石油コンビナートや、大規模な液化天然ガス製造を行う、高圧ガスを製造や取り扱う事業場には、高圧ガス製造保安責任者を置いて管理することが、高圧ガス保安法で決められています。高圧ガスだけでなく、冷凍ガスについても同じです。高圧ガス製造保安責任者として免状を交付する国家試験が、高圧ガス製造保安責任者試験です。高圧ガスを一定規模扱うところでは、高圧ガス製造保安に係る主任者を複数人設置する必要があります。
高圧ガス製造保安責任者には、取り扱うガスの種類や規模に応じて、いくつかの種類があり、その種類に応じた高圧ガス製造保安責任者試験を受験して、免状が受けられます。
高圧ガス製造保安責任者試験の種類は、甲種機械、甲種化学、乙種機械、乙種化学、丙種化学(液化石油ガス)、丙種化学(特別試験)、第1種冷凍機械、第2種冷凍機械、第3種冷凍機械のように分けられ、製造場所と取扱い容量によっては、免状があっても適用しない種類の免状では、高圧ガス製造保安責任者になれません。
高圧ガス製造保安責任者とは
高圧ガス製造保安責任者とは、高圧ガス保安法によって定められている国家資格です。
高圧ガス製造保安責任者になるには、取り扱うガスの種類や規模に応じた高圧ガス製造保安責任者試験に合格する必要があります。
高圧ガスに関連した資格
高圧ガスに関連した資格は、高圧ガス製造保安責任者以外に以下のようなものがあります。
- 高圧ガス販売主任者
- 液化石油ガス設備士
- 特定高圧ガス取扱主任者
- 高圧ガス移動監視者
高圧ガス販売主任者・液化石油ガス設備士については、下記の記事で詳しく解説しています。
高圧ガス製造保安責任者免状の種類 その1
高圧ガス製造保安責任者免状は、取り扱うガスの種類や規模に応じて、下記の9種類に区分されています。製造場所と取扱い容量によっては、免状があっても適用しない種類の免状では、高圧ガス製造保安責任者になれません。
- 甲種化学責任者
- 甲種機械責任者
- 第一種冷凍機械責任者
- 乙種化学責任者
- 乙種機械責任者
- 丙種化学(液化石油ガス)責任者
- 丙種化学(特別試験科目)責任者
- 第二種冷凍機械責任者
- 第三種冷凍機械責任者
高圧ガス製造保安責任者は、甲種機械と甲種化学は、どちらかの免状を持っていれば、一定規模の石油コンビナートの製造保安責任者になる事ができます。機械と化学は責任者としては同一の見方となるため、高圧ガスの製造保安責任者の種類、化学と機械は意識せず、甲種、乙種、丙種のように分けた方が、分かり易いでしょう。
甲種化学責任者免状・甲種機械責任者免状
石油化学コンビナート等高圧ガス製造事業所において、製造に係る保安の統括的な業務を行う方に必要な資格で、高圧ガスの種類及び製造施設の規模についての制限はありませんので、 保安技術管理者、保安主任者及び保安係員に選任され、全ての製造施設に関する保安に携わることができます。
乙種化学責任者免状・乙種機械責任者免状
石油化学コンビナート等高圧ガス製造事業所において、製造に係る保安の統括的又は実務的な業務を行う方に必要な資格で、高圧ガスの種類について制限はありませんが、製造施設の規模により、保安技術管理者に選任される場合に限り制限があります。保安主任者及び保安係員に選任される場合の製造施設の規模についての制限はなく、これらの条件の下で、全ての製造施設に関する保安に携わることができます。
丙種化学(液化石油ガス)責任者免状
主として、LPガス充てん事業所、LPガススタンド等のLPガス製造事業所において、LPガスの製造に係る保安の統括的又は実務的な業務を行う方に必要な資格で、製造施設の規模により、保安技術管理者に選任される場合に限り制限を受けますが、保安主任者及び保安係員に選任される場合は、その規模の制限は受けません。また、所定の経験を有している場合LPガス以外の高圧ガス製造施設の保安係員にも選任されることができ、これらの条件の下で、高圧ガスの製造施設に関する保安に携わることができます。
丙種化学(特別試験科目)責任者免状
石油化学コンビナート等製造事業所、充てん事業所、天然ガススタンド等において、製造に係る保安の実務的な業務を行う方に必要な資格で、高圧ガスの種類及び製造施設の規模については制限を受けませんが、この資格は保安係員のみに選任され、高圧ガスの製造施設に関する保安に携わることができます。
