工程表とは、工事や製造などの作業工程を整理・管理するための重要なツールです。
作業の順序や所要時間を明確にし、スムーズな進行をサポートします。
ガントチャートやバーチャート、ネットワーク工程表など、用途に応じたさまざまな形式があります。
工程表の作り方を工夫することで、業務の効率化やトラブルの防止にもつながります。
このページでは、工程表の種類や役割、作成方法について解説しています。

工程表とは
工程表とは、工事の進捗状況を管理するため工事計画を図示化した表です。
土木工事や建築工事における工程管理は、工期内の工事を効率的にかつ、計画的に進行させるために行われます。
また、工程管理・進捗管理に必要となる実施工程表・作業工程表などの工事工程表は、設計図書をもとに計画されています。
そのため、土木工事や建築工事における工事工程表は非常に重要なウエイトを締めていると言えるでしょう。
工程表の役割
工事工程表は工程管理および進捗管理において、どの程度の進捗率で工事が進んでいるかという指針になります。
また工事工程表は、土木工事や建築工事の進捗率によって精度や目的が変わってきます。
そのため、一度作成された工事工程表・作業工程表・実施工程表などについても、プロジェクトの各段階によって中身がより濃いものに変わってくるのです。
さらには工事工程表による工事監理および進捗管理は、進捗率を把握しながら各工程が予定通り進んでいるか、あるいは工期が厳しい場合はどの箇所に人や資材を投入するかなどを把握および計画するためにも重要なものとなります。
さまざまな工程表を効率よく作成するには
土木工事や建築工事の工事工程表はまず、基本方針を策定することから始めます。
基本方針としては、どの施工法や工法を取り入れるかなどです。
そして、作業リストを洗い出して作業手順を並べます。さらには、作業ごとに工数を計算したりしながら、必要な人員や建機などを算出していきます。
作業手順通りに作業を進めていった場合、作業日数がどの程度になるか、工期以内に収まるかを考えながら工事工程表・実施工程表・作業工程表を作成していきます。
工程管理および進捗管理に置いては、無理のない工事工程表・実施工程表・作業工程表を作成することが大切です。
さらには週間工程表・月間工程表・ゼロ工程表といった、進捗状況など工程をより細分化および分かりやすくした工程表を取り入れるのもおすすめです。
週間工程表・月間工程表・ゼロ工程表は、それぞれの工種ごとに作成すると、より細分化された工程表が作成できます。
また、週間工程表・月間工程表・ゼロ工程表により、作業員は自分の役割がより明確化するはずです。
ただし、週間工程表・月間工程表・ゼロ工程表を作成すると工程表の種類や分類が複雑化するため、工程表自体の管理が重要になります。
そのため、適切な分量の週間工程表・月間工程表・ゼロ工程表を作成するのがおすすめです。
おすすめなのは、週間工程表・月間工程表・ゼロ工程表を電子データとして取り扱うことです。
excel(エクセル)テンプレートを使用し、電子データとして細かい工程表を作成します。各作業員はexcel(エクセル)テンプレートで作成された工程表を確認しに行けば、すぐに工程が確認できるというわけです。
工程管理とは
土木工事、建築工事の現場には工程管理が欠かせません。
毎日の現場を動かすのに必要不可欠なのが、工程管理表です。
工期を守るためのツールとして、最小の費用で最大の生産効率を実現するためのツールとして利用されます。
現場を動かす要となる工程管理表は、日々の修正も頻繁にあることから、使い勝手のいいソフトウェア(アプリ)で作成したいものです。
工程管理は、PDCAの流れで考えましょう。
工程管理は、一般的に「計画→実施→検討→処置」といった手順で行います。
この流れは、PDCAサイクルとも言われます。
1. P(計画)
作業者、資材、工法、施工機械などを決め、日程計画や作業手順を考えます。
クライアントの定めた工期を守るべく、作業の過度な集中や手待ち時間が生じないような計画とします。工事期間に合わせ、週間工程表や月間工程表、ゼロ工程表などを活用しましょう。また、複雑な作業手順をともなうものは、ネットワーク工程表で手順を把握しておきます。
2. D(実施)
計画に従って、作業を行います。
必要なものを揃え、日程計画や作業手順に沿って作業を進めます。
実施する上で、進捗が重要となります。進捗率はネットワーク工程表や出来高曲線を用いて確認します。
3. C(検討)
