建築や土木の構造設計において、梁のたわみ計算や応力算定は重要な役割を果たします。とくに単純梁や片持ち梁における荷重条件の違いによって、求められる計算手法や結果が大きく変わるため、基本から丁寧に理解することが求められます。本ページでは、モーメント計算や回転力といった力学的視点に加え、実際の例題を通して実務に活かせる知識を身につけることができます。このページでは、梁のたわみ計算と単純梁の応力算定について解説しています。

梁のたわみ計算のポイント:梁の回転力、モーメント計算
材料の使用効率の悪い構造となる場合もある
材料の使用効率の悪い構造となる場合もあるので、注意してください。
軸力構造体は部材が均一に力に対抗するため、材料の使用効率のよい構造です。
しかし柱と梁は、構造の空間を産出するベース材であり直棒ですが、それぞれ機能が異なるため呼び名も違ってきます。
また梁の曲げモーメントに対抗して力を伝達する構造を、「曲げ構造体」といいます。
梁の曲げモーメントに対抗して力を伝達する曲げ構造体は、部材の上下面が大きな力で抵抗します。
そのため、構造物を支える構造が、軸力構造体であるか、曲げ構造体であるかは、構造形態とかかる力によって定まるのです。
回転に抵抗するため、逆向きの梁の回転力が発生する
部材内部にできる回転力を曲げモーメントといい、構造体を形成する基本部材は柱と梁です。
柱のように軸力で力を伝えるものを軸力構造体とよび、この回転に抵抗するため逆向きの梁の回転力が発生します。
梁は水平材で幅や奥行きがあり、反対向きの大きな力、上面が押し合う力、下面が引っ張り合うカが互いに出現します。
横方向に建物の重量を伝達するため、力と支持力の芯線が一致せず、てこの法則で旋回する力が生まれます。
垂直方向に建物の重量を維持すると均一に圧縮する力ができ、力の芯線と支持力の芯線は同じ場所におさまります。
片持ち梁の計算とモーメントの計算の仕方
では次に片持ち梁とモーメントの計算の仕方について、解説していきます。
まず片持ち梁とは、一端が固定され他端が固定されていない梁のことです。
例えば、木造家屋の庇や鉄筋コンクリート構造物の縦や壁面から突き出たバルコニーなどが該当します。
片持ち梁の計算は、複雑な構造物の変形や応力を理解するために非常に重要です。
また片持ち梁の曲げモーメントを計算する時は、曲げモーメントとせん断力を計算してどのように変形するかを考える必要があります。
梁やスラブの断面を計算するのに非常に重要なものになるので、基本を抑えてしっかり勉強しましょう。
また、実際の構造力学では非常に複雑な部材が多くなるので、最初は単純な形状で計算していくのがおすすめです。
基本的には曲げモーメント図とせん断力図を描くことが、主な勉強方法になります。
徐々に複雑な構造物に適用していけば、無理なく勉強を続けていくことができますよ。
せん断力、曲げモーメント図には符号の決まりがある
せん断力図及び曲げモーメント図に対する正負の符号には、決まりがあります。
例えば梁を任意断面で切断したケースで考えてみましょう。
断面に生じたせん断力が作用している部分で、時計回りに回る時のせん断力をQ正とします。
また反時計回りに回転させる場合は負とします。
集中荷重を受ける片持ち梁の場合は、集中荷重を受ける片持ち梁ABの任意断面を切断した時に、片持ち梁を左側と右側に分割します。
力の割合を考えた時に断面内の応力の合計が、集中荷重と釣り合わなければいけません。
ちなみに集中荷重は下向きなので応力の向きは上向きとなり、断面位置の右側は左側の応力とは逆向きの下向きとなります。
左側部分を反時計回りに回転させると負になる
力の釣り合いを考えると外力は荷重P以外に作用していないので、切断部のモーメントを考えると右回りになります。
切断面の右側のモーメントを同様に考えると先程のモーメントと一致します。
切断面に生じる一対のモーメントを曲げモーメントといい、曲げモーメントは梁の下側に引っ張られる用に作用するものを正と約束します。
そして梁の上側が圧縮されるように作用するものを負とします。
この時集中荷重Pによる片持ち梁の変化は上面が凸に変化し、また曲げモーメント図は部材が凸になる上側に表示されます。
集中荷重による曲げモーメント図は直線変化して、せん断力は一定値Pとなります。
梁のたわみ計算のポイント:片持ち梁の等分布荷重と集中荷重
せん断力図と曲げモーメント図の表現には注意をしよう
せん断力が正の時は梁の下側に、負の時は梁の上側に書く
・曲げモーメント図
