地質調査技士とは、地質調査の現場業務に従事する主任技術者の資格です。資格は「現場調査部門」・「現場技術・管理部門」・「土壌・地下水汚染部門」の3部門に区分されており、試験内容も異なります。「土壌・地下水汚染部門」については2021年度より休止されており、いつ再開されるかは未定です。
地質調査技士試験は年に1回実施されており、実務経験や学歴などの受験資格を満たすことで受験できます。地質調査技士試験の合格率は、33%~40%程度です。
この記事では、地質調査技士とはどのような資格なのか、地質調査技士になるにはどうすれば良いのか、地質調査技士試験の費用や日程、難易度、合格率について解説します。
地質調査技士とは
地質調査技士とは、地質調査の現場業務に従事する主任技術者の資格です。
一般社団法人全国地質調査業協会連合会が「地質調査技士資格検定試験制度」を発足、登録継続中の資格者は約13,000名となっています。
資格登録部門
地質調査技士は、ボーリングなどの機器操作を行う「現場調査部門」、地質調査の現場管理や物理探査や土質試験を行う「現場技術・管理部門」、土壌地下水汚染調査を含む地質の現場管理を行う「土壌・地下水汚染部門」の3部門に区分されています。地質調査技士試験も、3部門ごとに異なる問題で受験します。試験の合格率は、現場調査部門で40%、土壌・地下水汚染部門で35%です。
登録更新制度
地質調査技士資格の資格有効期間は、5年間です。登録更新するには、登録更新講習会を受講するか、継続教育記録CPD(1部門の場合125単位以上、2部門で175単位以上取得)を報告する必要があります。5年ごとの更新料は、全地連会員会社所属の場合は10,800円(税込)、それ以外の場合は16,200円(税込)です。
地質調査技士試験 その1
現場の地質調査によって、現場の地盤情報によってその場所の基礎地盤構成が分かり、どのような建設物の基礎を構築するかが分かります。その地盤の地質調査を行う技術者が、地質調査技士で、技士の技量を測る試験が、地質調査技士試験です。
「土壌・地下水汚染部門」の資格検定試験は、2021年度より当分の間休止されています。(2020年度までは従来通り実施)資格保有者向けの登録更新は、従来通り行えます。市場ニーズの変化によっては、再度試験が再開されるかもしれません。
〈各受験部門共通の技能・能力(役割)〉
・積算 ・調査計画 ・ボーリングマシン運転の基本動作
・現場の工程管理や安全管理 ・土質判定 ・柱状図、断面図作成
・報告書とりまとめ ・成果品の品質管理
・ボーリング調査の業務責任者としての役割
・ボーリング調査の業務責任者や現場管理者としての役割
・「ボーリング責任者」としての役割
各受験部門においては、上記の技能・能力のほかに、ボーリングマシン操作に係る特殊技能(現場調査部門)や解析・分析能力(現場技術・管理部門)、土壌地下水汚染に係る専門能力(土壌・地下水汚染部門)をはかる出題がされます。
受験資格
地質調査技士試験の受験資格は、部門ごとに異なります。
現場調査部門
1. ボーリング実務経験、5年(通算)以上の者。
2. 協会指定の指定学科卒業の者は、2年以上の実務経験者
現場技術・管理部門
1. 大学又は工業高等専門学校の土木工学科、建築学科、地質学科等地質調査に関連する学科を卒業し、実務経験3年以上の者
2. 大学又は工業高等専門学校の前項に掲げる学科以外の理工系学科を卒業し、実務経験5年以上の者
3. 実務経験8年以上の者
土壌・地下水汚染部門
1. 大学又は工業高等専門学校の土木工学科、建築学科、地質学科等地質調査に関連する学科及び化学(工学)等環境に関連する学科を卒業し、実務経験3年以上の者
2. 大学又は工業高等専門学校の前項に掲げる学科以外の理工系学科を卒業し、実務経験5年以上の者
3. 実務経験8年以上の者
試験日程・申し込み方法
地質調査技士試験は、年に1回、7月の第2土曜日に開催されています。願書受付は、4月上旬~5月上旬の1か月です。合格発表は、9月上旬になります。
2021年の試験日は、7月3日 (土)、願書受付は4月9日(金)~5月12日(水)でした。
試験地
札幌・仙台・新潟・東京・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・沖縄
受験料金・支払い方法
地質調査技士試験の受験料は、16,500円(税込)です。受験料は、願書を提出した地質調査業協会が指定する口座へ振込みます。(振込手数料は受験者側の負担)
合格後の登録には、登録料と5年ごとの登録更新料が必要です。
- 登録料:13,000円(税込)
- 登録更新料:10,800円(税込)※全地連会員会社所属の場合
- 登録更新料:16,200円(税込)※全地連会員会社所属以外の場合
地質調査技士試験 その2
試験内容
地質調査技士試験試験内容は、部門ごとに問題が異なります。
現場調査部門
現場調査部門の問題は、四肢択一の筆記試験80問、記述式の筆記試験2問、口頭試験の構成で行われます。
四肢択一の筆記試験80問は、必須問題60問と、土質分野20問か岩盤分野20問の何れかを選択して解答します。問題の内容は、Aが社会一般・建設行政・入札・契約制度、Bが地質・測量・土木・建築一般、Cが現場・専門技術、Dが調査技術の理解、Eが管理技法から出題されます。
記述式問題は、ボーリング作業管理・工程管理・安全管理・品質管理についての問題です。
