日本地図・白地図・住宅地図と国土地理院の役割を初心者向けに解説

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日本地図や白地図、住宅地図など、私たちが日常的に利用する地図の多くは、国土地理院の正確な測量データをもとに作成されています。国土地理院は、基準点の整備から多様な地図の発行、電子地図の提供まで幅広い業務を担っており、地理情報の信頼性を支えています。また、歴史的な地図の進化にも深く関わってきました。
このページでは、日本地図・白地図・住宅地図の基礎と、国土地理院の役割について解説しています。

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日本地図・白地図・住宅地図・国土地理院のCADデータ
日本地図のCADフリーデータです。 日本地図、地方別地図、都道府県別の日本地図、国土地理院のデジタルデータと数値地図データなどの、CADデータが、ダウンロードできます。

市販の日本地図のベースは、国土地理院が作成したものです

住宅地図やロードマップなど、街なかにあふれるさまざまな地図のもととなっているのは、国土交通省の国土地理院が作製しているものです。
国土地理院とはどのような機関なのか、また国土地理院が作成する日本地図とはどのようなものか解説します。

日本の近代と地図作成事業について

1869(明治2)年、近代国家として日本が歩みだしてまもなく、民部官に庶務司戸籍地図掛が設置されて国家による地図づくりも始まります。
測量事業は内務省が担当しました。
その後、国防の観点から、1871年には兵部省陸軍参謀局(のちに参謀本部)が測量と地図作成を担当することになります。

第二次世界大戦後、軍部の解体とともに1945年には内務省に地理調査所が発足し、測量・地図づくりは軍を離れます。
その後、地理調査所は建設省の付属機関となり、1960年に国土地理院となりました。
2001年、省庁再編により建設省は国土交通省に統合され、同省の機関として現在にいたっています。

国土地理院が作成している地図の種類

あらゆる地図の基礎となる国土地理院作成の地図は、以下のような種類に分かれます。

【電子国土基本図】
わが国の地図の基本となる地図のデジタルデータです。
地図情報・オルソ画像・地名情報の3つに分かれています。
・地図情報:
 「基盤地図情報」とよばれる道路縁や建築物の外周船などの位置情報の上に、道路、建物、河川などの情報を加えたもの。
 日本全域を覆う地図です。
・オルソ画像:
 空中写真と地図を重ね合わせて表示したものです。
・地名情報:
 居住地名や公共施設、河川などの情報を表示したものです。

かつては5万分1、2万5000分1、2万分1、1万分1などの地形図がつくられていました。
地形図のデジタル化によって縮尺が自由に変えられるようになり、2万5000分1地形図以外の地形図は更新・発行を終了しています。

【主題図】
土地条件や活断層など、特定のテーマを表現した地図。防災・災害対策などに使われます。
たとえば「火山の地図」「活断層図」「明治期の低湿地データ」「土地条件図」などがあります。

測量の基準となる基準点の整備も国土地理院の仕事です

地球上における位置を正しく把握するために欠かせないのが、基準点です。
地図をつくるためにも不可欠な基準点を設置するのも、国土地理院の重要な仕事です。
基準点はさまざまな測量に利用されており、以下のような種類のものがあります。

・電子基準点:
 全世界的衛星測位システムの衛星から電波を受信する観測施設です。
 国内に約1,300点設置されています。
 電子基準点で受信したデータをもとに、茨城・つくば市にある国土地理院の中央局で位置関係を計算します。

・三角点:
 山頂などに設置され、正確な緯度・経度・標高を測るためのものです。
 全国に約10万9,100点設置されており、一等~四等の種類があります。

・水準点:
 全国の主要国道・地方道路に約2㎞ごとに設置されています。
 土地の高さを正確に測るためのものです。
 全国に約1万6,700点が設置され、基準水準点、一等水準点、二等水準点があります。

国土地理院による日本地図の作成

国土地理院は以下のような手順で日本地図をつくっています。

・空中写真の撮影
 まずは測量用航空機で1500m以上の高度から高性能カメラで土地を撮影します。
 この空中写真をもとに、地図のもととなる図を起こします。
 図を起こす際、立体視できるように写真は一部を重複させながら撮影されます。

・地図のもととなる図を起こす
 2枚の空中写真を立体視し、立体画像に等高線や道路、建物などを描きます。

・空中写真では読み取れない情報を現地調査で確認
 現地調査を行い、樹木に覆われている道路や土地の利用状況などを確認します。

・編集作業を行う
 画像に市町村名や地図記号などを記載し、地図を完成させます。

千年以上の歴史を持つ日本地図

明治以前にも、もちろん地図は存在しています。
近代以前の日本地図といえば、江戸時代に伊能忠敬が測量して作成した日本地図が有名です。
日本人が地図に初めて接したのは、奈良時代にまでさかのぼります。

班田図・行基図

最初につくられた日本地図は、奈良時代の8世紀中頃までに整備された「班田図(田図)」といわれています。
班田図とは、班田収授法によって田地をすべての人民に分け与える作業を行う際、作成された地図です。
ただし、この地図は現存していません。現存する最古の日本地図は、751年に作成された「東大寺領近江国水沼村墾田図」という絵地図です。

その後、平安時代には本州や四国、九州などを描いた「行基図」とよばれる日本地図が登場します。
奈良時代の高僧・行基が作成したかどうかは不明で、日本各地で土地開発を行ったといわれる行基のイメージが投影されているのかもしれません。

行基図は測量に基づいた地図ではありませんが、日本の中での国(旧国)の位置がわかるという意味では貴重なものでした。
その後、行基図は江戸時代初期まで書き継がれています。
また、1582年、九州のキリシタン大名・大友宗麟らによってヨーロッパに派遣された天正遣欧少年使節団は、行基図を持ち込みました。