曲げモーメントが正の時は梁の下側に書き、負の時は上側に書く
この表現は人によって多少異なることもありますので、図中に記号を一緒に書いておくのがおすすめです。
曲げモーメントやせん断応力は、集中荷重の作用する場所や方向によって、曲げモーメントやせん断応力の方向も変化すると覚えておきましょう
等分布荷重が作用する片持ち梁にも同様な計算が必要
コンクリートで建てられた構造物のバルコニーなどは集中荷重だけで計算することはできません。
なぜならバルコニーは、その自重自体でモーメントやせん断応力が作用しているからです。
この時、等分布荷重はバルコニーつまり片持ち梁の全区間で凸に変形します。
また集中荷重のときと違い、等分布荷重による曲げモーメントは二次曲線となります。
曲げモーメントの最大値は、片持はりに作用する全ての荷重がその片持ち梁の中央で集中荷重として作用した時と同じです。
せん断応力に関しては直線変化すると同時に、最大せん断応力は垂直反力に等しくなります。
では、水圧の作用する片持ち梁に関するモーメントについて考えてみましょう。
この時曲げモーメント図は三次曲線となると同時に、せん断応力は二次曲線となります。
このように単純な片持はりでも集中荷重の場合、等分布荷重と変化するだけで計算や考え方には大きな変化が生じます。
同じく曲げモーメントやせん断応力も大きな変化が生じるので、細かい正確な計算が求められます。
材料の使用効率の悪い構造となる場合もある
材料の使用効率の悪い構造となる場合もあるので、注意してください。
軸力構造体は、部材が均一に力に対抗するため、材料の使用効率のよい構造です。
しかし柱と梁は構造の空間を産出するベース材であり直棒ですが、それぞれ機能が異なるため呼び名も違ってきます。
また梁の曲げモーメントに対抗して力を伝達する構造を「曲げ構造体」といいます。
梁の曲げモーメントに対抗して力を伝達する「曲げ構造体」は、部材の上下面が大きな力で抵抗します。
そのため、構造物を支える構造が、軸力構造体であるか、曲げ構造体であるかは、構造形態とかかる力によって定まります。
先端に荷重が集中する場合は力の釣り合いから考える
先端に荷重が集中する場合の片持ち梁について、どのように考えていけばよいか解説していきます。
【建物のバルコニーを例とした場合】
まずは力の釣り合いを求めることが重要なので以下を設定します。
・バルコニーの先端を自由端、他方を固定端と、先端に応力が集中すると考える
・自由端A、固定端Bとする片持ち梁でA点を原点とする座標を設定
次にAから任意の距離で梁を切断して、この断面に生じるせん断力および曲げモーメントを仮定します。
※あくまでも仮定ですが、応力の方向は適切にすることが重要です。
力は水平方向、垂直方向、モーメントの釣り合いの3種類を考えましょう。
そして任意の点での力の釣り合いを考えると、せん断力は荷重Pと同じ値になります。
ここでの荷重は下向きなので、せん断力はそれに対する力が上向きに変わりプラス符号となります。
このように応力の方向を仮定できるようになると、計算が非常に楽にできます。
同様にモーメントを考えると荷重は反時計回りの方向に作用するのでマイナスとなりますが、モーメントは右回りとなるのでプラス符号になります。
これらによってせん断力とモーメントの方向を判断できますが、考え方によっては方向と符号が逆な状況もありえます。
なので片持ち梁の計算をするためには、まず部材にどのような力がかかるのか正確に判断する必要がありますね。
またこれら情報からせん断力図、モーメント図を書くこともできます。
しかし一から自分で計算するのは大変なので、基本的にはインターネットで公開されているフリーソフトを使用するのがおすすめです。
単純梁の応力算定の解き方と4つの例題
単純梁の計算の解き方
はね出し梁・連続梁・片持ち梁・固定梁計算の値を導きだすためにも、基本的な単純梁の計算のやり方を覚えておきましょう。
ここで指す単純梁とは、両端ピンで支持点の片方がピン、他端がローラーの支持条件を持つ梁のことです。
単純梁は静定構造であるため、反力および応力は、力の釣り合い条件から求めることができます。
単純梁の解き方は以下3つのステップで行いましょう。
単純梁の応力算定の際にも、梁の変形について意識するといいですよ。
① 支点反力の算定
力のつり合い条件より
ΣX=0
ΣY=0
ΣM=0
② 梁応力の算定
任意点応力を求める一般式を作る
・曲げモーメント
・せん断力
・軸方向力
③ 応力図作成
・曲げモーメント図(M図)
