昇降機等検査員とは、昇降機の定期検査を行う昇降機等検査員を認定する国家資格です。一般財団法人日本建築設備・昇降機センターが実施している昇降機等検査員講習を受講し、修了試験(修了考査)に合格することで、昇降機等検査員になれます。
エスカレータやエレベータなどの昇降機は、現代の住環境、商業設備などあらゆる場所で欠かせないものです。昇降機には、コースターや観覧車などの遊戯施設も含まれます。
昇降機は、不慮の事故が起きると大災害にもなりかねず、安全確保のために、定期的に検査を行うことが必要です。昇降機の定期検査は、建築基準法(第12条第3項及び同施行規則第4条の20)で定められています。昇降機の検査は、1級建築士・2級建築士でも可能です。
昇降機等検査員とは
昇降機の安全確保のために、建築基準法(第12条第3項及び同施行規則第4条の20)に基づき、エスカレータやエレベータなどの昇降機の定期検査を行う人を認定する国家資格です。資格を得ることで、昇降機等検査員と名乗ることができます。
昇降機等検査員になるには、一般財団法人日本建築設備・昇降機センターが実施する講習を受講し、修了試験(修了考査)に合格する必要があります。合格すると、昇降機等検査員資格者証が与えられます。
主な就職先
昇降機等検査員の主な就職先は、エレベーターのメンテナンスや設備管理を行う会社です。
株式会社西武園ゆうえんちなどの、レジャー施設の求人もあります。
年収
求人サイトの年収を見る限りでは、昇降機等検査員の年収は300~500万円が多いようです。資格を取得していると、5,000円~10,000円程度の資格手当がもらえるケースもあります。
転職
昇降機等検査員の資格を取得するためには、昇降機や遊戯施設に関する2~11年の実務経験が必要です。つまり、転職するために資格を取得するというより、勤務する会社でのキャリアアップ・ステップアップを目的として資格は取得されています。
昇降機等検査員講習 その1
昇降機等検査員講習は、昇降機等検査員となるための講習です。一般財団法人日本建築設備・昇降機センターが実施しています。
昇降機等検査員講習には、WEB講習と会場講習の2種類があります。どちらも、講習の内容は同じです。WEB講習の場合は、修了試験(修了考査)を別会場で受ける必要があります。
WEB講習は、各科目1回目の視聴時に早送り等一部の操作に制限があるものの、各科目とも視聴期間内であれば繰り返し視聴が可能です。WEB講習の視聴期間は約3週間あるため、自分のペースで勉強できます。
会場講習は、WEB講義と同様に録画された講義を時間割に沿って会場で視聴する形式となります。講師に対しての質疑応答はなさそうです。また、各科目の講義の視聴は1回のみとなっています。
会場講習は、3日間会場へ出向く必要があるうえに、1回しか講義を視聴できません。自身でインターネット環境を準備できない方向けの講習と言えるでしょう。
昇降機等検査員講習の時間は22.5時間で、最終日の修了試験を含め4日間の講習です。講習の内容は、11項目に分かれ、昇降機などの検査制度と建築基準法に4.5時間、建築学に2時間、機械工学と電気工学に4時間、昇降機と遊戯施設の概論・検査標準・建築基準法に7.5時間、昇降機と遊戯施設のの検査標準と維持保全に2.5時間、以上の講義で計20.5時間です。最後の修了試験は2時間、問題数は30問で、合格には20問以上(67%以上)の正解が必要です。
受講資格
昇降機等検査員講習は、大学や高校や中学で機械工学か電気工学を履修し、卒業後に昇降機や遊戯施設で学歴に応じた期間、実務を経験すれば受験することができます。あるいは、昇降機や遊戯施設の実務を11年以上経験しても受講が可能です。
区分 | 学歴 | 昇降機及び遊戯施設に関して 必要な実務経験年数 |
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① | 大学、専門職大学 | 4年制 | ※下記の学科を卒業 2年以上 ※下記の学科以外を卒業 11年以上 |
職業能力開発総合大学校等 | 長期課程、総合課程、応用課程 | ||
② | 短期大学、専門職短期大学、専門職大学(3年の前期課程) | 3年制(夜間を除く) | ※下記の学科を卒業 3年以上 ※下記の学科以外を卒業 11年以上 |
③ | 短期大学、専門職短期大学、専門職大学(2年の前期課程) | 2年制 | ※下記の学科を卒業 4年以上 ※下記の学科以外を卒業 11年以上 |
高等専門学校 | 5年制 | ||
専修学校 | 専門課程2年以上 | ||
職業能力開発総合大学校等 | 特定専門課程、専門課程 | ||
