有害化学物質や四アルキル塩のような有害物質に人が触れると、重大な健康被害を起こします。
特定化学物質や四アルキル鉛有機溶剤などを取り扱う事業者は、特定化学物質・四アルキル鉛等作業主任者を選任し、作業を行う作業員の指揮、監督をさせるように、労働安全衛生法で定められています。作業主任者は、作業者が特定化学物質や四アルキル鉛に汚染・吸入しない作業の方法を決め、作業者に徹底させなければなりません。
「特定化学物質作業主任者」及び「四アルキル鉛等作業主任者」の資格は、特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能技能講習が終わった後で行う、修了試験に合格した者に与えられます。
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者とは
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者とは、労働安全衛生法の改正により、2006年4月1日より統合新設された国家資格です。2006年3月までは「特定化学物質作業主任者」と「四アルキル鉛等作業主任者」はそれぞれ別の講習を受講し取得する必要がありました。2006年4月1日より制度が変わり、特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能技能講習で、どちらの資格も取得できるようになっています。
ちなみに、「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者」という資格があるわけではありません。特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能技能講習の修了者の中から、事業者が必要に応じて「特定化学物質作業主任者」あるいは「四アルキル鉛等作業主任者」を選任します。
「特定化学物質作業主任者」とは
「特定化学物質作業主任者」とは、以下の職務を行う責任者です。
- 作業に従事する労働者が特定化学物質により汚染され、またはこれらを吸入しないように、作業の方法を決定して労働者を指揮
- 局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置、排液処理装置その他労働者が健康障害を受けることを予防するための装置の点検
- 保護具の使用状況を監視
「特定化学物質作業主任者」は、「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了した者の中から選任されます。
労働災害を防止するため、一定の有害な化学物質(特定化学物質)またはそれらを一定以上含有する製剤その他の物を製造し、または取扱う作業については、事業者が「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了した者の中から「特定化学物質作業主任者」を選任し、当該作業に従事する労働者の指揮その他厚生労働省令で定める事項を行わせる必要があります。(労働安全衛生法第14条、特定化学物質障害予防規則第19条、第19条の2)
「四アルキル鉛等作業主任者」とは
「四アルキル鉛等作業主任者」とは、以下の職務を行う責任者です。
- 作業に従事する労働者が四アルキル鉛により汚染され、またはその蒸気を吸入しないように、作業の方法を決定して労働者を指揮
- 換気装置の点検
- 保護具の使用状況を監視
- 中毒の恐れがある場所からの退避や除染作業等の緊急対応
労働災害を防止するため、四アルキル鉛を製造する作業または四アルキル鉛もしくは加鉛ガソリンを取り扱う一定の作業については、事業者が「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了した者の中から「四アルキル鉛等作業主任者」を選任し、当該作業に従事する労働者の指揮その他厚生労働省令で定める事項を行わせる必要があります。(労働安全衛生法第14条、四アルキル鉛中毒予防規則第14条、第15条)
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能技能講習
特定化学物質・四アルキル鉛等作業主任者技能技能講習は、全国の労働基準協会連合会、公益社団法人 日本作業環境測定協会で実施されています。
全国各地で行われているため、どこでも講習会に参加できます。講習の受講は制限がなく、18歳以上であれば誰でも受講できます。
講習会は2日間行われ、講習が終了した後に、修了試験(特定化学物質・四アルキル鉛等作業主任者試験)が行われ、合格・不合格が決まります。特定化学物質・四アルキル鉛等作業主任者試験は筆記試験のみで、4科目のうちどれもが40%以上必要で、総合得点が60%以上で合格です。特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習の修了試験に合格すると、修了証(写真入りプラスチックカード)が交付されます。
特定化学物質・四アルキル鉛等作業主任者試験の合格率は高いと言われ、難易度としては低い方の試験でしょう。難易度とは、試験に対する難易度で、講習会をしっかりと聴いて覚えた人にとってはやさしいという意味です。しかし、講習会で話される内容は、専門的で難しい内容ですので、講習の難易度は高いと言えます。そのため、講習の座学にうっかり聞き漏らしなどすると、修了試験の難易度が高くなります。
