RCスラブ設計の基本と計算手順を理解するための実務的アプローチ

20.6 - RCスラブ設計の基本と計算手順を理解するための実務的アプローチ 構造計算 ソフト

RCスラブの設計は、建築構造物の安全性と快適性を確保するうえで非常に重要な工程です。設計では、曲げモーメントの算出や断面の適切な設定、たわみの抑制など、さまざまな要素を考慮する必要があります。また、施工に関する知識も併せて持っておくことで、設計の実効性が高まります。このページでは、RCスラブの構造計算や設計手順について解説しています。

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スラブ構造計算・耐荷重計算のフリーソフト・エクセルテンプレート
このページでは、スラブ構造計算・耐荷重計算のフリーソフト・エクセルテンプレートをご紹介します。 固定スラブの構造計算 二次設計による基礎スラブの断面算定 基礎スラブの捩れモーメントによるせん断応力度の検討 鉄筋コンクリート部材・スラブの断面...

RCスラブの設計と構造計算

RCスラブの設計と構造計算は、建築物の安全性、耐久性、快適性を左右する非常に重要なプロセスです。基準に基づいた適切な設計を行うことで、建築物全体の品質を高めることができます。また、設計プロセスにおいては、理論的な計算だけでなく、現場の状況や使用目的を踏まえた柔軟なアプローチも求められます。これにより、より安全で効率的な建築物の実現が可能となります。

スラブとは

スラブとは、一般的に「石などの四角くて幅の広い厚板」を指します。建築分野では、鉄筋コンクリート(RC)で作られた厚板、つまりRCスラブと呼ばれます。RCスラブは主に床板として使用され、その設計は建築物の安全性や耐久性に直結するため、非常に重要な役割を果たします。

RCスラブ面積の設計基準

RCスラブの設計においては、その面積を25平方メートル以内に抑えることが推奨されています。これは日本建築学会の「RC構造設計基準2010」に基づくもので、床スラブの内法面積が25平方メートルを超える場合、たわみやひび割れ、振動などの問題が生じやすくなるためです。この基準を守ることで、不具合のリスクを低減できますが、現場の設計ではしばしば25平方メートルを超えることもあるため、あくまで目安として捉えるのが良いでしょう。

スラブの厚さに関する考慮点

一般的な住宅設計において、各階のスラブ厚は150mm〜180mm程度で設計されることが多いです。また、地下ピットスラブなど特定の用途に応じては、200mm以上の厚さが求められることもあります。スラブの厚さは、スラブ全体の構造性能に大きく影響を与えるため、適切な設計が求められます。

スラブの板厚制限と梁の役割

スラブ設計には、板厚制限という重要なルールがあります。一般に、スラブが大きくなるほど、必要板厚も厚くなります。このため、スラブを適切に区切るための梁設計が重要となります。適宜梁を配置することで、必要以上にスラブを厚くすることなく、構造的な安定を保つことが可能です。最低板厚は計算式による値とし、少なくとも80mm以上とする必要があります。この基準を守ることで、安全性を確保しながらも効率的な設計が実現します。

スラブの設計プロセス

ここからは、実際のスラブ設計について具体的に見ていきます。スラブの設計は、その支持方法によって異なります。一般的に「スラブ」と言われる場合、四辺を梁で囲まれた「四辺固定版」を指します。この形式のスラブ設計は、他の支持方法に比べて安定性と耐久性に優れています。

四辺固定版スラブの設計

四辺固定版スラブの設計は、梁によって周囲が固定されているため、荷重分散が効率的に行われる特性があります。この特性を最大限に活かすためには、スラブの厚さ、面積、そして梁の配置を最適化する必要があります。具体的な計算方法や設計プロセスは、エンジニアリングの知識と経験が重要となりますが、基本的な流れとして以下のステップが挙げられます。

1. 荷重の調査では、スラブにかかる荷重(恒久荷重、可動荷重を含む)を正確に把握します。
2. 材料の選定では、使用するコンクリートおよび鉄筋の種類や強度を選定します。
3. スラブ厚の計算では、荷重と材料強度に基づいて、必要なスラブ厚を計算します。
4. 梁の配置と設計については、最適な梁配置を設計し、スラブと梁の連結部分の構造を確認します。

スラブの曲げモーメント計算手順

構造エンジニアリングにおいて、スラブの曲げモーメントの計算は重要な工程の一つです。ここでは、許容曲げモーメントの算出から設計応力の算定方法について、具体的な手順を詳述します。