高圧ガス製造保安責任者免状の種類 その2
第一種冷凍機械責任者免状
主に大型冷凍空調機器を備えている施設、冷凍倉庫、冷凍冷蔵工場等において、製造(冷凍)に係る保安の実務を含む統括的な業務を行う方に必要な資格で、全ての冷凍(1日の冷凍能力に制限はありません。)の製造施設に関する保安(冷媒ガスの種類の制限はありません。以下第二種冷凍機械責任者免状・第三種冷凍機械責任者免状においても同じです。)に携わることができます。
第二種冷凍機械責任者免状
主に中型冷凍空調機器を備えている施設、冷凍倉庫、冷凍冷蔵工場等において、製造(冷凍)に係る保安の実務を含む統括的な業務を行う方に必要な資格で、1日の冷凍能力が300トン未満の製造施設に関する保安に携わることができます。
第三種冷凍機械責任者免状
主に小型冷凍空調機器を備えている施設、冷凍倉庫、冷凍冷蔵工場等において、製造(冷凍)に係る保安の実務を含む統括的な業務を行う方に必要な資格で、1日の冷凍能力が100トン未満の製造施設に関する保安に携わることができます。
高圧ガス製造保安責任者試験 その1
高圧ガス製造保安責任者試験は、高圧ガス保安協会が実施しています。受験申し込みは、下記ページから可能です。
下記の9種類の試験の中から選択して受験します。
- 甲種化学責任者
- 甲種機械責任者
- 第一種冷凍機械責任者
- 乙種化学責任者
- 乙種機械責任者
- 丙種化学(液化石油ガス)責任者
- 丙種化学(特別試験科目)責任者
- 第二種冷凍機械責任者
- 第三種冷凍機械責任者
受験資格
高圧ガス製造保安責任者試験は、どの種類の試験も、誰でも受験できます。
日程
高圧ガス製造保安責任者試験は、11月第2日曜日の年に1回実施されています。
受付開始は8月下旬です。
試験地
甲種化学、甲種機械、第一種冷凍機械:
北海道、宮城、茨城、東京、愛知、大阪、広島、香川、福岡、沖縄
乙種・丙種化学、乙種機械、第二種冷凍機械、第三種冷凍機械:全国約49箇所
受験料
電子申請 | 書面申請 | |
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12,700円 | 13,200円 |
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8,800円 | 9,300円 |
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8,200円 | 8,700円 |
試験時間
・法令:60分
・保安管理技術:90分
・学識:120分
高圧ガス製造保安責任者試験 その2
講習による一部科目免除制度
高圧ガス製造保安講習を受講すると講習修了証が発行されます。講習修了証に基づき国家試験の受験手続きを行うと、「学識」と「保安管理技術」科目が免除されます。
高圧ガス製造保安講習の内容は以下の通りです。
〇講習日程(3日間)
・「法令」:7時間
・「保安管理技術」:7時間
・「学識」:7時間
※第三種冷凍機械は「保安管理技術」14時間、「法令」7時間となる
合格基準
各科目とも満点の60パーセント程度。
合格率・難易度
試験の合格率を見ると、甲種が約49%、乙種が約34%、丙種化学(液化石油ガス)が28%、丙種化学(特別試験)が39%、1種冷凍が38%、2種冷凍が40%、3種冷凍が25%です。試験の難しさは、合格率とは逆で、甲種、乙種、丙種の順で問題が難しく、1種冷凍から3種冷凍の順で問題が難しい傾向です。この理由の一つは、高圧ガス製造保安責任者試験甲種は、免状がないと工場運営に支障が出るため、勉強の度合いが高いと推定されます。丙種化学(特別試験)は、充填所やガススタンドで働くために必要な資格ということもあり、合格者が多いと推測できます。
乙種化学の合格率(2019年・2020年)
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
乙種化学 | 2020年 | 2199 | 817 | 37.2 |
2019年 | 2516 | 1142 | 45.4 |
乙種機械の合格率(2019年・2020年)
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
乙種機械 | 2020年 | 4095 | 1295 | 31.6 |