工程の進捗から、計画と実績を比べます。出来高曲線を活用することをおすすめします。
両者の差を縮めることが難しい場合は、処置段階で工程を再検討します。
4. A(処置)
作業改善を図っても計画通りに進まない場合、計画を見直し、調整を行います。
工程表も作り変えることになります。
実施工程が工程計画よりも少し上回るように管理する
工程管理については、実施工程表が工程計画表よりも、少し上回るように管理することが理想的といわれます。
部分工事の終了日が完成期日を達成できないケースが判明したら、部分工事を相互に調整して、全工事が工期内に完了できるようにします。各工種別の工事項目の適切な施工期間を決めます。
工程計画表と実施工程表が異なる原因が分かった際は、工程計画からいち早く原因を取り除く、工程計画の一部を修正するなどの対策を講じます。工程計画を作成する際は、その手順を検討します。
工種分類をもとに施工手順を決める
工種分類をもとに、基本管理項目、工事項目について施工手順を決めます。
工程計画と実施工程の相違は、労務・機械・資材・作業日数など、全ての方向から検討する必要があります。いつも工程の進行状況を全作業員に周知徹底させて、全作業員に作業能率を高めるような努力を要請することが大切です。
全工事を工期内に完成させるため、工種別工程を相互で調整します。各種工程表を作成します。
全工期をみて労務、資材、機械の重要度を均一にして、極端に集中している箇所、待ち時間がないように工程を調整します。
工事工程表の種類
工事工程表は段階的にさまざまな種類があります。
一般的には、概略工程表(企画段階)、標準工程表(設計段階)、契約工程表(見積り・契約段階)、実施工程表(施工準備段階)と大きく4段階の工程表に分かれます。
概略工程表は、土木工事や建築工事が行われる際に、おおよその費用と工期を表しているものです。
概略工程表では、工事を完了するまでに何ヶ月程度必要かというのが求められるのです。
基本設計が完了した後に、工期を算出した工程表が標準工程表となります。
さらに、契約時に提出する契約工程表、実際に工事を進めていくにあたり工程管理・進捗管理を行う実施工程表が作成されていきます。
工程表の種類
代表的な工程表は以下の通りです。
- ガントチャート工程表
- バーチャート工程表
- 出来高曲線工程表
- ネットワーク工程表
- ゼロ工程表
ガントチャート工程表
ガントチャート工程表は、各作業に対する完了時を100%とし、進捗率を縦軸にとり示しています。
ガントチャートで作成された工事工程表・実施工程表・作業工程表および週間工程表・月間工程表は、作業手順や作業に必要な日数および工期に影響する作業を判断することはできません。
一方でガントチャートは、作業進捗率の度合いを判断するのには向いています。
また図面の作成が簡単なのも特徴の一つで、これがガントチャートが工事工程表・実施工程表・作業工程表および週間工程表・月間工程表などの使用に人気がある理由の一つです。
バーチャート工程表
バーチャート工程表は、縦軸に工事種別など工事分類や作業分類を記述、横軸に日程をとり、各工事や作業を実施する予定日をバー状で記入していく工事工程表です。
バーチャートは、作業手順の把握や進捗率に関する情報には曖昧な部分が多いのですが、作業に必要な日数を把握するのには向いています。
一方でバーチャートは、工期にどの作業が影響するかという点はつかみにくい特徴があります。
バーチャートも図面の作成は簡単なため、工程管理や進捗管理を表す工事工程表・実施工程表・作業工程表および週間工程表・月間工程表の作成では人気があります。
出来高曲線工程表
出来高曲線工程表は、縦軸に工事の出来高および施工量の累計を記述します。
横軸は工期の時間的経過を示します。
出来高曲線とそれぞれの軸を比較することにより、工程の計画修正や実施工程の管理などに活用することができます。
また、工程に対する予定と実施を比較対照することで、工程管理を適切に行うことができます。
出来高曲線は、作業手順や作業日数、工期に影響を及ぼす作業については工程表から判断することができません。
一方で、進捗率の度合いを確認するのには向いている工事工程表です。
出来高曲線を作成するのはやや困難なので、先の工程表に比べると人気はありません。慣れが必要にもなる部分だと言えるでしょう。
ネットワーク工程表
ネットワーク工程表は、矢印と丸印で表される工程表です。
各作業について順序や関係性が明確に理解することができます。