・せん断力図(Q図)
・軸方向力図(N図)
ではこの3つのステップを元に、単純梁の応力算定の例題をみていきます。
連続梁の計算、片持ち梁の計算、固定梁の計算、はね出し梁の計算の基本となるので、しっかりと理解するようにしましょう。
単純梁の応力算定の例題1
では具体的な単純梁の計算を例題として紹介していきます。
まずは梁中央C点に集中荷重Pを受ける単純梁の応力算定です。
支点Aについて曲げモーメントの釣り合いを求めます。
集中荷重PはA点から見ると時計回りとなるため+P×l/2とし、支点反力RBはA点から見ると反時計回りとなるため-RB×lとなります。ΣM=0より
P×l/2-RB×l=0
RB=P/2
ここで、RB=P/2を式①へ代入します。
RA=P-RB=P-P/2=P/2
手順①
【力の釣り合いより支点反力を求める】
集中荷重Pは下向きで-Pとし、支点反力RA、RBは上向きと仮定します。
ΣX=0よりHA=0
ΣY=0より-P+RA+RB=0・・・①
支点Aについて曲げモーメントの釣り合いを求めます。
集中荷重PはA点から見ると時計回りとなるため+P×l/2とし、支点反力RBはA点から見ると反時計回りとなるため-RB×lとなります。
ΣM=0より
P×l/2-RB×l=0
RB=P/2
ここで、RB=P/2を式①へ代入します。
RA=P-RB=P-P/2=P/2
手順②
【曲げモーメントとせん断力を求める】
AC間のA点からx1離れた任意点曲げモーメントMxは、Mx=R×x1=P×x1/2となります。
ここで、C点ではx1=l/2であることより、Mc=RA×l/2=P×l/4となります。
せん断力は支点の距離に関係なく一定であり、Qx=RA=P/2となります。
BC間についてもAC間と同じようにして曲げモーメントとせん断力を求めます。
BC間のB点からX2離れた任意点曲げモーメントMxは、Mx=-RB×x2=-P×x2/2となります。
ここで、C点ではx2=l/2であることより、Mc=-RB×l/2=-P×l/4となります。
Mcがマイナスであることより、x点では反力により反時計回りの曲げモーメントが作用していることがわかります。
また、変形は下に凸となります。
・梁の中央に集中荷重を受ける単純梁の変形は下に凸となる。
・最大曲げモーメントの発生箇所は梁のスパン中央となる。
・せん断力分布はAC間がP/2、CB間は-P/2でそれぞれ一定値となる。また集中荷重Pの作用する点Cでのせん断力の絶対値の和はPとなる。
・支持点Bがローラー支点の場合、水平方向の反力は発生せず、その場合支持点Aにも水平反力は発生しないため、同時に梁にも軸力は発生しない。
単純梁の応力算定の例題2
次の例題として、梁全体に等分布荷重wを受ける単純梁の応力算定を行います。
手順①
【力の釣り合いより支点反力を求める】
梁に作用する当分布荷重の合計をWとすると、W=w×lとなります。また、支点反力RA、RBは上向きと仮定します。
ΣX=0よりHA=0
ΣY=0より-wl+RA+RB=0・・・①
支持点A周りの曲げモーメントの釣り合いより、等分布荷重wの合力wlは、A点からみると時計回りでプラスとなるため、+wl/2となります。
一方反力RBはA点から見ると反時計回りでマイナスとなるため、-RB×lとなります。
ΣMA=0より
wl×l/2-RB×l=0
RB=wl/2
ここで、RB=wl/2を式①へ代入します。
RA=wl-wl/2=wl/2
手順②
【曲げモーメントとせん断力を求める】
A点からx離れた任意点の曲げモーメントMxは
Mx=RA×x-wx×x/2=wx(l-x)/2となります。
梁のスパン中央をC点とすると、x=l/2となるため、Mc=w×l/2×l/2×1/2=wl2/8となります。
A点からx離れた任意点のせん断力Qxは、Qx=RA-wx=wl/2-wx=w(l/2-x)となります。
この式より、支持点Aではx=0となり、QA=RA=wl/2
スパン中央点Cではx=l/2となりQc=0
支持点Bではx=lとなり、QB=-wl/2
・当分布荷重の作用する単純梁の変形は下に凸となる。
・最大曲げモーメントはスパン中央でwl2/8で、二次曲線となる。
・せん断力は支持点A、Bで支点反力と同値で最大値となり、またせん断力分布は直線でスパン中央点Cで0となる。
・支持点Bがローラー支点の場合、水平方向の反力は発生せず、支持点Aにも水平反力は発生しない。同時に梁にも軸力は発生しない。
単純梁の応力算定の例題3