2019年 | 5352 | 2097 | 39.2 |
丙種化学(液石)の合格率(2019年・2020年)
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
丙種化学(液石) | 2020年 | 3300 | 913 | 27.7 |
2019年 | 3755 | 1444 | 38.5 |
丙種化学(特別)の合格率(2019年・2020年)
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
丙種化学(特別) | 2020年 | 3400 | 1320 | 38.8 |
2019年 | 5245 | 2718 | 51.8 |
第二種冷凍機械の合格率(2019年・2020年)
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
第二種冷凍機械 | 2020年 | 2673 | 1085 | 40.6 |
2019年 | 3573 | 1624 | 45.5 |
第三種冷凍機械の合格率(2019年・2020年)
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
第三種冷凍機械 | 2020年 | 8387 | 2059 | 24.5 |
2019年 | 9597 | 3882 | 40.5 |
参考資料
令和2年度 高圧ガス製造保安責任者試験等結果(知事試験) 出願者数・受験者数・合格者数・合格率一覧表
令和元年度 高圧ガス製造保安責任者試験等結果(知事試験) 出願者数・受験者数・合格者数・合格率一覧表
高圧ガス製造保安責任者試験の試験内容 その1
高圧ガス製造保安責任者試験の問題内容については、どの種類の試験も、法規、保安管理技術、高圧ガス製造技術の3テーマに分けられ、法規、保安管理技術はそれぞれ択一方式で、法令が20問を60分で、保安管理が20問を90分で解答する時間配分です。
製造技術は120分の時間割合いですが、甲種と第1冷凍は、記述式問題が5問出題され、120分内に答えます。計算を行って値を求める問題が多く、簡単ではありません。
その他の種類の製造技術の試験は、択一式で、120分で15問から20問を解く問題です。
甲種化学責任者
・甲種化学責任者免状に係る製造保安責任者試験 | |||
試験の種類 | 法令 | 保安管理技術 | 学識 |
試験内容 | 高圧ガス保安法に係る法令 | 高圧ガスの製造(冷凍のための製造を除く。)に必要な化学に関する高度の保安管理の技術 | 高圧ガスの製造に必要な高度の応用化学 |
試験形式 | 択一式(20問) | 択一式(15問) | 記述式(6問) |
甲種機械責任者
・甲種機械責任者免状に係る製造保安責任者試験 | |||
試験の種類 | 法令 | 保安管理技術 | 学識 |
試験内容 | 高圧ガス保安法に係る法令 | 高圧ガスの製造(冷凍のための製造を除く。)に必要な機械に関する高度の保安管理の技術 | 高圧ガスの製造に必要な高度の機械工学 |
試験形式 | 択一式(20問) | 択一式(15問) | 記述式(5問) |
第一種冷凍機械責任者
・第一種冷凍機械責任者免状に係る製造保安責任者試験 | |||
試験の種類 | 法令 | 保安管理技術 | 学識 |
試験内容 | 高圧ガス保安法に係る法令 | 冷凍のための高圧ガスの製造に必要な高度の保安管理の技術 | 冷凍のための高圧ガスの製造に必要な通常の応用化学及び機械工学 |
試験形式 | 択一式(20問) | 択一式(15問) | 記述式(5問) |
乙種化学責任者
・乙種化学責任者免状に係る製造保安責任者試験 | |||
試験の種類 | 法令 | 保安管理技術 | 学識 |
試験内容 | 高圧ガス保安法に係る法令 | 高圧ガスの製造(冷凍のための製造を除く。)に必要な化学に関する通常の保安管理の技術 | 高圧ガスの製造に必要な通常の応用化学 |
試験形式 | 択一式(20問) | 択一式(15問) | 択一式(15問) |
乙種機械責任者
・乙種機械責任者免状に係る製造保安責任者試験 | |||
試験の種類 | 法令 | 保安管理技術 | 学識 |