また、ネットワーク工程表は作業の遅れが工期に対してどういった影響があるか、1つの作業単位から把握することが可能で、計画変更にも対処できるという特徴があります。
さらに、ネットワーク工程表は工事のどの作業が懸念事項になるかを把握できるので、対象の工事に対する重点的な工程管理や進捗管理を行うことが可能となります。
このようにネットワーク工程表は、作業手順や必要な日数、進捗率、工期に影響する作業などを把握するのには優れているのですが、その一方で作成方法が非常に複雑です。
そのため、ネットワーク工程表を取り入れる場合は、経験と知識が必要となる場合がほとんどです。
なお、ネットワーク工程表には作業を実線で結ぶ「アロー型」と、作業を丸線で結ぶ「サークル型」が存在します。
アロー型とサークル型、どちらが主流かと比較するとアロー型が主流でしょうか。
工程管理や進捗管理などが出題される施工管理技士の資格試験などでは、アロー型のほうが出題が多いとされています。
そのため、現場でもアロー型が取り入れられることは少なくないのです。そのため、まずはアロー型の書き方や読み取り方を覚えておくのがおすすめです。
<参考記事>
ネットワーク工程表をエクセルで作成、納期管理も他にも活用できた
ゼロ工程表
ゼロ工程表は簡単に言えば時間軸のない工程表です。
土木工事や建築工事で例えると、土砂搬送やコンクリート流し込みなどの作業はゼロ工程表には記載されますが、祝日や作業が休みの日はゼロ工程表には記載されません。
あくまでも土木工事や建築工事の作業が行われている日だけを表すのがゼロ工程表なのです。
そのため、ゼロ工程表を用いて実施工程表や作業工程表ならびに週間工程表、月間工程表などを作成すると、作業工程のみが理解できるので、各作業員は自分の分担する作業工程が把握しやすくなります。
一方でゼロ工程表は、全体的な工程管理や進捗管理を行う実施工程表や作業工程表ならびに週間工程表、月間工程表の場合は、あまり使用されません。それは、工事全体の進捗率がわかりにくいからです。
工程表を作成するメリット
工程表を作成するメリットは以下の通りです。
- 先の工程が予測しやすくなり、進捗率が進んでいるメンバーが遅れを取ったメンバーの作業をカバーすることが可能になる。
- 工程管理でバッファを把握することで、バッファの消費状況がわかる。
- 工程の問題点がその場で明確になり、予防や再発防止に努めることができる。
- 工程を複数の人で見ることで、問題点に気づける可能性が高くなる。
- 出来高曲線やネットワーク工程表を使ってクラウド上でリアルタイムでの進捗管理ができ、顧客からの進捗状況に関する問い合わせに対して、正確な進捗率を迅速な回答できる。
- ネットワーク工程表で、工期を守るためのクリティカルパスの検討が可能になる。
工程表は1種類ではない
実際の建設工事では、数日程度で完了する小さな工程から、何ヶ月もかかるような大きな工程まで混在しています。
そのため、1つの工程表で1週間分を対象とした方が分かりやすい作業内容と、半年や1年といった長期間を見渡せる工程表の方が合っている作業内容とがあります。
1種類の工程表で全てを管理しようとすると効率が悪く、わかりにくいので、期間別の工程表を作成すると工程管理や進捗管理がしやすいです。
短期間で終わる工程に関しては1週間や2週間の工程表を、そして、月間工程表や3ヶ月工程表なども作成することをおすすめします。
さらに、着工から完成までの全部の期間を含めている全体工程表も作成しましょう。
全体や長期間の工程表では、1つの工程の終わりの部分に、次に着手すべき工程などを矢印で記載するとさらに分かりやすくなります。
工程表の作り方次第で業務効率にも差が出る
工事全体の進捗率と、各工程の進捗率の両方を管理できるように工程表を作りましょう。
このダウンロードサイトのリンク集から手に入るソフトウェアにはガントチャートやバーチャート、ネットワーク工程表、出来高曲線などテンプレートがたくさんあります。
テンプレートを元に、ご自分の現場で使いやすいようにシステムをカスタマイズするとさらに便利です。
エクセルで作成した工事工程表をクラウドで共有すれば、パソコンだけでなく、タブレット端末やスマートフォンからのアクセスも可能です。
そのため、現場で工程管理や進捗管理を行い、直接工事工程表を確認したり、修正したりすることが可能です。
現場や事務所のネットワーク環境やOA機器環境、またクライアントや協力会社との情報共有方法などを総合的に判断し、使い勝手の良いツールを選んでください。比較ランキングサイトなどを参考に選ぶとよいでしょう。