口頭試験では、地質調査のためのボーリングに必要な知識や経験等と、実務経歴や経験を試問し、内容と態度などから合否を判定します。
・筆記試験
(四肢択一式問題:80問、
記述式問題:1問または2問)
・口頭試験
■学科試験
①社会一般、建設行政、入札・契約制度等の知識
②地質、測量、土木・建設一般等の知識
③現場・専門技術の知識
④調査技術の理解度
⑤管理技法
■記述式問題
ボーリング作業、工程・安全・品質の管理など
■口頭試験
実務経歴に基き経験、実務の技能的な知識
現場技術・管理部門
現場技術・管理部門の問題は、四肢択一の100問と記述式2問の問題です。四肢択一問題の内容は、Aが社会一般・建設行政・入札・契約制度、Bが地質・測量・土木・建築一般、Cが現場・専門技術、Dが調査技術の理解、Eが解析手法・設計・施工の適用、Fが管理技法から出題されます。
記述式問題は、2問出され2問とも解答します。内容は、倫理綱領の問題から1問と、地質調査技術の問題は選択制で、地質調査全般2問・土質と岩石試験技術1問・物理探査と検層技術1問のうちから1問を選んで解答します。
土壌・地下水汚染部門の問題は、四肢択一の100問と記述式2問の問題です。四肢択一問題の内容は、Aが社会一般・建設行政・入札・契約制度、Bが地質・測量・土木・建築一般、Cが現場・専門技術、Dが調査技術の理解、Eが管理技法から出題されます。
記述式問題は、倫理綱領の問題から1問と、土壌地下水汚染調査の計画や現場技術や修復から3問出され1問を解答する選択問題です。
・筆記試験
(四肢択一式問題:100問)
■学科試験
①社会一般、建設行政、入札・契約制度等の知識
②地質、測量、土木・建設一般等の知識
③現場・専門技術の知識
④調査技術の理解度
⑤解析手法、設計・施工への適用
⑥管理技法
■記述式問題
①倫理綱領に関する問題
②地質調査技術等に関する問題
土壌・地下水汚染部門
・筆記試験
(四肢択一式問題:100問)
■学科試験
①社会一般、建設行政、入札・契約制度等の知識
②地質、測量、土木・建設一般等の知識
③現場・専門技術の知識
④調査技術の理解度
⑤管理技法
■記述式問題
①倫理綱領に関する問題
②土壌・地下水汚染調査の計画や現場技術、修復技術に関する問題
地質調査技士試験 その3
試験免除・受講加点制度
地質調査技士試験試験は、ボーリングに関する機器等の操作を行う実務に関して2 年以上の実務経歴があり、下記の専門学校指定学科を卒業している場合には、検定試験が免除されます。合否の判断は、書類審査のみです。
- 札幌工科専門学校(建設システム学科ジオ(地質)エンジニアコース)
- 東北理工専門学校(調査設計科)
- 新潟工科専門学校(土木開発工学科環境地質コース)
- 国土建設学院(建設学部土木地質工学科)
- 中央工学校(土木工学科環境地学専攻)
地質調査技士試験試験では、下記の講習会を受講し、修了することで、最大5点加点されます。
- 各地区地質調査業協会が主催した検定試験の事前講習会
- 富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)主催の研修
- 全国建設研修センター(東京都小平市)が主催した地質調査研修
- 土壌・地下水汚染部門 自己学習用サイト
※富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)主催の研修
- ボーリング(地質調査)技術者の入職時教育
- サンプリング基本技術研修
- サウンディング基本技術研修
- 斜面防災のための調査・計測基本技術研修(斜面防災マスターコース)
- 地盤環境調査基本技術研修
合格基準
地質調査技士試験試験の合格判定は、一次判定および最終判定の2段階で行われます。
合格の目安は、現場調査部門で60%以上、現場技術・管理部門と土壌・地下水汚染部門では70%以上です。
合格率・難易度
地質調査技士試験は、年1回行われ、最近の合格率は33%~40%近くあります。合格率に変化がある理由は、地質調査技士は3部門に分かれ、試験も部門ごとに異なる問題で行われるためです。
2021年の合格者数と合格率は以下の通りです。
- 現場調査部門:合格者数151名 合格率39.3%
- 現場技術・管理部門:合格者数262名 合格率32.1%
- 土壌・地下水汚染部門:合格者数13名 合格率32.5%
地質調査技士試験の勉強法
過去問題集を繰り返し解く
地質調査技士試験の勉強法は、過去問を繰り返し解くことです。地質調査技士試験では、全国地質調査業協会連合会が出している受験の手引きに書いている範囲からの出題が多く、ある程度問題の幅は決まっています。過去10年分の過去問で出題されている内容を勉強することで、十分対応可能です。
現場調査部門では、口頭試験があるため、自身の考えを整理し信念を持っておく必要があります。信念があれば、試験官からどのような質問を受けても、信念をベースとして答えることができるため、試験官の受けもよいはずです。
テキストは購入すべき?
地質調査技士試験の過去問題集は書店では販売されていません。全国地質調査業協会連合会のホームページ上で、約15年分の過去問が公開されています。ただし、解答の解説が無いため、信頼できる参考書を探して、解答の理由を勉強する必要があります。同時に周辺の知識も覚えれば、地質調査技士試験の勉強法としては十分でしょう。
テキスト・問題集については、下記ページで紹介しています。