このページは、水準測量の計算方法と野帳の書き方を解説しています。
水準測量はレベル測量とも言い、基準面から各点までの高低差を測り、標高を計測する測量です。
土木工事を行うときは、地形の高低を計測し、どのように建造物を建てるかなどを計画して、計画通りにできるように建造物の高さに合わせて建造します。
高低差を計測する水準測量(レベル測量)は、建造物が正しく建設できるかどうかの重要な作業になります。
水準測量を行うときには、基準点として精密な標高と位置が与えられる水準点が設けられます。
標高と位置の値は、水準原点からの標高や位置となっていて、標高は、東京湾平均海面と水準原点の差を確認することで、どこの水準点の標高が設定できます。
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水準測量の基本と必要な器具
水準測量(レベル測量) とは
水準測量は高低差測量またはレベル測量と言われ、いくつかの点の、間の高低差を測定して標高を求める測量です。
水準測量(レベル測量)は、設計図書に基づき建造物・構造物の高さ、切土、盛土などの高さを計画して施工するときの施工管理に、用いられるます。
最近、衛星を利用したGPS測量が導入され、GPSによる高さすなわち、楕円体高=ジオイド高+標高、の測定も実施されています。
水準測量の作業手順は、次のように行われます。
作業計画→選点→測量標の設置→機器の点検→観測→計算→品質評価→成果の整理
観測では観測したデータの記録は野帳に記載され、観測が終わったところで野鳥計算を行い、誤ったデータがないか計算誤りはないかをチェックします。
問題なければ、観測手簿に記載し、精度管理表と藻に品質評価を受け、成果として、観測手簿・精度管理表・成果表などが成果物となります。
水準測量の基本事項や必要な道具とは
水準測量に使用される基本用語や道具を紹介します。
① 水準面とは、ある標高の各点での、重力方向に鉛直な曲面のことで、水準面の一点に接する平面です。
② 水準線は、地球の中心を含む平面と水準面が交わった曲線で、水準線上にあるどこの点でも接する直線は、その点の水平線といいます。
③ 基準面は、各点の高さを表す基準の水準面で、東京湾平均海面が標高の基準と定められています。各地域で、河川・港湾工事の特殊基準面を用いています。
④ 標高・海抜は、基準となる水準面から鉛直方向に測った距離です。
⑤ 水準原点は、東京湾平均海面を水準測量の基準面0mとしますが、基準を海面からいつでも求められないため、国会議事堂構内の憲政記念館前庭に、平均海面上24.500mの高さに水準原点が設置されました。
⑥ 潮汐を連続的に長期間観測することを験潮(検潮)といい、その場所が験潮場です。日本水準原点の標高は、神奈川県三浦市三崎の油壺験潮場で潮位観測を実施し、日本国内の験潮場は、150力所以上あります。
⑦ 水準点は、水準測量の基準点です。水準点は、基準面からの標高が精密に測定され、基準水準点や1,2等水準点は主要国道に、約2km間隔で設置されています。
水準測量の分類
観測方法による水準測量の分類
水準測量(レベル測量)は、観測方法によって次のように分類されます。
① 直接水準測量は、レベルや標尺などの水準測量器械を使い、高低差を直接求める測量です。測量の精度が高く、水準測量とは、直接水準測量のことが一般的です。
② 間接水準測量は、水準測量器械を使わない測量で、TSによる高度角と斜距離の測量結果から、三角法などを利用して高低差を算出します。また、平板測量のアリダードを用いる方法もあります。さらに、GPS測量・スタジア測量・気圧水準測量・写真測量なども、間接水準測量ですが、精度は直接水準測量よりも低くなります。
目的による水準測量の分類
水準測量(レベル測量)は、観測目的によって次のように分類されます。
① 高低差水準測量は、諸点間の高低差を測る測量です。
② 線水準測量は、縦断測量と横断測量を総称した呼び方です。縦断測量は、道路・鉄道・河川など、一定の路線を持ったものの中心線や線形に沿って、縦断方向の高低差を求める水準測量です。横断測量は、縦断方向に沿って直角な方向の高低差を求める測量です。
③ 渡海(河)水準測量は、海峡・河川・池・谷などを横断する水準測量では、レベルをその中間に設けられないため、渡海水準測量が行われる。
観測方法には、観測距離や両岸の高低差から、交互法・俯仰ねじ法・経緯儀法があります。