高度な測量技術で作成された伊能忠敬の日本地図

日本で初めて測量技術を用いた地図が作成されたのは、江戸時代後半の1821年のことでした。
伊能忠敬が作成した「大日本沿岸輿地全図」「実測録」です。
2つを合わせて「伊能図」とよばれています。

伊能は天文学と測量の知識を活かし、幕府の命によって日本各地を約20年間測量して歩き、日本地図を作成しました。
伊能は、天体測量で緯度・経度を測って基準となる点を地図上に落とし、海岸線を実際に歩いて距離を測って記録しました。
地図作成は伊能の存命中には終わらず、この事業を受け継いだ高橋景安によって、伊能の死から3年後に完成します。

伊能図で描かれている海岸線や島の位置などは、当時としては驚異的な精度を誇っていました。
明治以降も、日本地図をつくる際のベースとなって活用されました。

国土地理院の基盤地図情報をcadデータに変換するには

国土地理院が整備し、公開している基盤地図情報は国土地理院のホームページから無償でダウンロードができます。
国土地理院が無償で提供しているソフトを使うと、基盤地図情報をSXFファイルに変換してCADデータとして利用することができます。

基盤地図情報は電子地図の位置の基準

上述したように、国土地理院が作っている地図のデジタルデータ「電子国土基本図」のひとつである「地図情報」は、基盤地図情報をもとに作成されています。

基盤地図情報は建物や道路などの位置情報を表したものです。
測量法や水路業務法で規定された測量によって求められたものであることが条件です。

国や自治体、民間事業者などが基盤地情報を基準にして地理空間情報(地図)を整備することで、異なる種類の地図を重ね合わせたり、隣接する地域の地図をつなぎ合わせたりすることが簡単になります。

基盤地図情報の種類

国土地理院が提供している基本地図情報には、以下の3つの種類があります。
いずれも、国土地理院のホームページから利用者登録制で無償ダウンロードが可能です。

・基本項目
 以下の13項目から成り立っています。
 そのうち、国土地理院のホームページから10項目の情報(①~⑩)がダウンロードできます。

 ①市町村の町若しくは字の境界線及び代表点
 ②街区の境界線及び代表点
 ③道路縁
 ④建築物の外周線
 ⑤測量の基準点
 ⑥標高点
 ⑦海岸線
 ⑧水涯線
 ⑨行政区画の境界線及び代表点
 ⑩軌道の中心線
 ⑪河川堤防の表法肩の法線
 ⑫公共施設の境界線(道路区域界)
 ⑬公共施設の境界線(河川区域界)

・数値標高モデル
 地表面にメッシュ(方眼状の区切り)を切り、その中心点における標高データです。
 メッシュの種類には10mと5mがあります。

・10mメッシュ:
 日本全国すべての地域のデータを提供

・5mメッシュ:
 都市部や一級河川地域のみカバーしている

・ジオイド・モデル
 「ジオイド」とは、仮想で平均海面を陸地に延長したときの面のことです。
 日本では、東京湾平均海面を陸地に延長した仮想の面をジオイドと定義しています。
 ジオイドを基準にして測った標高をジオイド・モデルといいます。

「基盤地図情報ビューワー」でダウンロードしたデータを変換可能

国土地理院が公開している基盤地図情報の基本項目・数値標高モデルを閲覧したり、変換したりするには「基盤地図情報ビューワー」というアプリケーションを使います。
基盤地図情報のうち、基本項目はCADで使うSXFファイルに変換できます。
基盤地図情報ビューワーは、国土地理院のホームページから無償でダウンロードできます。

では、CADで使うデータ(SXFファイル)への変換方法を簡単に見てみましょう。
なお、ファイルのダウンロードにはIDとパスワードが必要です。
IDとパスワードの発行を受けるには、国土地理院「地図基盤情報ダウンロードサービス」から新規登録を行います。

・基盤地図情報ビューワーをダウンロードする
 国土地理院のホームページ内にある「基盤地図情報サイト」から「基盤地図情報のダウンロード」ボタンを押すと「基盤地図情報ダウンロードサービス」のページに遷移します。
 「各種資料」タブを押すと「基盤地図情報ビューア」がダウンロードできるページが表示されます。

・基盤地図情報の基本項目をダウンロードする
 「基盤地図ダウンロードサービス」にある「基盤地図情報 基本項目」のダウンロードボタンを押すと、メッシュで覆われている日本地図が表示されます。
 取得したい地域のメッシュを押してから「選択リスト」の「ダウンロードファイル確認へ」ボタンをさらに押すと、ダウンロードファイルリストが表示されます。
 ダウンロードしたいファイルにチェックを入れて、ダウンロードをします。

・基盤地図情報ビューワーでダウンロードしたファイルを読み込む
 基盤地図情報ビューワーを開き、「ファイル」ボタンを押して「新規プロジェクト作成」を選択すると、「新規プロジェクト作成」ダイアログボックスが開きます。
 ダイアログボックスの「追加」ボタンを押し、ダウンロードしたデータファイルを選んで「開く」ボタンを押します。
 「OK」ボタンを押すと、データが読み込まれて画像が表示されます。

・CADで使えるデータに変換する
 基盤地図情報ビューワーでは、SXF(SFC)ファイルに変換ができます。
 「エクスポート」タブを押して「エクスポート」メニューを選び、「エクスポート」ダイアログボックスを開きます。
 変換種別から「SXF(SFC)ファイル」を選び、「変換する領域」の該当するボタンを選び、「OK」を押すとCADに対応したデータに変換されます。