受講資格
学歴やしかくなどの受講資格はありません。18歳以上であれば誰でも受講できます。
試験地
全国の労働基準協会連合会、公益社団法人 日本作業環境測定協会
日程
月に数回実施されています。受講地によって異なります。
受講料
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能技能講習の受講料は、受講料が12,000円前後、テキスト代が2,000円前後です。受講地によって異なります。
公益社団法人東京労働基準連合会:受講料12,600円(税込) テキスト代1,980円(税込)
公益社団法人日本作業環境測定協会:受講料13,200円(税込) テキスト代1,980円(税込)
内容
①健康障害及びその予防措置に関する知識 4時間
②保護具に関する知識 2時間
③作業環境の改善方法に関する知識 4時間
④関係法令 2時間
特定化学物質・四アルキル鉛等作業主任者技能講習会の内容は、最初の日にオリエンテーションを20分行い、それから講義に入ります。
健康障害及びその予防措置に関する知識に4時間で、特定化学物質による健康障害、四アルキル鉛中毒の症状、これらの物質からの予防方法と応急措置について学びます。
保護具に関する知識に2時間で、特定化学物質の製造と取扱い、四アルキル鉛等業務に必要な保護具使用と管理などが講義されます。
作業環境の改善方法に関する知識に4時間では、特定化学物質・四アルキル鉛の性質、特定化学物質の製造と取扱い、四アルキル鉛等業務に要する器具、作業環境などの講義です。
関係法令2時間では、労働安全衛生法や特定化学物質障害予防規則、四アルキル鉛中毒予防規則について講義されます。
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者試験
12時間の特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能技能講習が終了すると、マークシート方式の修了試験が1時間行われます。
試験合格者は特定化学物質及び四アルキル鉛等を取り扱う作業で作業主任者として、作業に従事する者が誤った行動をしないように指揮し、また使用装置に問題がないことを確認し、労働者に危険が及ばないようにしなければなりません。そのためには特定化学物質及び四アルキル鉛等の危険性や特性、使用装置に対する知識の会得が不可欠となります。試験ではこのような作業主任者として適切な行動をするために必要な事項を取得できているかが問われます。試験の内容は講習で学んだ事項が出題されるので、合格後に確実な安全作業を行うためにも、よく学習するようにしましょう。
試験時間
1時間
合格基準
修了試験の各科目40%以上、かつ総合で60点以上の得点で合格
合格率・難易度
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者試験の合格率は公開されていません。95~98%程度と言われています。
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者試験の勉強方法
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者試験の勉強方法は、講義をしっかり聴くことです。テキストが講習会数日前に配布されますが、ざっと見程度で詳しく見る必要はありません。
講義では、講師の方が重要なポイント、覚えるべきところや語句などを指摘してくれますので、それらはテキストにマークを入れるなり、ノートに記録などして覚えるようにします。講師の方が指摘することのいくつかは、ほぼ終了試験に出ると考えて良いでしょう。
1日目の講習会が終了してから、自由な時間が持てますので、その日にやった事を、マークやノートへの記述をもとに整理し、覚えるようにします。
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者試験に落ちる人とは
講習会形式で講義の後で修了試験を行う資格は、数多くあります。そのような資格は、落ちる人が少ないのが一般的です。講師の方から、「真面目に話を聞いていれば落ちることはない」と言われることもあります。
それでも落ちる人がいる理由は、講師の指摘ポイントを聞き逃したためで、その中で多いのが、居眠りです。就職後に、2日間の座学を経験することはまれで、うっかり睡魔に襲われる場合もあります。そこをどう乗り切るかで、資格を得るかどうかが決まってしまいます。
テキストは購入すべき?
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者試験は、学科講習を真剣聞くだけで十分合格できます。あえて市販のテキストを購入する必要はありません。
市販されているテキスト・問題集については、下記ページで紹介しています。
過去問と重要事項の解説/特定化学物質・四アルキル鉛等作業主任者試験
●本解説に使用した参考文献
厚生労働省「労働安全衛生法」
厚生労働省「労働安全衛生法施行令」
厚生労働省「労働安全衛生規則」
厚生労働省「有機溶剤中毒予防規則」
厚生労働省「特定化学物質障害予防規則」
厚生労働省「四アルキル鉛中毒予防規則」
中央労働災害防止協会 安全衛生情報センター「法令・通達」https://www.jaish.gr.jp/user/anzen/hor/houritsu.html