交互法は、両岸に、レベルを交互に設置してそれぞれの岸の測点の高さを測定し、両岸の高低差を求めます。
渡海水準測量は、交互法ではレベルを、俯仰ねじ法では俯仰ねじを持つレベルを用います。経緯儀法では、レベルとTSやGPSを使った間接水準測量を行います。
水準測量で使用されるデジタルレベルと自動レベルについて
水準測量は、レベルと標尺を使って直接水準測量で観測を行います。
最近では、水準測量はデジタルレベルが主流ですが、自動レベルも通常の土木・建築施工現場では、多く使用されています。
① 高感度気泡管を有する精密レベルは、1・2級水準測量に使用され、オプティカルマイクロメータで読定します。
対物レンズ前の平行平面ガラスが、マイクロメータを動かすことで、上下にl cmの範囲に渡って移動します。マイクロメータには、1/100の目盛が刻まれ、0.1mmまで読定することができます。
② オートレベル(自動レベル)は、円形水準器の気泡が中央付近にあると、自動補償装置によって視準線が自動的に水平を保たれます。レベルの傾きが10分以下の場合になると、自動補償装置が作動します。
③ デジタルレベル(電子レベル)は、従来のレベルのように人間の目での標尺の読定ではなく、デジタルカメラの画像処理技術CCDが、標尺の読定をします。
CCDに取り込まれたバーコード標尺の画像を、レベル内の基準コード画像の信号と比較し、自動的に目盛の読定と距離の測定行い、デジタル表示します。電子野帳に接続することで、データが蓄積され、野鳥計算と同じように観測・計算結果が計算され出力され、水準測量作業が迅速化し、観測者の誤読・個人誤差・転記ミスが低減するメリットがあります。
水準測量に欠かせない標尺とは
標尺は水準測量に用いる測量機器で、水平視準線の高さを知るために目盛を付けた棒状の検測器である。スタッフとも呼ばれる。
① 精密水準標尺は、1・2級水準測量に用いられ、目盛にインバール尺を用いている。誤読がないように、l cm間隔の目盛が尺の両側に一定間隔でずらしていて、目盛精度は±0.01mmです。インバールの温度による伸縮を補正計算するために、標尺定数補正があり、標尺は3年ごとに検定されます。温度補正計算として、基準温度による標尺定数を求め、これにもとづいて補正計算します。
② バーコード(水準)標尺は、電子レベル専用の標尺であり、バーコード目盛が刻まれています。バーコード標尺は、電子レベルを用いて精密水準測量ができる1級水準測量用のインバール製バーコードもあります。
③ 測点に置く標尺が沈下を起こし、誤差が生じないように設置されているのが、標尺台で、移器点(TP)では、前視と後視を同じ条件の高さでの観測が最も重要であるため、標尺の回転位置でのずれが起らないように、標尺台を置いてその突起上に標尺を立てます。
⑤ 森林調査では、コンパス測量が用いられ、方位磁針が北を示すことから、コンパス測量は、既知点から未知点の方向を測量し、同時に斜距離と高低角を計測して、未知点の座標が決まります。
水準測量の方法
水準測量は2測点間に「標尺」を設置して、レベルと呼ばれる機器により測定を行います。
これを繰り返して、各測点の高さを算出する測量手法です。
レベルと標尺を用いて、直接に2点間の高低差を求める直接水準と、鉛直角と水平距離より、高低差を計算によって求める間接水準があります。
高精度を求める場合は、直接水準測量を行います。代表的な観測機械にはオートレベルと電子レベルがあり、電子レベルは「対」になった専用のバーコード標尺を使用します。
レベルと標尺は、地盤の堅固な場所に据え付けます
レベルの据付け方法は、視準線の位置が、標尺の上部や下部を極力読まない高さとするのがよいです。
レベルと標尺は、地盤の堅固な場所に据え付けます。
前視と後視の視準距離は、ほぼ等しくします。
レベルの移動は、肩に担いでの移動は避け、極力鉛直に保持して、激しい動きを与えないように注意して行います。軟弱地盤での観測は、できる限り短時間で行うよう計画します。
水準路線は、既設水準点から出発して、他の既設水準点に閉合するよう計画します。出発点に立てた標尺を到着点に立てて、レベルの整置回数を偶数回にします。
レベルに直射日光が当たらないように、観測は敏速に行います
レベルに直射日光が当たらないように、傘など日陰にして、観測はなるべく敏速に行います。
水準測量の留意点について検討します。
地図上で計画した水準点の位置、水準路線は、現地調査を行い、良否を確認してから計画します。
陽炎がたち視準目標の揺らぎが大きくなった際は、レベルと標尺の距離を短くしなければなりません。