試験内容 | 高圧ガス保安法に係る法令 | 高圧ガスの製造(冷凍のための製造を除く。)に必要な機械に関する通常の保安管理の技術 | 高圧ガスの製造に必要な通常の機械工学 |
試験形式 | 択一式(20問) | 択一式(15問) | 択一式(15問) |
丙種化学(液化石油ガス)責任者
・丙種化学(液化石油ガス)責任者免状に係る製造保安責任者試験 | |||
試験の種類 | 法令 | 保安管理技術 | 学識 |
試験内容 | 高圧ガス保安法に係る法令 | 液化石油ガスの製造に必要な通常の保安管理の技術 | 液化石油ガスの製造に必要な通常の応用化学及び基礎的な機械工学 |
試験形式 | 択一式(20問) | 択一式(20問) | 択一式(20問) |
丙種化学(特別試験科目)責任者
・丙種化学(特別試験科目)責任者免状に係る製造保安責任者試験 | |||
試験の種類 | 法令 | 保安管理技術 | 学識 |
試験内容 | 高圧ガス保安法に係る法令 | 高圧ガスの製造(冷凍のための製造を除く。)に必要な基礎的な保安管理の技術 | 高圧ガスの製造に必要な基礎的な応用化学及び基礎的な機械工学 |
試験形式 | 択一式(20問) | 択一式(20問) | 択一式(20問) |
高圧ガス製造保安責任者試験の試験内容 その2
第二種冷凍機械責任者
・第二種冷凍機械責任者免状に係る製造保安責任者試験 | |||
試験の種類 | 法令 | 保安管理技術 | 学識 |
試験内容 | 高圧ガス保安法に係る法令 | 冷凍のための高圧ガスの製造に必要な通常の保安管理の技術 | 冷凍のための高圧ガスの製造に必要な基礎的な応用化学及び機械工学 |
試験形式 | 択一式(20問) | 択一式(10問) | 択一式(10問) |
第三種冷凍機械責任者
・第三種冷凍機械責任者免状に係る製造保安責任者試験 | |||
試験の種類 | 法令 | 保安管理技術 | 学識 |
試験内容 | 高圧ガス保安法に係る法令 | 冷凍のための高圧ガスの製造に必要な初歩的な保安管理の技術 | – |
試験形式 | 択一式(20問) | 択一式(15問) | – |
高圧ガス製造保安責任者試験の勉強方法
過去問を繰り返し解く
高圧ガス製造保安責任者試験の勉強方法は、過去問を数年分、繰り返し勉強することです。試験問題には、同じような問題の出題が多く、過去問を勉強して解答の解説が詳しい問題集や参考書から、理論と解法を勉強することで類似問題に対応できます。
高圧ガス製造保安責任者試験の問題は計算問題や理論的な問題が多く出ますが、過去問と類似した問題が繰り返し出題されます。そのため、過去問を勉強するときに、問題解法ととともに、その問題が少しひねって出されても解けるように応用や解法の理論を詳しく勉強することで、どんな類似問題が出ても対応することが可能です。
高圧ガス製造保安責任者試験の過去問は、高圧ガス保安協会のホームページで公開されています。
テキスト・問題集については、下記ページで紹介しています。
高圧ガス製造保安責任者研修会を受講
高圧ガス製造保安責任者研修会を受講することも、受験対策として有効な手段です。3日間の高圧ガス製造保安責任者研修会を受講し、研修会の修了試験に合格することで、学識と保安管理技術の2科目が免除されます。つまり、研修会の修了証書があれば、高圧ガス製造保安責任者試験では、法令だけの受験となるということです。
学識と保安管理技術の2科目が免除されれば、試験勉強は法令だけになります。独学が苦手な場合は、高圧ガス製造保安責任者研修会の受講を検討しましょう。
過去問と重要事項の解説/高圧ガス製造保安責任者試験
●本解説に使用した参考文献
経済産業省「高圧ガス保安法」
経済産業省「高圧ガス保安法施行令」
経済産業省「冷凍保安規則」
経済産業省「液化石油ガス保安規則」
経済産業省「一般高圧ガス保安規則」
経済産業省「高圧ガス保安法に基づく高圧ガス製造保安責任者試験等に関する規則」
経済産業省「容器保安規則」
経済産業省「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」
高圧ガス保安協会「高圧ガス保安協会技術基準一覧」https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/gp/gijyutukijun/khks_list.pdf