次の例題として、スパンの1/3の点2ヶ所にそれぞれ集中荷重Pが作用する単純梁の応力算定を行います。
手順①
【力の釣り合いより支点反力を求める】
梁に作用する荷重の合計は2Pとなります。また、支点反力RA、RBは上向きと仮定します。
ΣX=0よりHA=0
ΣY=0より
RA+RB-2P=0
RA+RB=2P
支持点A周りの曲げモーメントの釣り合いを考えます。集中荷重PはA点から見ると時計回りとなるためプラスとなり、+P×(l/3+2l/3)となります。一方、反力RBはA点から見ると反時計回りとなるためマイナスとなり、-RB×lとなります。
ΣMA=0より
P×(l/3+2l/3)-RB×l=0
RB=P
手順②
【曲げモーメントとせん断力を求める】
荷重点をCとすると、A点からx離れた点の任意曲げモーメントMxは、Mx=RA×x=P×xとなります。
荷重点Cはx=l/3となるため、Mc=Pl/3となります。
A点からx離れた点の任意せん断力Qxは、Qx=RA=Pとなります。
もう一方の荷重点をDとすると、
CD間のA点からx離れた点の任意曲げモーメントMxは、Mx=RA×x-P(x-l/3)=Px-Px+Pl/3=Pl/3となります。
CD間のA点からx離れた点の任意せん断力Qxは、Qx=RA-P=P-P=0となります。
なお、DB間はAB間と同様に求めることができます。
・2点集中荷重が作用する単純梁の変形は下に凸となる。
・曲げモーメント分布は、CD間では一定値となり、AC間、DB間では直線分布となる。
・せん断力は支持点A、Bで最大値となり、支点反力と同値となる。また、AC間、DB間では一定値となり、中央部CD間では曲げモーメントが一定であるためせん断力は0となる。
・支持点Bがローラー支点の場合、水平方向の反力は発生せず、支持点Aにも水平反力は発生しないので、梁にも軸力は発生しない。
・梁のスパン中央点で最大たわみとなる。
単純梁の応力算定の例題4
次の例題として、支持点Bに曲げモーメントPaが作用する単純梁の応力算定を行います。
手順①
【力の釣り合いより支点反力を求める】
支点反力RAを下向き、RBを上向きと仮定すると、
ΣX=0よりHA=0
ΣY=0より-RA+RB=0・・・①
支持点Aの曲げモーメントは0となるため、A点周りの曲げモーメントを見ると
ΣMA=0より
-RB×l+m=0
RB=m/l
RB=m/lを①式に代入します。
RA=m/l
支持点Bに作用する曲げモーメントmはA点から見ると時計回りとなるため、符号はプラスとなります。
手順②
【曲げモーメントとせん断力を求める】
A点からx離れた点の任意曲げモーメントMxはMx=RA×x=mx/lとなります。
支持点Bではx=lとなるため、MB=mとなります。
A点からx離れた点の任意せん断QxはQx=-RA=-m/lとなります。
・支持点Bに時計回りの曲げモーメント荷重が作用する単純梁の変形は上に凸となる。
・曲げモーメント分布は支持点AでMA=0、支持点BでMB=mの直線分布となる。
・曲げモーメントの変化が一定であるため、せん断力も一定値となる。
・支持点Aの回転角は反時計回り、支持点Bの回転角は時計回りとなる。
・曲げモーメントを受ける支持点Bの回転角は支持点Aよりも大きくなる。
・支持点Bがローラー支点の場合、水平方向の反力は発生せず、支持点Aにも水平反力は発生しないので、梁にも軸力は発生しない。
計算の例題は以上です。
前述の通り、連続梁の計算、片持ち梁の計算、固定梁の計算、はね出し梁の計算は、単純梁の応力算定を基本として行うものなので、しっかりと理解するようにしましょう。
しかし単純梁の計算自体は単純ですが、応用が入ると途端に難しく感じてしまうかもしれません。
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まとめ
単純梁、連続梁、片持はり、固定梁、はね出し梁の計算は、自分でもExcelを使って値を出すことはできます。しかし、手作業では時間がかかりミスする可能性も非常に高いです。
正確な値を出すには複雑な計算も必要となるので、インターネットで公開されているフリーソフトなどやアプリを利用するのがおすすめです。
- 単純梁、連続梁、片持はり、固定梁、はね出し梁の計算ができるか?
- せん断応力の計算、曲げモーメントの計算ができるか?
- たわみ計算、座屈計算、強度計算はできるか?
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