国家水準点の標高は、東京湾の平均海面を基準として決定されています。測量の精度を上げるためには、レベルと標尺の距離を50m以内にして、長い距離を観測する場合は複数区間に分けるのがよい方法です。
標尺の零点誤差は、出発点に立てた標尺を到達点に立てるようにします
標尺の零点誤差は、標尺の0目盛が正しくないために発生する誤差で、出発点に立てた標尺を到達点に立てるようにします。
接眼鏡と対物鏡の調整を行います。
視準線誤差は、視準線と気泡管軸が平行でないことが原因で発生する誤差で、レベルから前・後視標尺を等距離に置くと消去できます。
レベルの枕下、浮上による誤差は、地盤の堅固な場所に、レベルの三脚を十分踏込んで整置して、観測を短時間で済ませます。
レベルの整置回数を偶数回にすると、標尺の零点誤差を消去することができます。
光の屈折誤差をなくすため、時期を変えて観測します。
球差と気差は、前視・後視の視準距離を等しくして観測すると消去できます。
写真測量は、区域の広いところは、細部測量として平板測量にかえて採用
写真測量は、測量区域の広いところでは、細部測量として平板測量にかえて採用されています。
三角形の各頂点、三角点から各三角形の内角と、三角網中の1辺の辺長、基線を測定します。
トラバース測量、多角測量、三角測量、細部測量、コンパス測量について検討します。
測定値を用いて三角形各辺の辺長を計算で求めて、基準点(ベンチマーク)の位置を決定します。細部の測定に必要な数の基準点の位置が決定します。
水準測量の留意点
測量では精度管理表、観測手簿に基づき野帳計算、補正計算を行います。その際に留意するポイントを以下に説明します。
主要機器の調整・点検
観測を行う前に主要機器の点検を行います。1・2級水準測量では、観測実施中は10日ごとに点検をすることを標準とします。
(1)レベル
チルチングレベルなどの気泡管式レベルは、円形水準器、主水準器と視準線との平行性の調整を行う必要があります。また、オートレベルやデジタルレベルは円形水準器、視準線の調整と、コンペンセータの点検を行う必要があります。その他、鉛直軸の回転がガタつきがなく円滑、気泡管調整機構は正常で、気泡の移動が円滑、望遠鏡視度調整機構が円滑、十字線調整ねじが摩耗していない、整準ねじの回転状態が円滑、マイクロメータにガタつきがなく、円滑、デジタルレベルのディスプレイ、キーボードが正常であることを確認します。
(2)標尺
標尺はインバール尺目盛の塗り替えがない、目盛の異状、剥離、打痕などがない、付属水準器調整ねじが摩耗していないことを確認します。
(3)温度計
温度計の点検には2級標準温度計、または水銀温度計を用い、点検時の較差は2℃以内であることを確認します。
得られた結果を観測手簿に記載し、測量ソフトに入力することで野帳計算、補正計算を行います。
水準測量実施時の留意点
観測は往復測量を行い、水準測量作業開始のベンチマークおよび終了のベンチマークでは、隣接ベンチマークとの間を検測します。
なお、観測値の較差が所定の許容範囲を超えた場合は、再測を行い、一視準一読定とします。
また、観測にあたっては以下のことに留意します。
・1・2級水準測量では、レベルに直射日光が当たらないように注意します。
・往復の測量では前視と後視の標尺を交換して行い、間違いのないよう識別番号を付けるようにします。
・ベンチマーク間の観測精度確認のため、固定点を8測点程度に一箇所設置して、往復で共通で使用します。また、固定点は鋲などとします。
・前視、後視の標尺とレベルの視準距離はできるだけ同じとなるようにし、レベルは両標尺の直線上に設置するようにします。
・レベルの脚は特定の2脚を常に視準線と平行にします。また、測点ごとに進行方向に対し左右交互に設置します。
・円形水準器で整準するときは、望遠鏡を常に特定の標尺に向けて行います。
・オートレベル、デジタルレベルの円形水準器の気泡が常に特定の標尺側から接眼レンズ側に移動するように整準します。
・観測手簿を使用する場合に読定値を訂正してはいけません。誤記があった場合には次の欄で1測点全部の観測をやり直します。
・1級水準測量の場合は、標尺の下方20cm以下を読定しません。デジタルレベルの読定のために必要な目盛の範囲の下方が20cm以下の場合、測定してはいけません。
・かげろうの発生が著しい場合、測定距離を短くします。
デジタルレベルでは内部回路の安定を図るため観測開始前に十分なウォームアップを行い、観測開始3分前に電源を入れます。