④ | 高等学校 | 3年制(通信制・夜間を含む) | ※下記の学科を卒業 7年以上 ※下記の学科以外を卒業 11年以上 |
専修学校 | ③の専修学校以外で専門課程 | ||
職業能力開発促進センター等 | 普通課程 | ||
⑤ | 実務経験のみ | 11年以上 | |
⑥ | 特定行政庁の職員 | 建築行政(昇降機又は遊戯施設)に関して2年以上 | |
⑦ | 行政職員 (消防法・労働基準法・駐車場法令の施工に関わる行政職員) |
昇降機又は遊戯施設に関する法令の施工に関して5年以上 (建築行政を除く) |
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⑧ | ①~⑦と同等以上の知識及び経験を有する者 | ①~⑦と同様の年数 |
参考資料:昇降機等検査員講習(一般財団法人日本建築設備・昇降機センター)
昇降機等検査員講習 その2
日程
昇降機等検査員講習は、9月下旬~10月中旬頃の年1回実施されています。
例えば、2021年は以下の日程でした。
- WEB講習:9月21日(火)~10月11日(月)
- 会場講習:10月12日(火)~10月14日(木)
- 修了考査:10月15日(金)
試験地
昇降機等検査員講習及びは修了考査は、東京と大阪で実施されています。
WEB講習を受講する場合でも、修了考査は東京か大阪の会場で受ける必要があることに注意しておきましょう。
受講料
- 講習受講:46,200円(修了考査・テキスト代を含む)
- 修了考査のみ:11,000円
- テキスト代:8,800円
講習内容
- 昇降機・遊戯施設定期検査制度総論
- 昇降機・遊戯施設に関する建築基準法令等
- 建築学概論
- 昇降機・遊戯施設に関する機械工学
- 昇降機・遊戯施設に関する電気工学
- 昇降機概論
- 昇降機検査標準
- 遊戯施設概論
- 遊戯施設に関する建築基準法令等
- 昇降機・遊戯施設の検査標準
- 昇降機・遊戯施設に関する維持保全
- 修了考査
※建築設備士、建築設備検査員、特定建築物調査員、防火設備検査員の資格を有する方は、③の免除を受けることができます。
昇降機等検査員試験(修了考査)
昇降機等検査員試験(修了考査)は、昇降機等検査員講習の4日目に実施されます。(会場講習の場合)会場講習の場合は同じ会場で実施されますが、WEB講習の場合は会場へ行く必要があります。
出題形式
多肢選択式(マークシート)
試験時間
2時間
合格基準
30問中、20問以上の得点
合格率・難易度
昇降機等検査員試験の合格率は、過去5年の平均で70%以上です。
2021年では、1,046名が修了考査を受け、753名(71.9%)が合格しています。
講習受講後に試験を受けるタイプの資格はおおむね合格率が90%以上、ほとんどの方が合格しています。一方、昇降機等検査員試験の合格率は約70%と、他の資格より低くなっています。講習受講後に試験を受けるタイプの資格としては、難易度が高いようです。
昇降機等検査員試験(修了考査)の勉強方法
修了考査では講習テキストを使用できる
昇降機等検査員試験の修了考査では、講習テキストを使用できます。そのため、「どの辺りのページにどんなことが書いてあるか」を事前にある程度把握しておきましょう。
講義を繰り返し視聴
昇降機等検査員講習のWEB講習は、視聴期間中は繰り返し視聴が可能です。分かり難いところを繰り返し確認することができます。
過去問を繰り返し解く
昇降機等検査員試験の勉強法は、過去問の繰り返し勉強が一番効率的です。昇降機と遊戯施設という分野しか問題にされないことから、過去問で確実に覚え込み、関連する事項は参考書で調べて不明箇所をなくす努力が必要でしょう。
過去問題集は、日本建築設備・昇降機センターでは、その年の出題問題を公表しています。
ただし、出版しておらず手に入りません。
時間配分に注意が必要
修了試験の問題は四肢一択問題で、少し長めの選択文章が並び、正解を選ぶことになります。しかし、1問当たりの時間が4分ということから、問題全体を読むのに時間が取られ、読み終わったらすぐに解答するようにしないと、時間が無くなるかもしれません。実際に試験を受けた方も、時間が足らなかったという意見が多いです
テキストは購入すべき?
昇降機等検査員講習では、テキストがもらえます。さらに、昇降機等検査員試験(修了考査)では、講習申込時にもらえるテキストを使用可能です。
講習申込時にもらえるテキストとは別のテキストを購入する必要はないでしょう。テキストや講義だけではよく分からない場合、合格する自信がない場合は、別のテキストを購入するのもよいかもしれません。
テキスト・問題集については、下記ページで紹介しています。