スラブの曲げモーメントの計算は、構造物の設計において非常に重要なプロセスです。この計算を通じて、スラブにかかる荷重や応力を正確に把握し、安全かつ経済的な設計を行うことが求められます。エンジニアリングの視点から、各ステップを丁寧に実行することで、信頼性の高い構造物を提供することができるでしょう。

許容曲げモーメントの算出

まず、配筋とスラブの有効厚(dt)が確定した段階で、許容曲げモーメント(Ma)を算出します。
atは鉄筋断面積、ftは鉄筋の許容引張応力、jは内部モーメントアームに対応する係数で表します。これらのパラメータが正確に設定されることで、スラブが期待する荷重を安全に支えることができるかどうかを判断できます。

設計応力の算出

次に、設計応力を計算します。設計応力は、スラブの各部位における応力分布を理解するために不可欠です。特に重要なのが、スラブの四辺の固定およびそれぞれの位置による応力の違いです。

具体的には、以下の順序で応力が大きくなります:
 1. 短辺の端部
 2. 短辺の中央部
 3. 長辺の端部
 4. 長辺の中央部

各応力点は、応力係数に基づいて計算され、これによりスラブ全体の応力分布が明らかになります。応力図を描くことで、さらに視覚的に理解しやすくなります。

負曲げモーメントと正曲げモーメント

スラブにおける曲げモーメントには、負曲げモーメントと正曲げモーメントの二種類が存在します。負曲げモーメントはスラブの上部に発生するものであり、これが生じると部材が上向きに反ります。一方、正曲げモーメントはスラブの下部に生じ、部材が下向きに反る原因となります。

実際の計算プロセスでは、四辺固定のスラブの応力図を参考にすることで、どの部分にどれだけのモーメントが生じるかを把握できます。これにより、適切な補強や設計変更を加えることができ、安全性と効率性を兼ね備えた構造設計が可能となります。

スラブの断面算定と板厚確認

スラブの断面算定と板厚確認の両方を行った結果、スラブの設計が基準を満たしていることが確認できました。断面算定においては、短辺および長辺ともに安全性が確認され、板厚制限値についても問題がないことがわかりました。これにより、スラブは設計通りの性能を発揮できると判断できます。まとめると、初期の設計条件を基に行った算定はすべてクリアし、安全性の確認が取れたことを報告します。

スラブの断面算定

まず、スラブの断面算定について詳しく解説します。断面算定とは、スラブの強度を確認するための計算プロセスを指します。このプロセスではスラブが実際の設計荷重に対して十分な耐力を持っているかどうかを評価します。具体的には、モーメント(M)と許容モーメント(Ma)を比較することで構造の安全性を検証します。

条件の確認

計算を始めるにあたって、すべての条件を確認します。材料の特性、荷重条件、スラブの寸法などがこれに含まれます。これらの条件が揃ったら、本格的な断面算定を開始します。

検討と結果

断面算定を行い、スラブの短辺および長辺における各断面でのモーメントMと許容モーメントMaを比較しました。その結果、どちらの辺に対しても設計が十分であり、基準を満たしていることがわかりました。具体的には、MがMaを上回ることなく、安全性が確認されました。

スラブ厚の確認

次に、スラブの板厚についての確認を行います。これも非常に重要なステップであり、板厚が適切でない場合、全体の構造の安全性に影響を与える可能性があります。

板厚制限値の確認

最初に確認するのは、板厚の制限値です。この制限値は設計上の最小限の厚さを指し、スラブが期待通りの性能を発揮するために必要です。計算式に従って必要な板厚を算出し、それが設計板厚を超えていないかを確認します。

設計荷重の考慮

スラブの自重を設計荷重から差し引いた値(Wp)も重要な要素です。この値を基に、スラブの必要な板厚を計算します。計算の結果、必要な板厚は87mmであるのに対し、実際の設計板厚は180mmと十分に余裕があります。このため、板厚の設定に問題は見つかりませんでした。

スラブのたわみの計算について

スラブのたわみの計算は、建物の使用性と安全性を確保するための重要な作業です。一般的な基準に従って適切なたわみ制限値を設定し、綿密な計算と設計を行うことで、安心して使用できる建物を提供することが可能です。建築士や構造設計者は、たわみ計算の重要性を理解し、最新の知識と技術を駆使して最適な設計を行うことが求められます。

スラブのたわみとその重要性

建築物におけるスラブのたわみとは、水平構造物であるスラブ(床)の中央部分が自重や外部荷重によって垂れ下がる現象を指します。このたわみが過剰になると、建物の使用性や安全性に悪影響を及ぼすため、適切なたわみ計算が求められます。

たわみ計算基準とその背景

たわみの計算にあたっては、建築基準法や各国の規定に従う必要があります。一般的な基準として、たわみ角の制限値は1/250、変形量は20mm未満とすることが推奨されています。これにより、建物の構造的健全性が保たれます。