また、望遠鏡視野に木の葉や枝などが入らないように注意します。機器の温度と外気温との差が大きい場合は、差が小さくなるまで待ちます。
検測は往復観測を原則とします。
望遠鏡の焦点板の十字縦線にある上下2本のスタジア線に挟まれた標尺の長さを読み、測定したcmの長さをmに読みかえることで測点距離が求まりますが、概略距離を求めることが目的ですのでmmまで読定しなくてもよいです。
水準測量の誤差と調整方法
水準測量、レベル測量、横断測量、縦断測量、コンパス測量時の機器的誤差
(1)レベルに起因する誤差
軸の摩耗などにより鉛直軸が鉛直でない場合には鉛直軸誤差が生じます。
この誤差の調整のためには、前後の標尺を結ぶ線上にレベルを設置し、進行方向に特定の2脚を平行にし、左右交互に置きながら特定の1脚を常に同一標尺に向けて設置し、測点数を偶数にします。
また、視準軸と水準器軸が平行でない場合、機器が前視の視準距離と後視の視準距離が等しくないと視準軸誤差が起こるため、不等距離法によるレベルの調整を行い、前視・後視の視準距離を等しくするようにします。
誤差コンペンセータが鉛直であれば視準線は水平を保つことができます。
しかし、吊り方の特性で鉛直となっていない場合は視準線は水平とならないため、整準するときには常に同じ標尺に向かって行うようにします。
ヒステリシス誤差は、望遠鏡を常に特定の標尺に向け、円形水準器の気泡が常に特定の標尺側から接眼レンズ側に移動するように整準します。
(2)標尺に起因する誤差
標尺の底面が摩耗などで0点を示さない場合には標尺の0点誤差を生じますので、レベルの据付回数を偶数回にすることで、出発点に立てた標尺を最終観測点でも使用するようにします。
標尺目盛が不均一であると目盛誤差が生じますので、正確な標尺と比較をし、往復の観測で標尺を交換するようにします。
標尺の円形水準器に狂いがあると誤差が生じますので、垂球を吊り下げて標尺を鉛直にして円形水準器を調整します。
また、標尺をレベルに向かって前後にゆっくりと動かして最小値を読定するようにします。
水準測量の自然的誤差
(1)気差(屈折誤差)
気差は、光が大気密度の大きい方に屈折することで生じる誤差です。地表面に近いほど大気密度は大きくなるため、鉛直方向にマイナスの定誤差が発生しますので、気差分高くみなしてしまいます。
補正計算で調整を行いますが、1級水準測量では標尺目盛の下方20cm以下を読定してはならないと規定しています。
(2)球差(曲率誤差)
球差は地球表面の曲率により生じる誤差です。正の定誤差となるため、球差分低くみなしてしまいます。この誤差も補正計算で調整を行います。
(3)両差
距離が長くなると、気差と球差が同時に起こります。この誤差を両差といいます。
距離が短い場合、無視できるため、レベルと標尺の距離があまり長くなりすぎないようにします。また、前視、後視の視準距離を等しくするようにし、測定はスタジア測量で概略測量を行います。
水準測量の誤差調整方法
許容誤差は、水準測量の等級によって定められています。誤差が許容誤差以内に収まれば誤差配分、誤差調整を行うことでよいですが、許容誤差を超えた場合には再計測が必要となります。
(1)往復水準測量
往復水準測量の補正観測値は、往路観測と復路観測の観測値の平均とします。
(2)閉合水準測量(環状水準測量)
閉合(環状)水準測量は、既知ベンチマークを出発して環内を回って元の既知ベンチマークに帰ってくる水準測量です。既知点と帰着時の誤差が許容誤差以内であれば、観測誤差を距離に比例して配分することで問題ありません。
(3)結合水準測量
既知点A・B間において中間点観測を行い、その地盤高を観測する測量です。
既知点Aを出発して中間点を経て既知点Bまで観測を行います。この時、測定地盤高と既知点Bとの誤差が許容誤差以内であれば、距離に応じた配分をすることで各中間点の地盤高を求めることができます。
水準測量における最確値
複数の水準路線で構成された水準路線を水準網といいます。
一つの交点を持つ水準路線での最確値は複数の水準路線から観測した観測値を重量平均によって求めます。
複数の交点を持つ水準路線での最確値でも路線ごとに観測標高差の重みは路線長に反比例します。
ただし、複数の交点ごとに標高と一致する条件式ができますので、最小二乗法計算により求めます。
大きく分けると一つの交点を持つ水準路線での最確値と、複数の交点を持つ水準路線での最確値があります。