作業床を水平に保つように調節することができます。ただし、脚柱ジャッキを使用する長さは地上から脚注下端までの距離で、30cm~50cmまでと定められています。
キャスター
キャスターは主軸・フォーク・車軸・ブレーキなどで構成されています。このキャスターがあるおかげで、ローリングタワーを移動させる際に自由に動かすことが可能になっています。そのため、ローリングタワーのキャスターとして使用するには主軸の回りを自由に回転できる構造になっていることが一つの条件になります。
ローリングタワーを安全に利用する方法 その1
ローリングタワーは足場が狭いため落下事故などが多く、作業する際には細心の注意を払うことが重要です。足場の作業台を利用した作業員が、転落する事故も発生しています。例えば、柱にロープを巻くため、立ち馬で作業した人が足を踏み外して、頭に10㎜の鉄筋が刺さった事例もありました。
作業員が誤った使い方をしている場合もありますが、cadで作った図面の設計ミスも考えられます。
安全な立ち馬、脚立、ローリングタワーの図面を作るには、作業員とのコミュニケーションが必要です。正しい設計図を書いても、間違った使い方をすれば事故につながります。
作業員と使い方を話し合う
作業員とローリングタワーの使い方を話しましょう。
例えば、オフィスビルで使われるローリングタワーには、4つのキャスターが付いています。
キャスターのブレーキを止めないで作業する、危険なケースもあるのです。
利用方法が書かれたパネルを設置
安全な立ち馬・脚立・ローリングタワーを利用するには、パネルの設置も考えてみてはいかがでしょうか。注意点を説明しても、正しい使い方を忘れてしまう作業員もいます。
参考として「ローリングタワーの注意点」を紹介します。
【パネルに書くこと(ローリングタワー)】
取り付ける時
・ キャタワーのブレーキをチェック
・ 足場を水平にする
・ 転落防止の手すりを付ける
作業をする時
・ 上り下りをするときは、荷物を持たない
・ 指定された重量を守る
・ 足場の近くにハシゴを置かない
・ 作業をするときは「ハッチ(入口)」を閉じる
移動する時
・ 部外者を入れない看板を立てる
・ キャタワーのブレーキを外す
・ 移動時は、作業台に人を乗せない
・ ローリングタワーの上げ下げには、専用の装置を使う
注意点が書かれたパネルがあれば、作業員はチェックしやすいです。
また、モノタロウ、ミドリ安全、アスクルなどの通販を利用してください。
1枚あたり500円~1000円前後で購入できます。
工事工程から手順を確認する
脚立の機動性、立ち馬の移動と設置の手間、ローリングタワーの場合は最後に解体が必要となります。
解体する前に効率よく業務が終えられるよう、建設現場のあらゆる場所でいつ使うのか、工期を計算して作業を進めることが重要です。
作業時の禁止事項を決めておく
ローリングタワーをどこに設置すれば、正しい方法で、事故を起こさずに作業ができるかを見越した、施工計画書を作る必要があります。
設置する位置をよく確認し、効率よく作業を進めていく流れを作成することが重要です。
作業時の禁止事項を決めておき、事故を起こさないオペレーションを徹底するようにします。
写真も使いながら説明できる資料を、計画書とは別に用意しておきましょう。
身長も考慮した作業計画書を作成
どの程度の高さで作業するかによって、必要なものも異なってきます。
現場職人とよく確認し、どこに設置するかまで、パッと見てわかるような計画書を渡せるように準備をしておきましょう。
また、人の大きさも入れておくと、天井までの距離がどの程度になるのかがわかります。
そのため、背の高い職人を配置すべきかどうかなど、職人の動き方もシュミレーションできるのが利点です。
ローリングタワーを安全に利用する方法 その2
危険性を再チェック
立ち馬や脚立は、気軽に利用できる機材の一つです。
しかし、足場としての安定性や耐久性には、不安要素が多いのも事実です。
すぐに使えるからこそ、危機意識も薄まりやすく、よそ見による転落、といったイージーミスも起こりやすくなります。
それが、重大な事故に繋がることも少なくありません。
また、立ち馬の上に、道具を置きながら作業したため、重量オーバーになり、立ち馬を破損し、転落事故が発生するといったケースもよく見受けられます。
ローリングタワーは、高さがありながら、固定式の足場と比べ、手すりが不足しています。
そもそも移動式なので、危険性が高く、安定性に不安要素があるなどのリスクがあります。
作業中に、ブレーキをかけずに、ローリングタワーを使用してしまう作業員も実際は多いと言います。そのため、ローリングタワーからの転落による人身事故も多く発生しています。
ローリングタワーを使用する際には、安全性や使用上の注意を、作業員同士でよく確認しておく必要があります。
脚立・立ち馬の固定
脚立による事故原因の多くは、姿勢が不安定になることにあります。
脚立での作業中にバランスを崩すと、姿勢を立て直すことができずに転落事故になってしまいます。
高所での移動が多い作業では、立ち馬を使うことで作業はより安定しますが、立ち馬には手すりがないという問題があります。
設置場所が水平でないこと、立ち馬の上に台を置いて作業することが事故の原因になることも少なくありません。事故防止のためには、手すり、支柱のロック、アウトリガーなど各メーカーが製作するオプションによって固定する方法があります。
転落事故を防ぐには、事故事例を安全教育の資料とするのが有効な手段といえます。
CADデータでローリングタワーの危険箇所を把握
脚立やローリングタワーの使用が必要な工事では、工事計画書や仕様書にCADデータを使うことが作業への理解を助けるのに効果的です。
安全教育でも、立ち馬やローリングタワーのCADデータを入れることで、安全帯の設置など安全対策を講じやすくなります。
ローリングタワーや作業員、車両のCADデータを加えて3D表示すれば、現場の状況を的確に表現することができ、危険箇所の把握も容易になるでしょう。