RC(鉄筋コンクリート)基準には、「各国の床スラブに対するたわみ制限値は、構法上あるいは数値決定に対する根拠などには多少の際はあるとしても、総体的には短辺有効スパン長さℓxに対し、1/200~1/500となっている」と記載されています。これは、たわみの過剰が使用感や安全性に直接的な影響を及ぼすためです。また、変形量については20mmを超えない範囲で設計することが一般的です。

たわみ計算の具体的な手順と例

たわみ計算の具体的な手順には、まず荷重条件やスパン(支間)の確認、材料特性の把握が含まれます。例えば、あるスラブの設計において、たわみ計算を行った結果、変位量が約2.5mm、たわみ角が1/1205と求められた場合、これは基準を大きく下回るため、安全であると判断されます。

たわみ計算において考慮すべき重要な要素の一つに「変形増大係数」があります。これは構造物が荷重に対してどの程度変形するかを示す指標で、RC梁の場合は通常8とされていますが、スラブの場合は16とされています。これは、スラブが梁に比べて広い面積を持つため、変形がより顕著に現れるからです。

変形増大係数が与える影響と設計の工夫

変形増大係数が異なることで、スラブと梁の計算には違いが生じます。たとえば、梁とスラブが相互に影響を及ぼし合う構造では、両者のたわみ特性を十分に理解し、設計に反映させる必要があります。たわみ量を最小限に抑えるためには、適切な補強材の選定や施工方法の工夫が不可欠です。

スラブにおける抵抗曲げモーメントの検討について

荷重による曲げモーメントに対し、設計断面の抵抗曲げモーメントは常に大きくなければならない。したがって、配置された引張主鉄筋の変化に伴う抵抗曲げモーメントについて検討する必要がある。

(1) 荷重による曲げモーメント

等分布荷重と動荷重による作用点xの曲げモーメントMxは、次式で与えられる。
Mx = 1/2・w・(L-x)・x+P・(L-x)・x/L

d・Mx/dx = 0 、x = L/2 より、最大曲げモーメントMx maxは、Mx maxwL^2+PL/4=Mc

(2)抵抗曲げモーメント

コンクリートの許容曲げ圧縮応力度 σca = 11 N/mm2
鉄筋の許容引張応力度 σsa = 196 N/mm2
はりの幅 b = 600 mm
有効高さ d = 770 mm
鉄筋比 P = As/b・d = As/600×770
抵抗圧縮曲げモーメント Mrc = 1/2・σca・k・j・b・d^2
抵抗引張曲げモーメント Mrs = σsa・p・j・b・d^2

As = 5D29 = 3212 mm2 として、抵抗曲げモーメントを求めます。

P = As/b・d = As/600×770 = 3212/600×770 = 0.00695
k = 0.365、j = 0.878

抵抗圧縮曲げモーメントMrcは、
Mrc = 1/2・σca・k・j・b・d^2 = 1/2×11×0.365×0.878×600×770^2 = 627 MN・mm

抵抗引張曲げモーメントMrsは、
Mrs = σsa・p・j・b・d^2 = 196×0.00695×0.878×600×770^2 = 425 MN・mm

参考文献:「鉄筋コンクリート工学」共立出版

鉛直材の型枠は、スラブ、はりなどの水平材の型枠より早く撤去します

柱、壁などの鉛直材の型枠は、スラブ、はりなどの水平材の型枠より早く撤去します。

はりの型枠は側面の型枠を底板より先に取り外します。

型枠、支保工を撤去する時期と順序は、セメントの特性、コンクリートの品質や配合などを検討して決めます。

支保工には、強度と安定性を十分にもつ施工が求められます。支保工の設計では、かかる荷董を適切に配置します。

構造物の種類と重要性、材料の種類とサイズ、材料にかかる荷重、気象、通風などの検討も必要になります。

コンクリート打設の前後に、支保工のおおきさ、異常箇所の状態を管理しなければなりません。支保工の基礎は、沈下や不等沈下などが発生しないように注意します。

◆ せん断応力図の等分割と図心位置の決定方法

折曲鉄筋およびスターラップが等引張応力状態となるように、せん断応力図の面積を等分割する必要がある。また、分割された台形状面積の図心を求め、その位置に対応するはりの基線で折曲鉄筋およびスターラップを配置する。

参考文献:「鉄筋コンクリート工学」共立出版

「鉄筋コンクリート工学 共立出版」は、構造計算の流れがわかりやすく説明されている参考書です。具体的な例題も、たくさん掲載されています。